『クライテリオン』最新号、毎日ナビゲート、與那覇さんの新刊

 『表現者クライテリオン』の最新刊(2021年7月号)が出ました!
 今回の特集は二つです。一つが「孫子(まごこ)のための『財政論』―中央銀行政治学」と題した経済政策論及び貨幣論。そして、もう一つが「コロナがもたらす教育崩壊」です。表紙には「養老孟司」「浅田統一郎」「大澤真幸」「宮台真司」という新鮮な名前が踊っていますが、どの対談も読み応え十分です。
 第一特集の浅田統一郎氏と藤井編集の対談「ケインズ革命を加速せよ!―中央銀行プラグマティズム」は、そのままマクロ経済学ケインズ経済学、MMTの物凄く分かり易い入門になっているし(逆に言えば、ここまで簡潔に理路整然と積極財政の可能性と意義を書かれると、緊縮派=ネオリベに反論の余地はないはずです)、また、大澤真幸氏と柴山さんとの対談「コロナ禍から資本主義の『その先』へ」は、これまた見たことないくらいハイレベルな「貨幣論」になっています。
 とりわけ後者の対談は、MMTを知見の基盤としながらも(つまり、その理論的正しさを認めながらも)、そのMMTがまだ埋めきっていない理論的な「穴」(租税や国家についての謎)を巡って、国家論や権力論、そして、その国家や権力の基盤にある「我々の共同体への無意識の贈与論」にまで議論が及んでいて、これは断言していいと思いますが、他の雑誌(あるいはMMTerなんかの技術論や経済研究誌)では絶対にお目にかかることのできない、もの凄く深い「思想的議論」になっています。
 また、第二特集の宮台真司氏と藤井編集長との対談「『若者の未来』は守れるのか?―社会学からの処方箋」は、企画当初は、果たして二人の相性はどうなのか…とも思っていたんですが、意外や意外(笑)、めちゃくちゃ盛り上がっています。
 もちろん、対談の後半では、中間共同体が消えうせた「社会という荒野を仲間と生きる」ことを言う宮台氏(宮台流加速主義、或いは宮台流パルチザン)と、そんな時代だからこそ「衣食足りて礼節を知る」ことの可能性に賭ける藤井編集長(藤井流積極財政論、或いは藤井流連合軍)の違いも議論されていますが、しかし、それとて対独「パルチザン」を「連合軍」が助けたように「協力」し合えないことはない。途中、今話題の『ヤクザと家族』なんかの映画の話も挟まっていて、読み易いのにハイレベルという、稀に見るユニークな対談になっています。
 その他、いつもの連載陣に加えて、学校現場(中学・高校)からのレポートを二つに、「信州・松本シンポジウム報告」など、盛りだくさんでお届けします。是非、是非、手に取って頂ければと思います。企画内容や企画意図を前もって知っている私が面白かったんだから、絶対面白いはずです(笑)。

 で、私自身が直接かかわった仕事としては二つです。一つは、「続・養老孟司、『常識』を語る―『不気味なもの』との付き合い方」のインタビューで、もう一つは、第二特集の方に寄稿した「〈われ―なんじ〉の教育論―大学の死をめぐって」という論考です。
 養老先生へのインタビューの方は、今号と次号に掲載した後、残りを前回インタビューと纏めて書籍化する方向で調整しています。また、論考の方では、私自身の大学教育論を展開しているのと同時に、初めて「相川宏先生」という、私がお世話になった「魂」の師匠について論じています。一読していただければ幸いです。
 以下は、『クライテリオン』7月号の「巻頭言」と「目次」となります。参考にしていただければと思います。

コロナ禍対策で世界各国は今、狂ったように国債発行し、政府支出を拡大している中、我が国日本は
孫子にツケ=借金を残すような『無責任』な事をしてはならぬ」とのかけ声の下、政府支出拡大が
中途半端な緊縮的水準に留まっている。しかし、世界各国は、現下の大不況を放置することこそが
『無責任』であり、現下の国民のみならず孫子の代の暮らし考えても、今こそ「中央銀行」の力を
フル活用し、徹底的に政府支出を拡大することが求められていると認識、実践している。つまり我が国一国が、
この経済危機に対処するという『責任』を果たしてはいないのである。
 かくしていま求められているのは、現代経済システムにおける「中央銀行」という存在の強力な威力を
認識し、それを踏まえたうえで孫子のために財政を徹底拡大する事を措いて他にない。こうした認識に
立つ本特集が、日本財政が正気を取り戻す一助となることを祈念したい。

