批評の手帖

浜崎洋介のブログです。ご連絡は、yosuke.khaki@gmail.comまで。

『表現者クライテリオン』と『Voice』の最新刊!

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 『表現者クライテリオン』の最新号(2023年1月号)が発売になりました!
 今回の特集は「『反転』の年 2002—2023・戦争、テロ、恐慌の時代の始まり」です。
 「2022年」は、ウクライナーロシア戦争に始まり、安倍晋三元首相の暗殺と「まさか」のニュースと共に始まりましたが、そんな「これまでの時代からの反転」を受けて、新たな「反転攻勢(2023年)」に出るための思索を特集しています。
 米中ロ覇権闘争の現実のなかで孤立していく日本(伊藤貫氏、近藤誉氏)、幕末と現代日本の「危機受容」の精神性の違い(星山京子氏)、現在の経済危機にあって政府自体が「獅子身中の虫」となってしまっていることへの皮肉に充ちた現実(森永康平氏)、現代においてますます「積分回路」(歴史と常識)から分裂病的な「微分回路」(検索と陰謀論)へと「反転」していく日本人の心性(與那覇潤氏)、あるいは「2022年」ではなく、日本の大衆がポリティカリーにコレクトなビョーキに一斉にり患した「1995年」(阪神淡路大震災オウム真理教事件の年)に日本社会の「反転」を見る視点(外山恒一氏)、また、そこからの「反転攻勢」を試みるにしても、日本人の歴史人類学的与件(直系家族的な与件)を引きう受けながら思索することの重要性の指摘(堀茂樹氏)、そして、危難の時であるからこそ、まずは戦前と戦後とで根本的には何一つ変わらぬ日本人の心性についての反省、そして何を信じて歩くかについてのタブーも遠慮もない思考からはじめるしかないと説く言葉(小幡敏氏)などなど…、今回も素晴らしい特集原稿が集まりました。私自身が勉強しながら編集していますが、歴史意識に貫かれた、ここでしか読めない原稿ばかりだと断言できます。
 是非、手に取って頂ければ幸いです。
 私の登場は少ないのですが、仁平千香子さん(元山口大学講師/令和元年・表現者奨励賞受賞)のデビュー作『故郷を忘れた日本人へ—なぜ私たちは「不安」で「生きにくい」のか』(表現者叢書)の刊行を祈念した特別座談会「人はなぜ『故郷』を求めるのか―人の『強さ』と『弱さ』の由来をめぐって」(仁平千香子氏×藤井聡氏×浜崎)と、編集委員座談会「映画で語る保守思想・第2回―『ランボー』に見る怒りと復讐の倫理(中編)」に出ています。
 あと、最後になってしまいましたが、私の「教え子」である篠崎奏平氏(音楽家・すばるクリティーク賞最終選考)の<新連載>「欲望の戦後音楽ディスクガイド 第1回 The Beatles/Please Please Me」も始まりました。一読いただければ幸いです!
 以下は、最新号の目次となっています。ご参照ください。

目次
【特集】「反転」の年 2022-2023――戦争、テロ、恐慌の時代の始まり
[特集座談会]
・二〇二二年を振り返る 戦争・テロ・恐慌の時代への大転換/仲正昌樹×吉田 徹×藤井 聡×柴山桂太
[特集対談]
・米中露覇権闘争と混迷する世界/伊藤 貫×藤井 聡
[特集論考]
習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン/遠藤 誉
・博士の異常な信仰、または科学は如何にして驕るのを止めて宗教を受け入れるようになるのか/與那覇
グローバリズムと日本アイデンティティ 何が幕末日本の危機を救ったか/星山京子
・「ホモ・サピエンス」への反転のすすめ/堀 茂樹
・日本は内憂外患を転機に出来るのか/森永康平
・二〇二二年に「大事件」は起きたのか “第四次世界大戦”の視点から/外山恒一
・危機の時代を前に/小幡 敏
【特別座談会】
統計学・行動科学から問い直す、「コロナ専門家」の倫理観[前編]/松原 望×竹村和久×藤井 聡
・人はなぜ「故郷」を求めるのか? 人の「強さ」と「弱さ」の由来をめぐって/仁平千香子×藤井 聡×浜崎洋介
【連載】
・<新連載>欲望の戦後音楽ディスクガイド 第1回 The Beatles/Please Please Me/篠崎奏平
・「農」を語る 第2回 地方の「農」は日本の最後の砦/堤 未果×藤井 聡
・虚構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー 第二十四回 マルクスの亡霊たち 新しい全体主義の到来①/富岡幸一郎
・戦争を知らないオトナたち 第二回 死線上の男たち 地獄に咲いた、生命の輝き/小幡 敏
経営学で読む文学 第④回 吉本隆明共同幻想論』 幻想の中の組織、組織の中の幻想/岩尾俊兵
逆張りのメディア論28 ツイッター騒動が示す新聞生き残り戦略/松林 薫
ナショナリズム再考 第19回 リベラリズムは世代間正義を論じることができるか 愛着と忠誠の政治哲学序説/白川俊介
・葬られた国民作家 第三回 小説「海軍」と父のおもかげ/平坂純一
・映画で語る保守思想 第2回 『ランボー』に見る、怒りと復讐の倫理(中編)/藤井 聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
・東京ブレンバスター③ 左翼こそが嫌韓だった時代/但馬オサム
・編集長クライテリア日記 /藤井 聡
【寄稿】
・「物の理解される」ということ 岡倉由三郎という生き方/内丸公平
【書評】
・『〈実存哲学〉の系譜 キェルケゴールをつなぐ者たち』鈴木祐丞 著/前田龍之祐
・『マーク・フィッシャー最終講義 ポスト資本主義の欲望』マーク・フィッシャー 著/田中孝太郎
・『ジョン・デューイ 民主主義と教育の哲学』上野正道 著/篠崎奏平
【巻末オピニオン】
・「統一教会」問題を我々はどう考えるべきなのか/藤井 聡

 あと、第三十一回山本七平賞・奨励賞の選評と受賞者の言葉を載せた『Voice』(2023年1月号)の方も発売になりました。
 特集を見ると「2023年の世界—戦争の行方、経済危機の足音、パンデミックの帰趨」と、『表現者クライテリオン』と似たような特集になっていますが(笑)、寄稿している方々はさすがに重なってませんね。
 それにしても「選評」を頂いたのは、修士論文や博士論文の審査を別とすれば、生まれて初めてのことでしたが、なかなか貴重な体験となりました。特に長谷川真理子氏(総合研究大学院大学学長)の「小林秀雄は大嫌いである」から始まる選評は、最初から最後まで小林秀雄が如何に嫌いであるかを力説するもので、なかなか読ませます(笑)。私自身も短い「受賞者の言葉」を寄せいています。一読いただければ幸いです。