- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2017/01/06
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ちなみに、サブカルチャーについて多く書かれている杉田さんや、政治思想が専門の中島さんが選考委員に加わっていることでも分かると思いますが(ちなみに、私自身も文芸誌と論壇誌を往還する身ですが)、「すばるクリティーク賞」は細かいジャンル分けには拘りません。ただ、書かれた言葉の強度だけが判断材料となります。現在、社会学者と哲学者が選考委員をしている『群像』の新人賞と、東浩紀氏の『ゲンロン』の新人賞しかない状況において、「文芸批評」に対する情熱や実力を持ちながら、なかなか表に出てこられない潜在的な才能=文学者は多いのではないかと思っています。しかも、大学アカデミズムが全く機能していないのであれば、それは尚更のことです。既存の文芸ジャーナリズムや大学アカデミズムの粗い網目では掬い取れない若い才能を発掘するのがこの度の私たちの仕事だと思っています。
「来るべき新人へ」と題された共同討議の方も、単に賞の概要説明に終っているわけではなく、それ自体読み応えのある四者四様の「批評論」として読めるはずです。一読していただければ幸いです。
また、それ以外にも2017年の『すばる』の批評特集は、『世界文学の構造』(岩波書店)を刊行したばかりのジョ・ヨンイル氏のインタヴィュ―をはじめ、岡和田晃氏、藤田直哉氏、矢野利裕氏、荒木優太氏の批評競作も掲載されています。それにしても、いよいよ80年代生まれの批評家が紙面の中心を飾る時代となったんですね。選考にも気合が入るというものです。