批評の手帖

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『すばる』7月号に、藤沢周氏の短編集『サラバンド・サラバンダ』の書評を寄稿しました。

すばる 2016年7月号[雑誌]

すばる 2016年7月号[雑誌]

サラバンド・サラバンダ

サラバンド・サラバンダ

 
 今朝、藤沢周氏の短編集『サラバンド・サラバンダ』についての書評「風景が迫り出してくるとき」を寄稿した『すばる』が自宅に届きました。以前、『表現者』座談会でもご一緒したことのある藤沢さんですが、正直に言うと、氏の小説を読むのは、これが初めてでした。が、古井由吉さんの小説の印象とも似て―もちろん部分的にですが―、藤沢氏の短編集は「小説」と言うよりは「随筆」というべきものに限りなく近づいている。フィクションということで「小説」と銘打つほかにないのでしょうが、近代小説の理念=革新性からは間違いなく遠ざかっています。しかし、それは、私自身が「小説の運命」(『新潮』5月号)を書いたから言うのではなくて、おそらく編集者自身もそう考えて、〝小説嫌い”の私に「藤沢さんの書評を」と依頼してくれたのだと思います。
 味わい深い大人の作品です。『すばる』7月号とともに、是非手に取って頂ければと思います。

 ちなみに、同号の『すばる』に大澤信亮氏の「温泉想」というユニークな批評―エッセイも載っています。去年、一緒に「箱根―温泉対談」(今年の2月号掲載)をした身として興味深く読ませていただきました。今更ながらですが、対談場所として大澤さんが「温泉」を選んだことの意味の一端が見えたような気がします。