批評の手帖

浜崎洋介のブログです。ご連絡は、yosuke.khaki@gmail.comまで。

新刊本『ぼんやりとした不安の近代日本—大東亜戦争の本当の理由』出版のお知らせと、塩尻学習会、その他もろもろ…

 明日、8月1日に拙著『ぼんやりとした不安の近代日本—大東亜戦争の本当の理由』(ビジネス社)が刊行されます!
 基本は『表現者クライテリオン』で「自己喪失の近代史—日本近代精神史入門」として連載していたものを主軸としていますが、それに第5章「肥大化する『空気』と自己喪失」(昭和Ⅱ)と、第6章「日本近代とは何だったのか?」と、少し長めの「終わりに—あとがきに代えて」をくわえて改めて纏め直したものになっています。
 私自身は、もちろん「歴史の素人」ですが、「歴史の素人」だからこそ書けたこともあるかと思います。とはいえ、本を書いたときはいつもそうですが、著者は基本、俎板の鯉です(笑)。連載中の声援には励まされてきましたが、今はただ読めるものになっていることを祈るばかりです。何卒、よろしくお願いいたします。

追記
 以上の文章だけでもいいかと思ったんですが、改めて読み返してみると素気なさ過ぎて、これじゃ「宣伝」としてマズいと思い直して、追記します(笑)。
 まず、Amazonなどの紹介文の引用から。

80年前の課題=現代日本が抱える大問題。
どう、解決への道筋をつけるか。


米欧との“文明の戦い"に挑む「空気」は、こう作られた。
自己喪失とリアリズムの霧散。そこに到るまでの必然を、
明治・大正・昭和の人々の苦悩と葛藤のうちに描き出す。
政治テロはなぜ起きるのか! ?


日本は大正時代、世界の5大国の1つになった。しかし独自性を発揮出来ず、自己喪失に陥る。その穴を埋めるべく進められた大東亜共栄圏構想、戦争……。
本書では大正時代~昭和前期に顕著になった日本人の「自信喪失」状況を浮かび上がらせる。それを乗り越えるべくブームになった日本浪漫派、京都学派による「日本論」を解説し、国民に与えた影響を描き出す。同時に、欧米との関係の失敗を分析し、日本の未来へのヒントを提示する。

【本書の主な内容】
日露戦争の勝利と「時代閉塞」/武士道を忘れた日本人/鴎外が語った「型」の喪失/山縣有朋の死と近代日本の機能不全/政党政治と揺らぐ《正統性=レジティマシー》/関東大震災と流言飛語/殺風景なモダン都市東京へ/「マルクス主義」という名の宗教/昭和恐慌という「非合理性の打撃」/「猫町」としての日本近代/「文明開化の論理」の終焉/二・二六事件を導いた「空気」/「機関」でも「主権」でもない天皇制へ/近衛文麿のモダン性と復古性/後づけの「東亜協同体論」/欧米という“本当の敵"に向かい合えたことの爽快感/近代日本人の「適応異常」

 読んで貰えば分かるように、本書は「戦前史」についての論考ですが、同時に、近代日本人論であり、アナロジカルな形での戦後史論=現代日本人論でもあります。特に、戦前の「空気」が醸成されるまでのプロセスは、そのまま、戦後の「平和主義」「戦後民主主義」「構造改革」「グローバリズム新自由主義)」「緊縮」「コロナ自粛」などの「空気」が醸成されるまでの過程にも当て嵌まるものになっています。
 本書は様々な事項について言及していますが(その点だけで言えば、情報過多でさえあるかもしれませんが)、その基礎となる「歴史観」自体は非常にシンプルです。小林秀雄福田恆存河上徹太郎唐木順三山本七平岸田秀橋川文三林房雄など文学者・評論家の言葉を織り込みながらの「近代日本人論」として読んで頂けると、その真意も汲み取り易いものになるのではないかと思います。
 そう言えば、むかしに福田和也の『魂の昭和史』を読んだとき、これを自分流にアレンジできたらなと思ったことがありましたが、要するに、そういう仕事です(笑)。ただし、その結果として、『魂の昭和史』とは似ても似つかない—というかある意味正反対の—内容になってしまいましたが(笑)、後は読者の皆さんの評価を待つしかありません。
 いずれにしろ、手に取って確かめていただければ幸いです。よろしくお願いします! 


the-criterion.jp
bungeishunju.com
www.youtube.com
 以上のURLは、上から①8月20日、長野県塩尻で開催予定の「第3回表現者塾信州学習会開催によせて」のメルマガと、②與那覇さんとの「《紀尾井町床屋政談》ゆでガエル日本『戦後は続くよ選挙後も?』」(文春degitalウェビナー対談)のテキスト版と、③チャンネル桜の「日本貧困最前線」の討論です。
 塩尻での学習会の詳細については、8/20(土)第3回表現者塾信州支部学習会~グローバル化時代の戦争と日本の選択~ | 表現者クライテリオンを確認していただければと思いますが、今回の企画は、ゆっくりと柴山さん(京都大学)の国際政治についての講義が聞けて、しかも対談(不肖浜崎が相手を務めさせていただきます)まで聞けるという何とも贅沢な企画です(笑)。東京では、忙しくてゆっくり話すことができない話題でも、小さな学習会でなら話せるかもしれません。お時間ありましたら、是非足を運んでいただければ幸いです。よろしくお願いいたします!
 あと、文春degitalの「紀尾井町床屋政談」の方も案外支持があるようで、テキスト化する流れとなりました。こちらの方も是非。