批評の手帖

浜崎洋介のブログです。ご連絡は、yosuke.khaki@gmail.comまで。

クライテリオン最新刊(9月号)と、神社チャンネル

 表現者クライテリオンの最新刊(9月号)が発売されました。
 今回の特集は「インフレは悪くない、悪いのは「低賃金」だ!」というもの。久しぶりの経済特集ですが、単なる政策論をしているわけではありません。むしろ、その政策論の背景にある思想にも焦点を当てながら、様々な視点から現今の「インフレ」(正確にはコストプッシュ・インフレ)について論じています。
 実際、この度の特集には、編集委員の柴山さんの「債務国家とインフレの政治学」のみならず、何と経済のド素人であるはずの私までが「宵越しの銭を持たぬために―「デフレ脱却」の思想」という特集原稿を寄せています(…汗)。とはいえ、甘えた原稿を書いたつもりはありません。一読いただければ幸です。
 その他、西田昌司氏×城内実氏×藤井聡編集長による経済座談、大澤真幸氏による表現者塾の講義録+MMTを巡る柴山さんとの対談、いつもの連載陣、塾生レポート、寄稿欄…と、てんこ盛りですが、今回のもう一つの目玉は、案外「書評欄」かもしれません。
 何とあの長谷川三千子先生が小幡敏氏の新刊『忘れられた戦争の記憶 日本人と〝大東亜戦争〟』 (ビジネス社)の書評を書いてくださったのをはじめとして、平坂純一氏の『Nの廻廊 ある友をめぐるきれぎれの回想』( 保阪正康 著)の書評、田中孝太郎氏の『現代日本経済史 現場記者50年の証言』( 田村秀男 著)の書評、そして、今回初めて書評を担当することになった橋場麻由氏による小説『土に贖う』( 河﨑秋子 著)の書評、そして、前田龍之祐氏の『人間の条件』( ハンナ・アレント 著)の書評と、いつもにましてバラエティ豊かな書評欄になっています。是非、一読していただければと思います。
 私自身の仕事としては、その他「アジアの新世紀:保守から考えるアジアの近代――福田恆存の「韓国論」を手がかりに(第二回)アジアの過剰な「適応」と「反発」」や「映画で語る保守思想—第6回: 『仁義なき戦い』に見る、「父」を失った日本人(後編)」などがありますが、そちらの方も、お時間があれば是非。
 ということで、今回も盛りだくさんのクライテリオンですが、以下に、目次を載せておきます。何卒、よろしくお願いいたします!

