批評の手帖

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第31回山本七平賞・奨励賞贈呈式!

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 第31回山本七平賞・奨励賞贈呈式の様子(於・帝国ホテル)が公開されました。養老孟司先生による選評、受賞者スピーチ、また藤井聡先生からの祝辞などを視聴することが出来ます。
 しかし、今年は、現実においても、また私の心のなかにおいても本当に色んなことがあった年でした(多分、世界のバランスが変わったことに即して、私自身の心のバランスも変わったんだと思います)。危機の時代のなか、できることは限られていますが、今回頂いた山本七平賞・奨励賞を励みに、また一歩ずつ歩いていきたいと考えています。
 受賞スピーチでは、『小林秀雄の「人生」論』を書いた裏話などもしています(笑)。よろしければ、是非。
 
 また、以下に、第31回山本七平賞 奨励賞『小林秀雄の「人生」論』の著者・浜崎洋介氏、受賞の言葉 | PHP研究所で紹介されている「受賞者の言葉」を載せておきます。

 小林秀雄と言えば、「難解」とか「旧(ふる)い」とかいったイメージがつき纏(まと)っていますが、これほど勿体ないことはない...、それが、『小林秀雄の「人生」論』を書いた最大の動機でした。
 小林秀雄という文学者は、日本が西洋文明を受け入れた明治に生まれ、第一次大戦の戦争景気を背景にデモクラシーが語られた大正に思春期を送り、その後の関東大震災と昭和恐慌によって、日本人が一挙に「ぼんやりとした不安」のなかに呑み込まれ、さらに、その不安を宥(なだ)めるために、マルクス主義だの日本主義だのといった観念を語りはじめた危機の時代に登場した批評家でした。しかし、それゆえにこそ小林は、それらの観念を、「様々なる意匠」として退け、己の外側ではなく、内側の「直観」(ベルクソン)に批評の基準を見出し、それを改めて日本人の「人生論」に接続することをめざしたのでした。
 ところで、それはまた、戦後復興から高度経済成長を経て、今再び、失われた30年のなかで「ぼんやりとした不安」に呑まれ、「様々なる意匠」に取り憑かれつつある日本人が思い出すべき言葉ではないでしょうか? 小林秀雄の批評は、今こそ読まれるべき言葉です。
 この本は、数週間で書き上げた「急拵(きゅうごしら)えの本」ではありますが、その分、小林秀雄との20年以上の付き合いのなか、私の内で確信にまで育て上げられた注釈・解釈しか記していません。それを介して、一人でも多くの読者に小林秀雄の言葉が届くことを祈っています。
このたびは、山本七平賞・奨励賞をありがとうございました。心から感謝申し上げます。