批評の手帖

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『群像』11月号に、山城むつみ『小林秀雄とその戦争の時』の書評「到来する落差=実存」を寄稿しました。

群像 2014年 11月号 [雑誌]

群像 2014年 11月号 [雑誌]

 今日発売の『群像』(11月号)に、山城むつみ氏の『小林秀雄とその戦争の時』についての書評「到来する落差=実存」を寄稿しました。ちなみに山城氏は、私が学部生時代に最も影響を受けた批評家のなかの一人です。ただ、かつては『文学のプログラム』や『転形期と思考』に興奮した私も、あのNAMの一件以来、山城氏の著作には次第に距離を置くようになっていったのも事実です。

 しかし、この度改めて山城氏の新刊『小林秀雄とその戦争の時』を読みかつ書評してみて、やはり現在、現役の批評家の中で指折りの存在であることを確信しました。ただ、もちろん福田恆存の言葉を介して山城氏の言葉を読んだとき、留保する部分がないわけではない(特に、「政治と文学」の認識について)。しかし、短い書評でそれを論じ切ることはできません。というわけで、この度の書評では、できるだけ山城氏が描いた小林秀雄の「可能性の中心」を忠実になぞることに力を注ぎました。
 留保があろうがなかろうが、今、読まれるべき本であることに変わりはありません。少なくとも「文学」への認識と読解において、現在、山城氏のレベルで物を書ける人間は、私も含めてほとんどいないと断言してもいいでしょう。
 いずれにしろ、私に、山城むつみ氏を論じるチャンスを与えてくれた『群像』編集部には感謝です。読んで頂ければ幸いです。