批評の手帖

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『すばる』(6月号)に、前田英樹氏『批評の魂』(新潮社)の書評「『文学以前の裸の問い』を取り返す」を寄稿しました。

すばる2018年6月号

すばる2018年6月号

批評の魂

批評の魂

 先日、前田英樹氏『批評の魂』(新潮社)の書評「『文学以前の裸の問い』を取り返す」を寄稿した『すばる』6月号が自宅に届きました。
 『すばる』の誌面で「批評本」の書評をしたのは、これが初めてのことですが、何というか、つくづく自分にピッタリの本を書評させて頂いたと担当編集者には心から感謝しております。前田英樹氏の著作は他にもいろいろ読んできましたが、この度の『批評の魂』は、おそらく私の中のベストです。本当に素晴らしい本だと思いました。
 かつて、福田恆存小林秀雄の『本居宣長』について、「この本をこれだけ読み熟(こな)せるのは私だけではないかといふ、これは自惚れとは全く異なる、一種の喜びに絶えず浸つてゐた」と書いたことがありましたが、まさしく私も同じ感覚に浸っていました。前田さんのようにソシュールを原文で読み込んだことはありませんが、ハイデガーウィトゲンシュタインによって「言語の謎」に憑りつかれ、映画と絵画にのめり込み、ベルグソン小林秀雄を愛読し、しかも「小説」ではなく「批評」の言葉によってこそ人生を支えられ続け、ついには「近代/日本を繋ぐもの―日本近代批評史試論」という『批評の魂』の主題と響き合うような連載まではじめてしまうという……、なぜか前田さんと重なるところが少なくありません。もちろん、これは「自惚れ」ているわけではなく、その偶然の重なり合いに、ただただ驚いているというだけです。もちろん、まだまだ私は『批評の魂』ほどの傑作を書ける気はしませんが、同時代に前田さんがいてくれるというけで大変勇気づけられます。前田さん、そして『新潮』の清水さん、素晴らしい本をありがとうございました! そして、それを書評する機会を作ってくれた吉田さん、心から感謝申し上げます!