目次
〔特集〕インフレは悪くない、悪いのは「低賃金」だ!
・特集によせて/藤井聡
【特集座談会】
・「健全なインフレ」に向けた戦略論――自由民主党西田昌司城内実両氏に聞く/西田昌司×城内 実×藤井 聡
【特集対談】
・あらためて「貨幣の謎」を考える
  第㊀部 講義編 現代貨幣理論(MMT)には何が見えていないのか? /大澤真幸
  第㊁部 対談編 貨幣と資本主義をめぐって/大澤真幸×柴山桂太
・「政府による貨幣発行」、その思想の原点を探る――前明石市長・泉房穂が語る「民のための政治」/泉 房穂×藤井 聡
【特集論考】
・債務国家とインフレの政治学/柴山桂太
・論拠なき移民国家化を憂う/施 光恒
・宵越しの銭を持たぬために――「デフレ脱却」の思想/浜崎洋介
・増えた税収は国民に還元せよ――実質賃金減少を招く元凶は緊縮財政/田村秀男
財務省が仕掛けた「一〇〇〇億円縛り」の罠――「骨太の方針」を巡る攻防を読み解く/須田慎一郎
・羊頭を掲げて狗肉を売る政権/森永康平
・岸田政権は金融緩和と積極財政のポリシーミックスを継続できるか/会田卓司
・日本再生の障害は自民党である/鈴木傾城
【連載】
・「アジアの新世紀」
  〔企画始動記念座談会〕保守から考えるアジアの近代――福田恆存の「韓国論」を手がかりに(第二回)アジアの過剰な「適応」と「反発」/藤井 聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
   拝啓 王毅中国共産党中央政治局委員殿――二つのアジア主義の峻別を/坪内隆彦
・「危機感のない日本」の危機 超が付く不思議の転落国・日本/大石久和
・「農」を語る 第3回 人と自然を取り持つ「農」/中貝宗治×藤井 聡
・虛構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー第二十八回 マルクスの亡霊たち 『人新世の「資本論」』批判(余滴) 富岡幸一郎
・徹底検証! 霞が関の舞台裏 脱藩官僚による官僚批評 第4回 新自由主義の呪縛から逃れられない霞が関/室伏謙一
ナショナリズム再考 第22回(最終回)リベラリズムナショナリティ:再論/白川俊介
・やわらか日本文化論 官僚志望者の減少は良いことか/施 光恒 176
経世済民 虫の目・鳥の目 第3回 今さら聞けないコストプッシュインフレの真実/田内 学
・映画で語る保守思想 第6回 『仁義なき戦い』に見る、「父」を失った日本人(後編)/藤井 聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
・欲望の戦後音楽ディスクガイド 第5回 MURO / Diggin’ Ice 2020/篠崎奏平
・東京ブレンバスター⑦ 日米開戦の裏にアニメあり/但馬オサム
・編集長クライテリア日記 令和五年六月~七月/藤井 聡
【巻末オピニオン】
・生成するAI、構想する人間/川端祐一郎
【書評】
・『忘れられた戦争の記憶 日本人と〝大東亜戦争〟』 小幡 敏 著/長谷川三千子
・『Nの廻廊 ある友をめぐるきれぎれの回想』 保阪正康 著/平坂純一
・『現代日本経済史 現場記者50年の証言』 田村秀男 著/田中孝太郎
・『土に贖う』 河﨑秋子 著/橋場麻由
・『人間の条件』 ハンナ・アレント 著/前田龍之祐
【その他】
・〔表現者奨励賞受賞記念〕私たちはガンディーにはなり得ない――沖縄の「平和主義」は「非暴力」主義に耐えうるか/藤原昌樹(寄稿)
・余白に耳を傾けて/首藤小町(寄稿)
・公教育にもっと投資を(鳥兜)
・権力腐敗を糺す「正義」を臆せず語るべし(鳥兜)
・河野大臣に不向きな仕事(保守放談)
神経症者としての財務省(保守放談)
・塾生のページ
・読者からの手紙(投稿)

ウクライナ情勢に端を発する資源・エネルギー・食料不足と円安によって、
我が国は一気に「デフレ」から「インフレ」への局面に移行した。
この局面展開を受け、岸田内閣は金融“緩和”政策も、“積極”財政政策も
縮小、中止の方向へと方針を転換する見込みが高まっている。
 しかし、今、問題なのはインフレではなく「賃金の低迷」に他ならない。
賃金上昇のためには、金融緩和も積極財政も必要であり、その中止・縮小は
確実に賃金下落圧力を拡大する。では政府は「賃上げ」のために一体如何なる
方針を打ち出すべきなのか? 現下のインフレを活用しつつ、真のデフレ脱却
と賃金の実質的上昇を導く対策を、ここに改めて問う。

                表現者クライテリオン編集長 藤井 聡


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 あと、こちらは、先日(とはいっても一か月くらい前に)出てきた神社チャンネルの動画です。同じ「師匠体験」を持っているからなのか、羽賀さんとは非常に波長が合いました。討論や時事政論では絶対に話さないであろう「極私的な話」をしています(笑)。こちらの方も、ご興味があれば是非!

追伸
 二本目以降の動画も、纏まりがいいので、このページに上げようと思います。二本目は、羽賀さんのリードに導かれて、小林秀雄岡本太郎、「いき」の構造、鬼滅の刃西郷隆盛などなど話題が色々と広がっています(汗)。普段なら、もう少し抑えたかな(?)という部分もあるはあるんですが、ノリというものは、それこそ「時と処と立場」で違うので、最終的にコントロールは効きませんね(笑)。こちらの方も、よろしければ是非。