                              表現者クライテリオン編集長 藤井 聡
目次
【特集1】孫子のための「財政論」 中央銀行政治学
[対談]
ケインズ革命を加速せよ!――中央銀行プラグマティズム/浅田統一郎×藤井聡
コロナ禍から資本主義の「その先」へ/大澤真幸×柴山桂太
[論考]
・「選択的な財政支出」が日本経済を救う――成長政策・社会保障財源としての財政出動・金融緩和/飯田泰之
・いまこそ将来世代のための政策を掲げよ/森永康平
・国家の信用はどのようにして生まれてくるのか?/仲正昌樹
・現代的貨幣理論による財政学のアップデートは可能か?/佐藤一光
・貨幣史、国家、中央銀行、そしてその先へ/望月慎
イデオロギーとしての「中央銀行の独立性」――ニュー・コンセンサスとMMTを比較する/金濱裕

【特集2】コロナがもたらす教育破壊
[対談]
「若者の未来」は守れるのか?――社会学からの処方箋/宮台真司×藤井聡
[論考]
・〈われ―なんじ〉の教育論――大学の死をめぐって/浜崎洋介
・コロナで加速した学校現場の混乱――高等学校からの報告/清水一雄
・一教師のコロナ禍体験記――マスク着用が当たり前になった学校で/髙江啓祐

【特別インタビュー】
養老孟司、「常識」を語る――「不気味なもの」との付き合い方 コロナ・虫・解剖学/聞き手 浜崎洋介

【連載】
[連載対談]
永田町、その「政」の思想(第4回)安倍・菅内閣の官邸システムの本質/佐藤優×藤井聡
[論考]
・「危機感のない日本」の危機――メディアと日本の目を覆うべき転落のコラボ/大石久和
・欧米保守思想に関するエッセイ 第3回 ソルジェニツィン Part3/伊藤寛
マルクスの亡霊たち――思想に殺された作家たち②/富岡幸一郎(虚構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー
・小さきモノへの愛 その㊀――日本人の原点/竹村公太郎(地形がつくる日本の歴史)
福田和也――思想の揺らぎについて/平坂純一(保守のためのポストモダン講座)
・居場所は法の外に――日米暴走族の「自治」のエートス/川端祐一郎(思想と科学の間で)
オオカミ少年と警鐘の倫理/松林 薫(逆張りのメディア論)
・移動の自由がもたらす「リベラル・ディストピア」――「移動せずともよい社会」を目指して㊄/白川俊介(ナショナリズム再考)
・「ポリティカル・コレクトネス」は多様性をもたらすのか?――言葉から考える⑧/施光恒(やわらか日本文化論)
・伝統の価値――満州から独りで帰ってきた少年の話/仁平千香子(移動の文学)
・編集長クライテリア日記/藤井聡
・メディア出演瓦版/平坂純一

【書評】
『危機の日本史 近代日本150年を読み解く』佐藤 優・富岡幸一郎 著/前田龍之祐
デヴィッド・ボウイ 無(ナシング)を歌った男』田中 純 著/田中孝太郎
フィヒテ入門講義』ヴィルヘルム・G・ヤコプス 著/篠崎奏平
『計算する生命』森田真生 著/薄井大澄
ベートーヴェンは怒っている! 闘う音楽家の言葉』野口剛夫 著/加藤真人

【その他】
表現者クライテリオン信州・松本シンポジウム報告
・読者からの手紙
・「脱炭素化」の幻想/「コロナ全体主義」の心理学――エーリッヒ・フロムに倣って(鳥兜)
・基準なき国の、基準なき政府――宣言延長と五輪開催/キルケゴールとコロナ危機――〈絶望=不協和〉に喘ぐ日本人(保守放談)

mainichi.jp
 で、連続の告知になってしまいますが、昨日掲載された「毎日ナビゲート」です。今回は、アメリカの社会学者であるレイ・オルデンバーグが唱えた「サードプレイス」論を、アーレントの「公的領域」論に重ねる形で、「過剰自粛の悪」について論じています。奇しくも、先に挙げた、宮台×藤井対談の副読コラムのような趣になっていますが、まあ「普通に考えれば、そうだよな」ということしか言っていないので、むしろ通じてなきゃおかしいとも言えますが。
 一読していただければ幸いです。


