批評の手帖

浜崎洋介のブログです。ご連絡は、yosuke.khaki@gmail.comまで。

『表現者クライテリオン』最新号(2024年5月号)発売と、「辻田真佐憲の国威発揚ウォッチ」と「神社チャンネル」

 まず、『表現者クライテリオン』の最新号発売のお知らせです。
 今回の特集は「不信の構造、腐敗の正体――政治・エンタメ・財務省」。他者に対する「不信」が増せば増すほど、その信頼の穴をシステムで埋め合わせねばならず、社会がシステム化すればシステム化するほど、そのシステムに依存した、あるいは、そのシステムに甘えた「腐敗」が蔓延する……その状況を正確に認識し、それを克服する「思想」を描き出すこと、それが今号の主題です。
 実際、「コンプラ」や「ポリコレ」といった矮小な観念(システム)がこれほど持て囃されている時代もないにもかかわらず、いや、持て囃されてる現在だからこそ、アメリカニズムによって作り上げられたシステムに依存し切った専門人=大衆人たちが跋扈し(財務省、医療業界、および岸田政権)、そのなかを適当に泳いできた人々の「腐敗」が取り沙汰されているのでしょう(自民党の裏金問題、ジャニーズ問題や吉本興業の問題まで)。
 「病膏肓に入る」とは、まさにこのことですが、それでも、そのなかで自分のできることをやっていくしかありません。
 私自身の仕事としては、①「『戦後家族』の運命――私たちの不信と腐敗の起源をめぐって」という特集原稿のほか、②「映画で語る保守思想 第10回―絶望の淵で見出す『希望』とは? 『ペパーミント・キャンディー』を題材に・前編」(藤井 聡×柴山桂太×川端祐一郎×浜崎洋介)の二つに関わっていますが、その他、①與那覇潤氏による連続対談「在野の『知』を歩く—第1回:古典をよむのは「逆張り」ですか?—ゲスト・綿野恵太(前編)」や、今年、表現者賞を受賞した若手新人の首藤小町氏による「ひこばえ 風土に根ざす智慧と美徳:第一回 令和に芽ぐむやまとごころ」などの新連載も始まりました。どちらも、まさに「不信と腐敗」に対する抵抗の実践です。手に取っていただければ幸いです。
 以下に目次を記しておきます。

今、日本では、各領域において激しく進行した「腐敗」が次々と白日の下に
晒されるという異様な光景が繰り返されている。自民党の裏金問題は国民の
政治不信を極限にまで引き上げ、木原元官房副長官を巡る一連の週刊誌報道は
政治のみならず司法に対する深刻な国民不信を導いた。財務省の緊縮的態度は
もはや既にカルトと違わぬと主張する『ザイム真理教』が未曾有のベストセラー
となる程に行政不信も巨大化した。そして、ジャニー喜多川吉本興業
トップ芸人の性加害問題はエンタメ界の「絶対的権力」の崩壊を導いた。
 今、世間ではこうした腐敗対策の必要性が叫ばれ、そのために腐敗の温床
となった組織・共同体の杓子定規な規制導入による弱体化が進められようとして
いるが、そうした表層的対策では事態は悪化する他ない。なぜなら今日の腐敗は
組織・共同体の活性化ではなく弱体化によって進行したものでしかないからだ。
 ついては本誌では今、日本で進行する「腐敗」とそれに対する国民の「不信」
の構造を明らかにすることを通して、その「腐敗」を乗り越えるための方途を
探る特集をここに企画した。
                   表現者クライテリオン編集長 藤井 聡
〔特集〕
不信の構造、腐敗の正体――政治・エンタメ・財務省

【特集対談】
・日本国家の腐敗をいかに乗り越えるか/亀井静香×藤井 聡
・日本を腐敗させる財務省の工作――政官業+メディアは如何に癒着しているか/須田慎一郎×藤井 聡

