批評の手帖

浜崎洋介のブログです。ご連絡は、yosuke.khaki@gmail.comまで。

冨民連載動画の告知と、お詫びと訂正。

www.youtube.com
 冨民安全研究所の定期動画です。前回は『ぼんやりとした不安の近代日本』の「入門」をやったので、今回は、松本さんにリードしていただきながら、それを実際に読み込んでいく「本編」…というか、順を追って放談していくという動画になっています(笑)。
 ただ、ここでお詫びと訂正があります。
 動画のなかで「江戸時代には小作農という概念がない」と言ってしまっていますが、コメント欄でも指摘されているように、もちろん、そんなことはありません(汗)。言いたかったのは「江戸時代には、資本主義を背景とした小作農化の悲劇のようなものはなかった(あったとしても少なかった)」ということでした。が、動画というのは恐ろしいもので、話しの流れのなかでついつい口が滑ってしまった勇み足が残ってしまいます。そのときは「まぁ、これくらいはいいか」という感じだったんですが、やっぱりダメです。
 「小作農」という概念自体は、たしかに江戸中期辺りからあるんですが、日清戦争後に農村で引き起こされた変化は、「小農制と地主制」の拡大と定着です。つまり、耕地を集積した大地主たちが、所有地を小農経営者に賃貸する貸付地主(寄生地主)化していったのが明治時代、特に日清戦争後の時代なのです。それによって小作率は上昇(統計の取り方にもよりますが、日清戦争前の明治16年=35.9%⇒日露戦争前の明治36年=44.5%—三和良一・三和元『〔第四版〕概説日本経済史・近現代』東京大学出版会・参照)、そのことによる影響の一部として、『女工哀史』的な状況が拡がって行ったというのが正しい言い方なのでしょう。
 やっぱり、歴史の素人が、記憶だけでなんだかんだと言ってしまうと、思わぬところで足を取られてしまいます(反省)…。こういう失敗(勇み足)は、これからもやってしまうかもしれませんが、気がつけば、その都度訂正致しますので、ご寛恕いただければ幸いです。
 この度は、お騒がせして申し訳ありませんでした。謹んで、ここに訂正申し上げます。