 それと、先日、ジュンク堂トークセッションをさせて頂いた與那覇さんの新刊紹介です。というのも、この評論集の巻末には、大澤聡氏と先崎彰容氏と開沼博氏に加えて、私との対談「平成文化論ー『言葉の耐えられない軽さ』を見つめて」(2019年2月16日/『表現者クライテリオン』2019年3月号)が収録されているからです。
 コロナ以前にやった対談を久しぶりに読み返してみましたが、一語たりとも修正の必要を感じません。というより、令和になって、ここで議論されていることは、より酷くなって現れている。内容的にも全く古びていませんが、與那覇さんのキレキレの文章と共に、一つの歴史的証言・思考の記録として読んでいただければ幸いです。

中村文則『カード師』の書評を日経に寄稿しました。

www.nikkei.com

 師匠からの教えもあって「新聞書評では批判しない」ということにしているのですがーーあの短い囲い記事(紹介記事)では、批判を納得してもらうだけの論理や材料を十分に並べられないし、そうである以上、批判が無責任になってしまうので――、正直申し上げて、今度の『カード師』は想像以上にキツかった…。書評の方は「嘘」にならない程度には纏めていますが――つまり、拾ってあげるられるところを拾って書いていますが、それでも読む人が読めば、私の評価は明らかでしょう。
 初期の『銃』や『遮光』には私自身、こんな人間が同世代にいるのかと衝撃を受けましたが、しかし、それもすでに『掏摸』のあたりから怪しくなってきて、『教団X』に至って完全にダメになってしまい、そして、今回の『カード師』は、まさにダメ押しでした…。ただ、その理由を書いてしまうと、それ自体が「裏の批評」になってしまうので、ここでは書きません。
 でも、これだけは言っておいてもいいでしょう。ダメになればなるほどに評価が高まり、売れて行ってしまう「文芸業界」というのは、本当に腐っています。おそらく、今、流通しているのは「批評」ではなく「評判記」なんでしょう。今後、中村文則の書評を書くとしたら、「批判をしてもいい」という前提でしか書かないことにします(つまり、批判は困るという場合は、仕事を引き受けません)。

福田逸氏の『父・福田恆存』(文春学藝ライブラリー)の「解説」を書かせていただきました。

 名著である福田逸氏の『父・福田恆存』が、ついに文春学藝ライブラリーに入りました! 
 それ自体非常にめでたいことなんですが、さらにありがたいことに「解説」の筆を私が執らせていただいています。心を込めて書きました。是非、手に取って頂ければと思います。ここで更に「解説」を書くと、屋上屋を架すことになってしまうので(笑)、多くは語りません。が、冒頭にも記したように、一人の人間が一人の人間と深くかつ真剣に関係することの宿命――その信頼と葛藤、喜びと悲しみ、愛と憎しみ――を描いた、この『父・福田恆存』は紛れもなく名著です。
 追伸―あとで、調べたら「解説」だけだったら稀代の文学者を父に持ち葛藤を抱えた子 亡き父に向けて書く、長い長い「手紙」 『父・福田恆存』(福田 逸) | 書評 - 本の話の方で読めるようですね。是非、一読よろしくお願いします。

 以下は、単行本刊行時の概要説明と、今回の文庫本の宣伝文です。少しでも参考になればと思って、ここに掲げておきます。末永く読み継がれる本になることを祈念しております。

単行本の宣伝文

“父殺し”に至る親子の葛藤とは—— 没後二十余年、初公開資料で大岡昇平吉田健一三島由紀夫ら 「鉢木會」の交わりから、晩年の父子の軋轢までを率直に描ききった追想録。 大岡昇平との和解。終生信頼した中村光夫。 チャタレイ裁判を吉田健一と弁じ、三島由紀夫天皇論を交わした父に忍び寄る老い。 そして、親子の長く苦しい葛藤——初めて明かされる晩年の日々

文庫本の宣伝文

〈戦後言論界の巨人、知られざる素顔〉
「友達のやうな親子ですなぁ」――
評論、劇作、翻訳など多岐にわたって活躍した父・福田恆存
父と何でも語り、仲が良かった次男である著者は、父の影響で同じ演劇の道に進む。
やがて、病に倒れ、老いゆく父と、劇団経営をめぐって対立するようになる。
父の名を穢したくないと悩み、また父のことを最も理解しているのは自分だという自負と傲慢さから、ついに父に引導を渡す。確執の日々を経て、最期のときを迎えた父が、著者に遺した言葉は――。


