批評の手帖

浜崎洋介のブログです。ご連絡は、yosuke.khaki@gmail.comまで。

中村文則『カード師』の書評を日経に寄稿しました。

www.nikkei.com

 師匠からの教えもあって「新聞書評では批判しない」ということにしているのですがーーあの短い囲い記事(紹介記事)では、批判を納得してもらうだけの論理や材料を十分に並べられないし、そうである以上、批判が無責任になってしまうので――、正直申し上げて、今度の『カード師』は想像以上にキツかった…。書評の方は「嘘」にならない程度には纏めていますが――つまり、拾ってあげるられるところを拾って書いていますが、それでも読む人が読めば、私の評価は明らかでしょう。
 初期の『銃』や『遮光』には私自身、こんな人間が同世代にいるのかと衝撃を受けましたが、しかし、それもすでに『掏摸』のあたりから怪しくなってきて、『教団X』に至って完全にダメになってしまい、そして、今回の『カード師』は、まさにダメ押しでした…。ただ、その理由を書いてしまうと、それ自体が「裏の批評」になってしまうので、ここでは書きません。
 でも、これだけは言っておいてもいいでしょう。ダメになればなるほどに評価が高まり、売れて行ってしまう「文芸業界」というのは、本当に腐っています。おそらく、今、流通しているのは「批評」ではなく「評判記」なんでしょう。今後、中村文則の書評を書くとしたら、「批判をしてもいい」という前提でしか書かないことにします(つまり、批判は困るという場合は、仕事を引き受けません)。