批評の手帖

浜崎洋介のブログです。ご連絡は、yosuke.khaki@gmail.comまで。

産経新聞に、岸田首相暗殺事件についてコメントしました。

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 告知するほどの記事でもないかもしれませんが、昨日、電話インタビューで答えた内容が産経新聞に載りました。
 しかし、クライテリオンで「『岸田文雄』はニッポンジンの象徴である~“依存症”のなれの果て~」を特集した直後の首相暗殺未遂事件。起こるべくして起こったという印象がぬぐえません。
 人は普通、「直接行動」に至るまでには幾多のストッパーを持っています。家族、親族、恋人、友人、地域、職場etc…、しかし、それらのストッパーが全部壊れているとしたら…。彼/彼女は、一挙に「国家」に訴え出るか、「宗教」に救いを求めるしかなくなります。そして、そのどちらもが自分に応えてくれないと悟ったとしたら…。手は自己救済しか、つまり自殺かテロかしかなくなるはずです。その結果が、前回の安倍晋三暗殺事件であり、今回の岸田首相暗殺未遂事件でしょう。
 かつて、オルテガは書いていました。
「現代の国家は最も目に鮮やかな文明の産物である。・・・大衆は国家を見て讃嘆し、自分の生を保証するものとしてそこにあることを知っている。・・・一方、大衆は国家のなかにいわばのっぺらぼうの権力を見ている。そして彼自身も自らをのっぺらぼう――凡人――だと感じているので、国家を自分自身のものと信じ込んでいるのだ。ある国の社会生活になんらかの困難、軋轢もしくは問題が襲ったと想像してもらいたい。そのとき大衆は即座に国家がその問題を引き受けて直接責任をとり、その困難をその巨大で反論の余地のない手段を講じて解決してくれることを要求するだろう。これこそ今日、文明を脅かしている最大の危険なのだ。すなわち生の国有化、国家の干渉主義、国家によるすべての社会的自発性の吸収である。」
 と…。まさに、ネオリベで荒廃し切った生活世界を襲ったものこそがコロナ禍であり、そのなかに現れたものこそ「生の国有化」(全体主義)への欲望だったと言えますが、そのなかの一現象(国家へのルサンチマン)としてここ最近現れはじめているのが、国家要人を狙ったテロ事件だと考えられないでしょうか?
 いずれにしろ、生活世界の溶解が止まらない限り、この手のテロは起き続けるでしょう。……と、記事よりも長く書いてしまいましたが(笑)、一読していただければ幸です。

『表現者クライテリオン』2023年5月号、発売!……と、表現者塾「信州支部第4回学習会」(小幡敏氏講演+トークセッション)についてのお知らせ。

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 『表現者クライテリオン』(2023年5月号)が発売になりました!
 今回の特集は、題して「『岸田文雄』はニッポンジンの象徴である~“依存症”のなれの果て~」です。とはいえ、私たちが問い質したいのは、岸田文雄首相その人というよりは、文字通り「岸田文雄」という人間が象徴しているところの「依存症」、あるいは岸田政権を容認している「現代日本人」の方です。
 私自身、①まず『永田町動物園』(講談社)という快著を持つ反時代的な気骨の政治家・亀井静香氏に藤井聡編集長と共にインタビューをしていますが(とはいっても、ほとんど喋れていませんが…汗)、その他に、②「私たちの『からっぽ』を乗り越えるために—戦後日本人論」という評論、さらに、③映画で語る保守思想シリーズ・第4回「『仁義なき戦い』に見る、『父』を失った日本人(前編)」の座談会、そして、④巻末オピニオン「安倍『器』論・再考—『安倍晋三 回顧録』を読んで」という論考も載せています。久しぶりに結構、働きました(笑)。
 その他の原稿・連載のことについてはキリがないので、ここには記しませんが、一つだけ。今回から、「塾生のページ」(6頁程度)というの新連載が始まりました。主に、塾の講義レポートと塾生の投稿文で成り立っていますが、表現者塾の雰囲気を知りたい方にとってもいいのではないかと。
 是非、手に取って頂ければと思います。
 以下は、クライテリオン新刊の目次です。よろしくお願いします!