遺された手紙や手記を紐解き、また記憶を引き寄せるとき、在りし日の父の姿が浮かび上がる。
「鉢木會」での大岡昇平中村光夫吉田健一三島由紀夫らとの交友、家族への情愛、長く苦しい父子の葛藤を、懐古と悔恨を込めて描く追想記。


「本書は、福田恆存という特異な文学者を父に持った息子による一世一代の文芸評論、そう言って大袈裟に聞こえるなら、人が一生に一度きりしか書けない、亡き父に向けた、長い長い「手紙」である。」 ――文芸評論家・浜崎洋介氏「解説」より

映像配信サービス『月刊表現者』が創刊されます!

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『月刊表現者』の詳細はこちらから→https://pages.keieikagakupub.com/24hg_y/

 6月より、映像配信サービス『月刊表現者』を創刊いたします(宣伝動画は、こちら→変異ウイルスより怖い?ナチスにそっくり怪物の正体(期間限定 5月31日まで) - YouTube)。
 雑誌『表現者クライテリオン』(隔月刊)、表現者塾(月1回の講演会)、表現者大学(月1回の読書会)と連動した新たな試みとなりますが、できるだけ多くの方に見ていただければと思います。既に第一回分の録画は済ませていますが、その雰囲気も含めて、藤井編集長をはじめ編集委員4人の議論に接したいと言う方がいれば、是非視聴していただければと思います。編集会議や座談、あるいは、年に1、2回のシンポジウムを別にすれば、4人の編集委員が一同に会するという機会は、そこまで多くはありません。
 本当に厳しい時代ですが、一緒に歩いてくれるという奇特な方がいらっしゃれば、心からありがく存じます。引き続き「雑誌」(言論)に基盤を置きながらも、講演会に学習会、それに映像配信にと精一杯頑張っていきたいと思います。何卒、よろしくお願いいたします!

6月11日に「與那覇潤書店第2回オンラインイベント:日本人は、いつから『議論』ができないのか?―與那覇潤×浜崎洋介」告知

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【6/11】【與那覇潤書店第2回オンラインイベント】日本人は、いつから「議論」ができないのか?mjbookonline.myshopify.com
 6月11日に「與那覇潤書店第2回オンラインイベント:日本人は、いつから『議論』ができないのか?―與那覇潤×浜崎洋介」をお送りいたします。
 與那覇さんとは、『クライテリオン』で対談して以来、ことあるごとにお話しさせていただいてきましたが、この度は、初めてお呼ばれしました(笑)。
 できることなら、観衆の前でのトークインベントにしたかったんですが、緊急事態宣言ということもあって、それも叶いません。ということで、オンラインイベントになってしまいましたが、それならそれで観客数の制約がないことを逆手にとって、できるだけ広がりのあるトークイベントにできればと思います。
 お題は「日本人は、いつから『議論』ができないのか?」となっているので、おそらく「歴史」に基づいた日本人論、あるいはコロナ論になるんじゃないかと思いますが、もし、お時間がありましたら、覗いていただければ幸いです。以下は、【6/11】【與那覇潤書店第2回オンラインイベント】日本人は、いつから「議論」ができないのか? – mjbookonlineの詳細になります。よろしくお願いいたします!

<開催日時>
2021年6月11日(金)
19:30~21:00
※イベント終了後1週間のアーカイブ配信があります。


<販売期間>
販売開始:2021年5月11日(火)10:00
販売終了:2021年6月11日(金)18:30


<開催方法>
ZOOMによる配信となります。
視聴者の方の顔や音声は入りません。


ご購入いただくと、「ダウンロードの準備ができました」というメールが届きます。そちらのメールにダウンロードのリンクURLがございますので、そちらから配信URLの記載されたPDFファイル(URL_20210611J.pdf)をダウンロードしてください。
ダウンロードしたPDFは、iPhoneの場合は「ファイル」アプリ内にて、androidの場合はブラウザのメニューから「ダウンロード」にて、確認していただけます。

また、当日ご覧になられない場合、一週間のアーカイブ視聴を用意しておりますので、そちらもご利用ください。
配信用URLがダウンロードできないなどの不備がありましたら下記にご連絡ください。
丸善ジュンク堂書店 オンラインイベント担当
mjbookonline@maruzenjunkudo.co.jp


