批評の手帖

浜崎洋介のブログです。ご連絡は、yosuke.khaki@gmail.comまで。

小幡敏氏『「愛国」としての「反日」』(クライテリオン叢書)の刊行と、東京シンポジウムその他。

 今の今まで原稿執筆に追われていたんですが、次号の『クライテリオン』で、ついに初めて連載原稿(「『自己喪失』の近代史」第4回)を落とすことが決まってしまったので…、今まで色々と告知できなかったことを告知させていただきます(ちなみに、第4回は「昭和」を扱う予定だったんですが、さすがクライマックスなだけあって情報量が多く、また、年度末の他の仕事とも重なってしまい、ギリギリで書き上げることができませんでした…涙)


the-criterion.jp
 告知が遅れてしまいましたが、まず、3月24日に、第一回表現者賞受賞者の小幡敏氏の最初の本『「愛国」としての「反日」—奇形の軍民関係を正す—』が、クライテリオン叢書として啓文社から発刊されました!
 私自身、藤井聡先生の「自衛官に栄誉を与えんがための小幡氏の日本独立戦――日本人よ、参戦せよ!」という帯文と一緒に、「この『新人』を見よ!――反時代的な『本気』の姿がここにある。」という帯文を書かせていただきましたが、その帯文通り、この本は、「本気」の自衛隊論であると同時に、類まれな日本人論となっています。
 もの凄く簡単に言ってしまえば、自衛隊に「本気」で関わろうとしながら、その「本気」ゆえに挫折を余儀なくされた著者が、人を「本気」にさせない自衛隊という組織の歪みを——いや、その歪みは日本の組織全体の歪みですが——問い質し、その根源に「士魂」を失ってしまった「近代日本人」の不自然(=弱さ)を剔抉するという構成をとっています。が、それは必ずしも「戦後」だけの問題ではない。確かに歪みは「戦後」に大きくなりましたが、その芽は「戦前」からあったとの指摘を、自身の経験と思考、山本七平や小松眞一の言葉、福田恆存福沢諭吉などの思想によって裏付け、さらに、その事情を後期三島由紀夫のごとき「ますらおぶり」の文体によって描き出しています。
 これほど最初から「文体」を確立している新人というのはそうそういませんが、読んでいると、近代日本に対する絶望感と、しかし、なお、こういう新人が出て来る余地を残している日本文化に対する希望と…複雑な感情に襲われるのは間違いありません(笑)。お世辞で言うのではなく、本当に恐ろしい新人だと思います。是非、手にとって確かめて頂ければと思います。よろしくお願いいたします!
 ※で、以下は、この小幡氏の『「愛国」としての「反日」』の刊行を記念した「表現者クライテリオン」創刊4周年記念シンポジウムin新宿(5月21日・土曜日)の告知です。クライテリオンの編集委員と共に、もちろん小幡さんも登壇する予定なので、興味ある方は是非、足をお運びください(当日までに私も、小幡さんの本を再読・精読しておきます・笑)。 
the-criterion.jp

 あと、以下は、以前に開催された『小林秀雄の「人生」論』(NHK出版)の出版記念トークショーのダイジェスト版です。この公開座談は次号クライテリオンで、しっかりと編集したものを掲載しますので、気になる方は、そちらの方も是非よろしくお願いいたします!
www.youtube.com