【特集論考】
・「戦後家族」の運命――私たちの不信と腐敗の起源をめぐって/浜崎洋介
・民主主義にとって「信頼」はなぜ重要か?/吉田 徹
・過剰な「透明性」がメディアを解体する――権力との「癒着」は腐敗なのか/松林 薫
・特権と人権の区別つかぬ自民党/佐高 信
・「木原事件」が炙り出すマスメディアの沈黙――報道機関を覆う「統制」と「横並び」/西脇亨輔
・「内なる地上波信仰」を捨てよ――ジャニーズ問題とその「腐敗の正体」/辻田真佐憲

【新連載】
・與那覇潤連続対談 在野の「知」を歩く 第1回 古典をよむのは「逆張り」ですか?(前編)/(ゲスト)綿野恵太
・ひこばえ 風土に根ざす智慧と美徳 第一回 令和に芽ぐむやまとごころ/首藤小町

【連載】
・「農」を語る 第1回 「農」から考える、文明のあるべき姿/山極壽一×藤井 聡
・映画で語る保守思想 第10回 絶望の淵で見出す「希望」とは? 『ペパーミント・キャンディー』を題材に(前編)/藤井 聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
・「危機感のない日本」の危機――どこから見ても崩壊している日本/大石久和
・アジアの新世紀 王道を以て覇道を制す――私の見た言論とその未来/大場一央
・虚構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー 第三十一回 マルクスの亡霊たち 日本人の「一神教」理解の問題点③/富岡幸一郎
・徹底検証! 霞が関の舞台裏 脱藩官僚による官僚批評 第8回 国家の役割を取り戻せ!(後編) 民間委託の推進は本当にいいことなのか? 室伏謙一
経世済民 虫の目・鳥の目  第7回 将来のハイパーインフレに備えるべきこと/田内 学
・欲望の戦後音楽ディスクガイド 第9回 Sun Ra / Space Is the Place/篠崎奏平
・東京ブレンバスター⑪ 同情闘争は始まっている/但馬オサム
・編集長クライテリア日記 令和六年二月~三月/藤井 聡

【巻末オピニオン】
・「嘘」に塗れた日銀利上げ――腐敗を糺さんがために、不信の目を持つべし/藤井 聡

【書評】
・『嫉妬論 民主社会に渦巻く情念を解剖する』山本圭 著/前田龍之祐
・『日本哲学入門』藤田正勝 著/粕谷文昭
・『他人の家』ソン・ウォンピョン 著/橋場麻由
・『キェルケゴール 生の苦悩に向き合う哲学』鈴木祐丞 著/前田一樹
・『一神教と帝国』内田 樹、中田 考、山本直輝 著/冨永晃輝

【その他】
・挽肉は傷みやすい/吉田真澄(寄稿)
保護主義への準備を(鳥兜)
・なぜデフレ脱却、憲法改正、近代の超克が必要なのか?(鳥兜)
・観念に囚われた病人――滅ぶ日本の必然(保守放談)
大阪万博の行き詰まりが象徴するもの(保守放談)
・塾生のページ
・読者からの手紙(投稿)

shirasu.io
 そして、少し後のことなりますが、6月18日に、今回のクライテリオンにも寄稿頂いた辻田真佐憲さんの「国威発揚ウォッチ」に出ます。今回のお題は「江藤淳とは何者だったのか?—文芸批評、保守思想、アメリカ」。
 江藤淳は、若い頃に随分と読みましたが、そのウェットな部分が少し苦手で、あまり言及はしてきませんでしたが、しかし、江藤が重要な保守言論人であることに変わりはありません。
 ちなみに、私自身の江藤淳論は、今回のクライテリオンの拙稿や、以下の二冊(↓)なんかで読めます。ご興味がありましたら、手に取って頂ければと思います。



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 あと、先日、「神社チャンネル」の方に出てきました。上記の動画はライブ配信されたものですが、当日は、その他結構色々と収録したので、今後も、「神社チャンネル」「むすび大学チャンネル」と、色々出てくるのではないかと思います(笑)。出来上がり次第、こちらの方に上げていこうかと思います。
 最近の自分にとって「動画」は、ほとんど「社交」の場と化していますが、でも、だからこそ気が抜けない現場でもあります。媚態と意気地と諦念と、その循環のあり方をその都度模索しながら、何とかやっていくしかありません。よろしくお願いします!