批評の手帖

浜崎洋介のブログです。ご連絡は、yosuke.khaki@gmail.comまで。

久しぶりの「紀尾井町床屋政談」!—「『戦争』と日本思想――敗戦からウクライナまで」(與那覇潤×浜崎)

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 少し告知が遅れてしまいましたが、2月27日(月曜日)、久しぶりに「紀尾井町床屋政談」の生放送に出てきました。
 お題は「『戦争』と日本思想――敗戦からウクライナまで」で、お相手は、いつもの與那覇潤さん。
 與那覇さんとは、いよいよ付き合いも長くなってきましたが、それもあって議論の方も快調です(笑)。無料公開の最初の30分は、與那覇さんの山本七平論と、小林秀雄についての拙論についての感想を言い合うところから始めていますが、後半、いよいよ、ウクライナ戦争を媒介に、日本人はどのように生きるべきかという人生論と文化論です。
 この「紀尾井町床屋政談」は文春ウェビナーの定期連載動画として公開して行くとのことですが、末永くお付き合いいただけると幸いです!
 以下は、ウェビナーの告知文です。

◆いま甦る、山本七平小林秀雄
 文藝春秋 電子版は、2月28日(火)19時〜、文芸批評家の浜崎洋介さんと評論家の與那覇潤さんによるオンライン対談イベント「『戦争』と日本思想――敗戦からウクライナまで」を開催します。
 ウクライナ戦争に直面する現在、早くからポスト冷戦の混乱を見抜いていたのが、評論家・山本七平です。山本による独自の「ロシア文明史」観をあつかったのが、與那覇さんが「文藝春秋」2023年1月特別号に寄稿した「山本七平「『空気』の研究」を超えて」です。
 與那覇さんは、「国際社会の目には大事件として映った1991年のソ連解体は、『ロシア文明史』の観点ではさほどの画期ではなく、むしろキリスト教時代も共産主義時代も貫いて続いてきた、強権による統合への欲求(ツァーリズム)は変わることなく今日に至るのでは」といった山本七平の文明への大局的な視座に注目し、「他国と共通のフォーマットを受け入れた後でも、なお変化せずに残り続ける部分にこそ文明の本質があり、それを見落とすと私たちは判断を誤ります」と警鐘を鳴らしています。
 同論文では、互いに異なる文明同士が共生する可能性が、山本七平の思想に読み込まれます。異文明を排除する「原理主義」に陥らない発想が、戦争や欧米由来の「正義」が流行する昨今に求められる姿勢なのかもしれません。
 一方、浜崎洋介さんは「文藝春秋」2022年10月特別号に「小林秀雄文藝春秋」を寄稿し、菊池寛小林秀雄の関係から日本近代の100年間を描き出しています。同論文では近代日本知識人の抱えた病理と、それに対する小林秀雄の批判がまとめられています。
小林秀雄の世代にとって、西欧化=近代化の流れは既定コースであり、それ以前にあった『日本的なるもの』――つまり、目の前の作品の良し悪しを決める故郷感覚や生活感覚は、すでに自明のものではなくなりつつありました」と浜崎さんが書くとき、ここにも異なる文明の保存と、近代特有の普遍主義との衝突が見られます。
 ウクライナ戦争の開戦から一年が経った今、お二人が戦争と日本思想の系譜を辿ります。