批評の手帖

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『表現者クライテリオン』の最新号( 2022年7月号)が出ました!

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 『表現者クライテリオン』、2022年7月号が出ました!
 特集は「『ウクライナ』からの教訓――来たるべき“有事”にどう備えるか?」です。詳細については、目次概要を見ていただければと思いますが、今回は、相当ユニークな誌面になったと思います。
 ロシアーウクライナ戦争が始まって以来、新聞は全国5大紙全部が「国際秩序の壊乱者プーチンVS被害者ウクライナ(あるいは英雄ゼレンスキー)」というバカみたいな視点に囚われて、全くと言っていいほどに本質的な分析ができていません——つまり、多視点的現実(ロシア側の必然も組み込んだ形での現実)を説得力のある形で上手く文脈づけることができていません。総合誌では、『文藝春秋』が、エマニュエル・トッドミアシャイマーの論考を掲載して、辛うじて気を吐いた程度でしょうか。その点、こう言うと手前味噌になりますが、『クライテリオン』は徹底的に多視点的現実を多視点的に描こうと努力しています。
 今回、またしても、「戦争」を前にして適切な距離が取れない日本人のナイーブさ(=幼稚さ)が曝け出されたと思っていますが、そんななかにあって、是非手に取って頂きたい一冊になったと自負しております。
 私個人の仕事としては、特集座談会の一つである「戦争と人文学——歴史・民族・アイデンティティ」(金子宗徳×柴山桂太×川端祐一郎×浜崎)に出たのと、連載原稿「自己喪失の近代史——第四回 :『ぼんやりとした不安』が導いたもの」(最終回——これに、あと100枚くらい補足して8月に本にする予定です)を書いています。が、あと一つ、これは私が書いたわけではありませんが、前田一樹さんの「表現者塾信州支部学習会(第二回)レポート――『小林秀雄の批評と保守思想』(講師・浜崎洋介)」も載っています。一読いただければ幸いです。
 以下は、雑誌の目次概要です。よろしくお願いします!

【特集】「ウクライナ」からの教訓――来たるべき“有事”にどう備えるか?——について
 令和四年二月、ロシアがウクライナを侵攻した。米国を中心としたNATO諸国はこの「力による状況変更」を強行したロシア/プーチン大統領を徹底的に非難し、制裁を課す展開となった。そうした展開を受け、日本国内のマスコミ世論は「英雄ゼレンスキー大統領vs悪魔プーチン」とでも言うべき構図一色で塗りつぶされることとなった。
 ただしこうした「勧善懲悪」構図だけでは、今回の「ウクライナ」問題を解釈し尽くす事など到底できない。本来ならばこの問題は、中国による台湾・尖閣侵略という有事リスクに直面している我が国に、貴重な教訓を数多く提示し得るものである。しかしそれにも関わらずこうした単純な認識構図だけでは、貴重な教訓の大半をみすみす廃棄してしまうことになる。
 ついては本誌では、我が国にとって有益となり得る多様な知見・教訓を得ることを目途に、今回の「ウクライナ」問題を、多面的な視点・角度から様々に論ずる特集を企画することとした。読者各位におかれては是非、柔軟な姿勢で本特集にお目通しいただきたい。————表現者クライテリオン編集長 藤井 聡

目次
【特集】「ウクライナ」からの教訓――来たるべき“有事”にどう備えるか?
[特集対談]
ウクライナ」は極東に何をもたらすのか? 中露連合の「敵」と化しつつある日本/東郷和彦×藤井 聡

[特集座談会]
戦争と人文学 歴史・民族・アイデンティティ/金子宗徳×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎

[特集論考]
・三十年間、ロシアを弄んできたアメリカ/伊藤 貫
・裏切られた「核の傘」とロシアのあからさまな核恫喝 ウクライナ侵攻、真の狙いは何か/矢野義昭
・対露経済制裁に死角あり、対中国制裁を検討せよ/田村秀男
プーチン大統領ウクライナ侵攻から中国が得た教訓/小原凡司
無神論ロシア正教会 プーチン・ロシアの霊性の飢饉と日本/富岡幸一郎
ウクライナ政府にプロパガンダはないのか 情報戦のリアリズムを見よ/辻田真佐憲
・ロシアのウクライナ侵略、その善悪ナラティブの危険性/桒原響子
・戦争は人間を真面目にする 一億総徴兵逃れの国へ/小幡 敏

[対談トーク
映画『君たちはまだ長いトンネルの中』公開記念 「思想×エンタメ」が政治を動かす 消費税減税で日本を元気に!/なるせゆうせい×藤井 聡

[特別対談]
武術研究者・甲野善紀氏に聞く(前篇) 失われた「技」を求めて/甲野善紀 聞き手 柴山桂太

【連載】
・<新連載>第①回 井伏鱒二山椒魚』 サンショウウオと日本企業の類似性 横並びの閉塞感/岩尾俊兵(経営学で読む文学)
・紛争死史観と災害死史観(「危機感のない日本」の危機)
・第2回 農こそが日本を守る/鈴木宣弘×藤井 聡(「農」を語る)
・第四回 「ぼんやりとした不安」が導いたもの/浜崎洋介(「自己喪失」の近代史)
・「大本営発表報道の反省」に意味はあるのか/松林薫(逆張りのメディア論)
・第16回 「共同体」と「忠誠心」 ジョサイア・ロイスのアクチュアリティ――愛着と忠誠の政治哲学序説⑤/白川俊介(ナショナリズム再考)
・第二十五回 断崖絶壁の江戸文明 大転換へ/竹村公太郎(地形がつくる日本の歴史)
・第十回(最終回) 光と闇の二元論を超えて 村上春樹の『アンダーグラウンド』を読む/仁平千香子(移動の文学)
・メディア出演瓦版/平坂純一
・令和四年四月~五月 編集長クライテリア日記

【寄稿】
表現者塾信州支部学習会(第二回)レポート――「小林秀雄の批評と保守思想」講師 浜崎洋介/前田一樹

【書評】
『忘却された日韓関係 〈併合〉と〈分断〉の記念日報道』趙 相宇 著/田中孝太郎
『国家と実存 「ユダヤ人国家」の彼方へ』立川健二 著/前田龍之祐
中国哲学諸子百家から朱子学、現代の新儒家まで』中島隆博 著/篠崎奏平

【その他】
・「空気」の覆いを取り払え――ロシア・ウクライナ戦争を考える前に/ヒステリー化した「どっちもどっち論者」狩り(鳥兜)
・“良心的”ジャーナリストの幼稚な綺麗事/岸田総理の佇まいが暗示する、途方もなく暗い日本の未来(保守放談)
・読者からの手紙