☆【特集】「岸田文雄」はニッポンジンの象徴である “依存症”のなれの果て
☆[特集座談会]
岸田文雄とは何者か?/亀井静香×藤井 聡×浜崎洋介
☆[特集対談]
佐高信が語る、岸田政権の腐敗と病理/佐高 信×藤井 聡
☆[特集論考]
・「日本の歴史」に聞く耳持たぬ岸田首相――その言葉は宏池会財務省の鋳造品/上島嘉郎
・私たちの「からっぽ」を乗り越えるために――戦後日本人試論/浜崎洋介
・緊縮財政こそ財政破綻への道ではないか/森永康平
・人として持つべき「死生観」を失った感染対策の愚/甲野善紀
・「猿蟹合戦」から考える依存症者によって作られる社会の末路/仁平千香子
表現の自由とは何か/呉 智英
☆[特別寄稿]
SDGs批判序説/長谷川三千子
☆[新連載]
経世済民 虫の目・鳥の目(第1回 紙幣から見えるもの)/田内 学
・塾生のページ
☆[連載]
・「危機感のない日本」の危機 天皇意識の喪失と日本の消滅/大石久和
・「農」を語る 第1回 人と自然を取り持つ「農」/中貝宗治×藤井 聡
・欧米保守思想に関するエッセイ 第11回 トクヴィルの民主主義批判 Part①/伊藤 貫
・徹底検証! 霞が関の舞台裏 脱藩官僚による官僚批評 第2回 「官高政低」がもたらす財政民主主義の否定/室伏謙一
・虚構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー 第二十六回 大江健三郎の文学と戦後民主主義富岡幸一郎
逆張りのメディア論30 AIは新聞を殺すのか/松林 薫
ナショナリズム再考 第21回 リベラリズムは世代間正義を論じることができるか(三)愛着と忠誠の政治哲学序説㊉/白川俊介
・戦争を知らないオトナたち 第四回 凍てつく日の丸――落日の大地シベリアに生きる②/小幡 敏
・映画で語る保守思想 第4回 『仁義なき戦い』に見る、「父」を失った日本人(前編)/藤井 聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
・葬られた国民作家 獅子文六(最終回)ユーモア小説の系譜――戦後派的デカダンスの時代に/平坂純一
・東京ブレンバスター⑤ 柔術と英国フェミニズム但馬オサム
・欲望の戦後音楽ディスクガイド 第3回 The Shaggs / Philosophy of the World/篠崎奏平
・編集長クライテリア日記 令和五年二月~三月/藤井 聡
☆[巻末オピニオン]
・安倍「器」論・再考――『安倍晋三 回顧録』を読んで/浜崎洋介
☆[書評]
・『異常の構造』木村 敏 著/前田龍之祐
・『中村菊男 政治の非合理性に挑んだ改革者』清滝仁志 著/田中孝太郎
・『新しい階級闘争 大都市エリートから民主主義を守る』マイケル・リンド 著/橋本 悠
☆[その他]
・多様性に関する多様な考察/髙江啓祐(寄稿)
・岸田総理のウクライナ電撃訪問をただ賞賛する愚(鳥兜)
・リモート国会は代議制の否定(鳥兜)
・「推奨」してもらいたい日本人――他者依存の成れの果て(保守放談)
アメリカが「普通の国」になる日(保守放談)
・「コオロギ食」騒ぎと「新しい生活様式」(保守放談)
・読者からの手紙(投稿)


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 で、ついでにといっては何ですが、4月29日の表現者塾信州支部第4回学習会の方も、日程が近づいてきました。
 第一部から第二部に及ぶ長時間(14:00~17:30)の勉強会(小幡敏氏による講演+小幡氏×浜崎によるトークセッション+質疑応答)ですが、ここまでじっくり話す機会はめったにありません。大規模なシンポジウムではない、小規模の学習会ならではの企画だと思います(しかも、塾ではないので1回だけの参加でも大歓迎です)。
 以下に、今回の学習会についての、信州支部長の前田一樹さんのメルマガと、私のメルマガを掲示しておきます。少しでもご興味があれば、是非、足を運んでいただければと思います。よろしくお願いいたします!
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與那覇さんとの対談「‶ネアカ宰相‶安倍晋三の虚実」が『文藝春秋』(2023年5月号)に載りました。

bunshun.jp
 昨日、與那覇潤さんとの対談「〝ネアカ宰相〟安倍晋三の虚実」が載った『文藝春秋』(2023年5月号)が自宅に届きました。
 文春ウェビナーでの対談を編集部が纏めたものですが、その読み易さといい、その凝縮度といい、さすが文藝春秋という感じがします。ここまで纏めてもらえると、與那覇さんと私と、文春編集部との共作と言うべきなのかもしれませんが、いずれにしろ質が上がっていることだけは確かです(笑)
 ちなみに言うと、その他の記事もなかなかです。元大蔵事務次官斎藤次郎氏による「『安倍晋三 回顧録』に反論する」だったり、小泉悠氏×高橋杉雄氏「ウクライナ戦争『超精密解説』」だったり、石戸諭氏の「ガーシーとは何者か」だったり、平野敬一郎氏×尾崎真理子氏「大江健三郎を偲ぶ」だったり、果ては三浦瑠璃氏の「独占告白120分—夫の逮捕で考えたこと」だったり…良くも悪くも、読みたくなるような記事が並んでいて、「これが、総合誌というものの雑っぽさか」と唸らされます。『中央公論』や『世界』や『VOICE』なんかを見ていても、手に取りたいと思ったことは一度もありませんが、『文藝春秋』だけは「仕方がない、読んでみるか…」という気にさせます。そこは、さすが「菊池寛の伝統」だと言うべきなのかもしれませんが、ここまでの「雑っぽさ」は、さすがにクライテリオンには真似できません(笑)。
 いずれにしろ、一読していただければ頂ければ幸いです。 