<イベント内容>
ついに3回を数えることになったコロナ禍での緊急事態宣言。
しかし、以前の宣言には効果があったのか・生じる副作用とのバランスは適切かなど、本来あるべき「議論」がすっかりスルーされたまま、なんとなくタイミングを見計らうだけの「空気」で、発出や解除が毎回決められている感は否めません。
どうして日本人は、自分たち全員の生活に関わる重大事ですら、きちんと主張を言葉にして、妥当性を吟味・検証することがこんなにもできないのか。
福田恆存研究を軸に、戦後以来の「ことば」の機能不全を探究してきた文芸批評家と、近現代史の知見から眼前の事象にも発言し続ける歴史学者とが、空気ではなく言葉で、「日本人が議論下手になった経緯」を掘り下げ、徹底解明します。


<登壇者紹介>
那覇潤(よなはじゅん)
1979年生。歴史学者東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。学者時代の専門は日本近代史。地方公立大学准教授として教鞭をとった後、双極性障害にともなう重度のうつにより退職。2018年に自身の病気と離職の体験を綴った『知性は死なない』が話題となる。2020年、『心を病んだらいけないの? うつ病社会の処方箋』(斎藤環との共著)で第19回小林秀雄賞を受賞。著書に『中国化する日本』、『日本人はなぜ存在するか』、『歴史がおわるまえに』、『荒れ野の六十年』ほか多数。2021年3月からジュンク堂書店池袋本店にて第31代目作家書店の店長を務めている。


浜崎洋介(はまさきようすけ)
1978(昭和53)年、埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒業。東京工業大学大学院社会理工学研究科価値システム専攻博士課程修了。博士(学術)。文芸批評家。日本大学非常勤講師、『表現者クライテリオン』編集委員、「すばるクリティーク賞」選考委員。執筆活動の傍ら各地で講演・シンポジウム・塾などを開く。著書に『福田恆存 思想の〈かたち〉―イロニー・演戯・言葉』(新曜社)、『反戦後論』(文藝春秋)。共著に『アフター・モダニティ―近代日本の思想と批評』(北樹出版)、『西部邁 最後の思索「日本人とは、そも何者ぞ」』(飛鳥新社)。編著に福田恆存アンソロジー三部作『保守とは何か』『国家とは何か』『人間とは何か』(共に文春学藝ライブラリー)。近著に『三島由紀夫: なぜ、死んでみせねばならなかったのか』(NHK出版)、映像講座『日本近現代精神史』(経営科学出版)がある。               

毎日ナビゲート「緊急事態宣言と『日本病』」、その他

 毎日ナビゲートですが、今回も結局、緊急でも何でもない緊急事態宣言に附き合って「緊急事態宣言と『日本病』」ですw。
 「自粛と感染収束は関係がない」という実証研究を無視して(つまり「飲食店」が主な感染源ではないのに!)、しかも、すでに感染率は3月中旬からピークアウトしているにも関わらず(それどころか、大阪府に至っては宣言を出した4月25日には実効再生産数が「1」を割っていたのに!)、第1波~第3波の経験に何も学ばず、相も変わらずの「イタチごっこ」(戦力の逐次投入)に余念がない「緑のたぬき(小池)」と「妖怪ぬらりひょん(菅)」と「自粛バカ(大衆)」ですが、しかし、生きている間に、こうやって実際に国が「狂気」のなかに没していく(亡びていく)瞬間を見るとは思ってもみませんでした。
 去年(2020年)の総死者数は、11年ぶりに1万人減少(!)の138万4544人で、逆に、自殺者は11年ぶりに前年比750人増(3.7%増)の2万919人。でもって、少子化は2万6千人以上進んで過去最少を更新し、「病床数が世界一」で「欧米に比べて重傷者数・死者数が圧倒的に少ないの日本」で「医療崩壊」だというんだから、カフカもびっくりの不条理世界です(というか、東京都は「医療崩壊」さえ起こっていないなかでの「緊急事態宣言」です!)。もう何が何だか分かりませんが、最近は、本気で『城』でも読み返そうかなと考えはじめています(笑)。
 まぁ、嘆いていても始まらないので、少なくとも自分の身の回りだけは「日常」を維持していくしかありません。つくづく「死に至る病」(キェルケゴール)を患う〈近代人=大衆人〉の問題は根深いと感じますが、そんな「近代日本人の弱さ」を想起しておくためにも、今回の「自粛騒動」を「日中戦争」に比較して書いてます。新聞なので抑制して書いていますが、一読していただければ幸いです。
mainichi.jp

 あと、アウリオン叢書20『身体と身体―パフォーマンス・批評・精神分析』(弘学社)という本に「文芸批評と無意識―小林秀雄正宗白鳥の作について』について」というのを発表したんでした。以下(↓)は、アウリオン叢書16巻の頁ですが、ネットで調べても、これしかないので挙げておきます。狭い学術界隈の本なので仕方ないですね(笑)。
blog.livedoor.jp

『表現者クライテリオン』の最新号( 2021年5月号)が出ました!

