批評の手帖

浜崎洋介のブログです。連絡は、yosuke.khaki@gmail.comまで。

『表現者クライテリオン』最新刊(2023年7月号)特集「進化するコスパ至上主義—タイパ管理された家畜たち」の紹介と、「甦る、福田恆存——神なき世界をどう生きるか」(中島岳志×浜崎洋介)の冒頭部分のnote掲載のお知らせ  

 『表現者クライテリオン』の最新号(2023年7月号)が発売になりました!
 最近話題になった本に、稲田豊史氏の『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形 』(光文社新書)という本がありますが、まさに、稲田氏が描いているように、最近の日本の状況——特に流行に弱い若者の心性——は、まさに「コスパ」と「タイパ」の観念に支配されているかのように見えます。それは、コロナ以降特に酷くなっている感覚もありますが、だとすれば、この「大衆化」現象=ニヒリズムに適切に抵抗しておく必要があるでしょう。ということで、今回の特集は、「進化するコスパ至上主義—タイパ管理された家畜たち」と題した現代社会批判の試みとなっています。
 とはいえ、もちろん、単に「コスパ」(コストパフォーマンス)「タイパ」(タイムパフォーマンス)を価値とする社会に対する批判に留まらず、なぜ「コスパ至上主義」が「毒」なのか? そして、にもかかわらず、なぜその「毒」を飲み続けているのか?といったところまで目を届かせた特集になっています。
 その裏には「近代日本」から「戦後日本」までを貫く近代主義、そして「デフレ」の問題が横たわっているわけですが……、詳しくは、また雑誌を手に取って頂ければ幸いです。
 くわえて、私個人が関わった仕事としては、①『ファスト風土化する日本』で有名な三浦展氏をお呼びした特集座談会「コスパ主義は『家畜化』への道である」(三浦展×藤井聡×柴山桂太×浜崎洋介)と、②「結城座・両川船遊氏インタビュー:コスパからと遠く離れて—『古典』と『現代』のあいだで」(聞き手・小幡敏・浜崎洋介)、③新連載・アジアの新世紀「保守から考えるアジアの近代:福田恆存の『韓国論』を手掛かりに—①日韓が直面した『適応異常』」(藤井聡×柴山桂太×川端祐一郎×浜崎洋介)と、④映画で語る保守思想・第5回「『仁義なき戦い』に見る、『父』を失った日本人(中編)」(藤井聡×柴山桂太×川端祐一郎×浜崎洋介)などです。
 以下に、紹介文を載せておきます。是非、よろしくお願いいたします!

【巻頭言】
コスパ」とは、費用対効果という趣旨の「コスト・パフォーマンス」を意味する言葉だ。今、このコスパは私たちの実に多くの日常行為において重視され、今や「おカネ」だけでなく「時間」にも配慮すべきだという「タイパ」(タイム・パフォーマンス)に配慮する風潮すら生まれてきた。結果、観光地や美術館ですら足早に走り去り、映画やドラマを「早送り」で高速に「処理」する傾向が現代社会に拡大してきている。その姿はあらゆる自由を奪い取られ、ただひたすらにシステムに管理される「家畜」という存在になぞらえることができる。
 そんなコスパ/タイパは我々に何をもたらすのか、何故に我々は過剰にそんなものを追い求めるようになったのか、そして我々はそこから抜け出す術はあるのか……。本誌表現者クライテリオンではこの視点から現代日本の絶望を深く掘り下げつつ、その中の希望のあり方を探る。(表現者クライテリオン編集長 藤井 聡)
【特集】進化する“コスパ”至上主義――タイパ管理された家畜たち
【特集座談会】
コスパ主義は「家畜化」への道である/三浦 展×藤井 聡×柴山桂太×浜崎洋介

【特集論考】
・文明としてのコスパ社会?――「見返り」の人類史・素描/與那覇
コスパ/タイパの追求がもたらす自己家畜化状態/上野吉一
時代精神としてのコスパ志向――未来が外部性を喪失した時代/土井隆義
・自分らしく生きる――音楽の「幸せなコスパ」を目指して/野口剛夫
結城座・両川船遊氏インタビュー「コスパ」から遠く離れて――「古典」と「現代」のあいだで/聞き手 浜崎洋介、小幡 敏

【新連載】
・「アジアの新世紀」企画始動記念座談会 保守から考えるアジアの近代――福田恆存の「韓国論」を手がかりに(第一回)日韓が直面した「適応異常」/藤井 聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎

【連載】
・「危機感のない日本」の危機 女性天皇の存在/大石久和
・「農」を語る 第2回 コスパを超えた「志」のちから/中貝宗治×藤井 聡
・欧米保守思想に関するエッセイ 第12回 トクヴィルの民主主義批判 Part②/伊藤 貫
・虚構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー第二十七回 マルクスの亡霊たち 新しい全体主義の到来③ 『人新世の「資本論」』批判(続)/富岡幸一郎
逆張りのメディア論31 広島サミットで感じた気持ち悪さの正体/松林 薫
・徹底検証! 霞が関の舞台裏 脱藩官僚による官僚批評 第3回 霞が関に蔓延る「無謬性の神話」、「無責任の体系」が日本を停滞させ、衰退させる/室伏謙一
経世済民 虫の目・鳥の目 第2回 価格に潜むワナ/田内 学
・映画で語る保守思想 第5回 『仁義なき戦い』に見る、「父」を失った日本人(中編)/藤井 聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
・やわらか日本文化論「国作り」パラダイムへの帰還を(言葉から考える⑭)/施 光恒
・欲望の戦後音楽ディスクガイド 第4回 Silk Sonic / An Evening With Silk Sonic/篠崎奏平
・東京ブレンバスター⑥ 満映とアニメーション/但馬オサム
・編集長クライテリア日記 令和五年四月~五月/藤井 聡

【巻末オピニオン】
・総括広島サミット 米大統領の「謝罪無き」原爆死没者慰霊を実現させた岸田総理の「罪」/藤井 聡

【書評】
・『古武術に学ぶ――子どものこころとからだの育てかた』甲野善紀 著/前田龍之祐
・『アメリカは内戦に向かうのか』バーバラ・F・ウォルター 著/橋本 悠
・『戦争とオカルティズム――現人神天皇と神憑り軍人』藤巻一保 著/早瀬善彦

【その他】
・第五回 表現者賞・奨励賞発表
表現者奨励賞受賞記念 ルイス島のチェス駒が教えてくれること――中世ヨーロッパの気候変動/橋本由美(寄稿)
コスパ・タイパ主義に見る現代の「孤独」(鳥兜)
・「トランス女性の権利」と「女性の権利」(鳥兜)
・現代文明は安い労働力を求める(保守放談)
・「岸田氏長男総理秘書官辞任」が示唆する深刻な問題(保守放談)
・入館管理は“修羅場の仕事”と心得よ(保守放談)
・塾生のページ
・読者からの手紙(投稿)

note.com
 あと、以前ご紹介した『文學界』の【特集 甦る福田恆存】対談—中島岳志浜崎洋介「神なき世界をどう生きるか」の冒頭部分が、noteで無料公開されたようです。正直申し上げて、これからが本番……というところで切れていますが(笑)、雰囲気だけでも感じ取っていただければ幸です。
 これで興味を持ったが方がいらしたら、図書館でも何でもいいので、実際に『文學界』を手に取って全編読んでいただけると有難いです。私の周りの反応に限って言うと、これ、結構評判がいいです(笑)。是非、よろしくお願いいたします!