表現者クライテリオン 2021年5月号

表現者クライテリオン 2021年5月号

  • 発売日: 2021/04/16
  • メディア: 雑誌
www.youtube.com
 『表現者クライテリオン』の最新号(2021年5月号)が出ました!
 特集は「コロナ疲れの正体―暴走するポリコレ」です。ページ数は、発売所をビジネス社さんに変えてから最大の240頁で、座談、対談、インタヴィュー、論考とてんこ盛りの内容になっています。ここまで「領域横断」的で「自由」にゲストを呼んでいる雑誌は『表現者クライテリオン』だけだと自負していますが、今回も、その例に漏れません。是非、手にとって頂ければと思います。
 ただ噂によると、一部、三浦瑠璃氏を呼んだことで炎上しているとの話も耳にしました(笑)。が、「今更?」と思うのと同時に、内容を読む前から本当にバカバカしい話だと思います。最近になって『クライテリオン』を手に取った人は知らないのかも知れませんが、西部先生の『表現者』時代から、本誌には、佐高信氏から木村三浩氏、榊原英資氏から共産党の志位委員長まで、文字通り「右と左」「資本主義と共産主義」を超えて様々な方に登場していただいていますし、「領域横断」は『表現者』の十八番であるはずなんですが⋯。いや、逆に言えば「ホシュ」や「リベラル」といったラベルのついた蛸壺に「安全」に籠ろうとする態度ほど「硬直したポリコレ」を示したものもなく、それこそ「自己閉塞」の態度、つまり、オルテガの言うところの脊髄反射的な「大衆」にほかなりません。「対話」するだけの度量もなくて、何が「言論」かと言いたくなりますが…まぁ、そういうことで(笑)、文字通り「右」と「左」を超えて、「コロナ疲れの正体」と「ポリティカル・コレクトネス」の本質について様々な方に語ってもらっています。
 今回のコロナ自粛を巡っては、「リベラル」も「保守」も分裂しましたが、その意味では、「従来の対立軸」の仕切り直しにはもってこいの内容ではないでしょうか。手に取って頂ければ幸いです!

 ちなみに、私が直接関わっている仕事としては、まず、①特集座談「知識人は『ポリコレ』にどう向き合うか―『保守』と『リベラル』の対話を通じて」(東浩紀氏×辻田真佐憲氏×藤井聡編集長×浜崎)と、②與那覇潤氏インタヴィュー「『コロナ依存症』に陥った日本社会をどう癒すか―過剰自粛、ポリコレ、ポスト・トゥルースの時代を超えて」、それから、③論考「『ポリコレ』について私が知っているニ、三の事柄」の三つです。どれも読みごたえのある原稿にすることができたと自信を持っていますが、この場を借りて、東浩紀氏、辻田真佐憲氏、そして、與那覇潤氏には心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
 私の論考も、久しぶりに「です・ます」で書いてますので(笑)、「思考しようとする人」なら誰でも分かるものになっているはずです。是非、一読、よろしくお願いいたします! 以下は、編集長の巻頭言と目次となります。

☆巻頭言

昨年から始まった「コロナ騒動」。第二波、第三波、そしてこの度の第四波と新型コロナウイルスの感染拡大の波が訪れる度に、政府も国民も慌てふためき、自粛だ時短だ緊急事態だと騒ぎ立ててきた。
そうした騒ぎを扇動したのが「コロナは怖い自粛しろ」という意見が政治的に正しい、すなわち「ポリティカル・コネクトネス」(ポリコレ)だという強固な認識だった。
しかしそれはあくまでもタテマエであり、コロナ騒動を繰り返す内に、世間の人々のホンネはコロナは当初危惧したほどに恐ろしいものではないというものに徐々に変遷していった。つまり人々はコロナに「慣れて」いったのである。
結果、コロナを巡るホンネはタテマエと大きく乖離し、それに伴い人々の間に「コロナ疲れ」が蔓延するに至った。
そのコロナ疲れはもちろん精神的なものであると同時に、社会的・経済的疲弊を意味するものであった。
私達はこの急激に肥大化しつつある「コロナ疲れ」に適切に対処することが出来るのだろうか?
是非、本特集を通して読者各位に、その方途をご吟味いただきたい。

表現者クライテリオン編集長藤井 聡


●目次

☆【特集】コロナ疲れの正体――暴走するポリコレ

・(座談会)知識人は「ポリコレ」にどう向き合うべきか――「保守」と「リベラル」の対話を通じて/東浩紀×辻田真佐憲×藤井聡×浜崎洋介
・(鼎談)なぜ日本では「自粛」が“政治的に正しい"のか――コロナ禍中の思考停止について/三浦瑠麗×宮崎哲弥×藤井聡
・(インタビュー)「コロナ依存症」に陥った日本社会をどう癒すか――過剰自粛、ポリコレ、ポスト・トゥルースの時代を超えて/與那覇潤×聞き手浜崎洋介
・(対談)コロナ自粛「腰抜け」論に抗え!/小林よしのり×藤井聡
アメリカに吹きすさぶポリコレの嵐――民主党の「改造」は何をもたらしたか/会田弘継
・「ポリコレ」について私が知っている二、三の事柄/浜崎洋介
道徳感情、燃ゆ/綿野恵太
ポリティカル・コレクトネスの何が問題か――アメリカ社会にみる理性の後退/ベンジャミン・クリッツァー
・社会に蔓延る「ポリコレ」――その心理的背景/加藤真人


☆【連載対談】
・永田町、その「政」の思想(第3回)大衆社会と如何に対峙するか/佐藤優×藤井聡
・大変動期を語る(後編)資本主義の地殻変動/鎌田浩毅×柴山桂太


☆【連載】
・「先進国で日本だけが」ばかりの日本国/大石久和(「危機感のない日本」の危機)
・欧米保守思想に関するエッセイ第2回 ソルジェニツィン Part2/伊藤寛
SNSがもたらす「沈黙の二重螺旋」/松林 薫(逆張りのメディア論)
マルクスの亡霊たち――思想に殺された作家たち1/富岡幸一郎(虚構と言語戦後日本文学のアルケオロジー)
・災害で進化する都市/竹村公太郎(地形がつくる日本の歴史)
・早稲田に直己先生がいた時代/平坂純一(保守のためのポストモダン講座)
・菜食主義を考える――倫理はいかにして成熟するのか/川端祐一郎(思想と科学の間で)
・「領土」について政治哲学的に考える――コスモポリタニズム批判㊅/白川俊介(ナショナリズム再考)
・帰らなかった日本人妻たち――慶州ナザレ園にて/仁平千香子(移動の文学)
・「英語化が経済成長を促す」は本当だろうか? ――言葉から考える7/施光恒(やわらか日本文化論)
・編集長クライテリア日記/藤井聡
・メディア出演瓦版/平坂純一


☆【寄稿】
ゲルニカカサブランカ/橋本由美


☆【書評】
『農の原理の史的研究 「農学栄えて農業亡ぶ」再考』藤原辰史 著/田中孝太郎
財政赤字の神話 MMTと国民のための経済の誕生』ステファニー・ケルトン 著/金濱裕
『新たな極右主義の諸側面』テーオドル・アドルノ 著/前田龍之祐
『ヨーロッパ冷戦史』山本健 著/篠崎奏平
金子兜太 俳句を生きた表現者井口時男 著/薄井大澄
小津安二郎への旅 魂の「無」を探して』伊良子序 著/玉置文弥


☆【その他】
表現者賞・奨励賞発表
・スガノミクスが地方を滅ぼす/お為ごかし徹底批判のための真摯な勇気を(鳥兜)
・死ぬ機会の「ジェンダー・ギャップ」/選択的夫婦別姓論の短絡(保守放談)
・読者からの手紙

 あと、そうそう、明日はいよいよ松本シンポジウムですね。「松本」と言えば思い起こされることは多いんですが、それを語るのは、シンポジウムにとっておきます。近隣にお住まいで、ご興味のある方は、是非、会場でお会いしましょう!
 詳しくは以下のページをご参照ください(ちなみに、参加申し込みが多く、以前予定されていた場所から会場変更になりました。お間違えなく!)。
the-criterion.jp