「なぜ岸田総理はウソをつくのか?—平成の『凶悪事件』に隠された答えとは?」(藤井聡・浜崎洋介)

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 月刊表現者の「切り抜き動画」です。「岸田文雄論」というほどのものではありませんが——というか、論を紡ぐほどの中身がないのが「岸田文雄」という人間の厳しいところなんですが——、要するに、「依存症」に陥った日本人全体の象徴として、「岸田文雄」という現象を論じています。
 一つだけ例を挙げれば、「個人の主体的判断を尊重する」というマスクのルールに関して、日本人は、自分の本音を隠してもなお政府や専門家の「推奨」に従い続けるという依存性を見せました。しかし、政府は政府で、世間や専門家の顔色を窺って政策を決めるという「依存症」を発揮し、さらに専門家は、その閉じた業界の権威にのみ従って判断を定めていくという「依存症」を見せたのでした……。この、誰もが「主体的判断」を見失って互いに寄り掛かる悪循環のサイクル、この「盲人もし盲人を導かば穴に落ちん」といった状況こそ、「現代日本人」の病だということです。
 では、肝腎の「主体性」はどのようにすれば回復し得るのか? それこそ精神医学的な話になりますが、それはそれで、また今度の「もぎせかchトークイベントー『戦後日本』を精神分析する」(茂木誠×浜崎洋介/4月15日4月15日(土)「もぎせかchトークイベント—『戦後日本』を精神分析する」のお知らせ! - 批評の手帖)で話そうかと思います(笑)。よろしければ、是非。

ウクライナ戦争論——「切り抜き動画」2本!

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 YouTubeを開いたら、この二本の動画が出て来たんですが、これはおそらく別企画で話したものの「切り抜き動画」なんでしょう(文春側からの報せがないので、こっちは何も知りませんw) ということで、一応ここに紹介しています。
 しかし、そもそも国際政治において「正義を語る言葉」など単に「空想的な戯言」か、一方に都合がいいだけの「キレイゴト」くらいにしか思っていない私にとって、「実際の正義」とは、各国の歴史と文化と欲望とを踏まえた上で、力のバランスをとることでしかありません。
 で、今回のロシア—ウクライナ戦争についてですが、その「均衡」を崩したのは誰かと言えば、ミアシャイマーやトッド、あるいは伊藤貫氏に言わせるまでもなく、どう見てもアメリカとNATOの側でしょう。ロシアの武力侵攻が良いか悪いかを論じる前に、その流れについての言葉がないのが気に喰わないだけです(というか、あの歴史的な文脈を強いられながら、もし自分がロシア人=プーチンなら、武力侵攻するかも…というリアリティの方が大きいということです)。
 ちなみに言えば、私が「戦前の日本」について批判的なところがあるとすれば、その「均衡」を崩してしまったのが日本人の側であるように見えるからです(特に、第一次世界大戦以後)。事変を満州事変で終わらせることはできなかったのか、あるいは、日中戦争の拡大を抑えることはできなかったのか…。もちろん、今更言っても仕方がないことばかりですが、その結果として大東亜戦争の敗戦と現在の「戦後」があることを考えると、その「均衡」への緊張を失った日本人に対する悔しさは残ります。
 でも、こういうことを言うと、左からは「お前は戦争を肯定するのか!」と言われ、右からは「お前は自虐史観の持ち主か!」と言われるのがオチです(笑)。要するに、日本人はどこかに「絶対善」(平和と民主主義)が存在していると思い込んでいる中学生か、どこかに「絶対悪」(GHQユダヤ人、国際金融資本)が存在していると考えている中学生かということなのかもしれませんが、しかし、そうである限り「大人」への道は遠いと言わなければなりません。
 
 ……と、思わず長々と書いてしまいましたが(笑)、ご興味があれば是非。 

4月15日(土)「もぎせかchトークイベント—『戦後日本』を精神分析する」のお知らせ!


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 来る4月15日(土)、池袋において「もぎせかchトークイベントー『戦後日本』を精神分析する」(茂木誠×浜崎洋介)というトークイベントを開催します!
 もぎせかch主催のトークイベントとしては初の試み(第1回目ゲスト)ということで、大変光栄に思っています。大人は普通に2000円ですが、学生は破格の500円!、さすがは茂木先生、分かってらっしゃいます(笑)。
 論題も「『戦後日本』を精神分析する」とのことで、本領発揮といければいいのですが……会場との意思疎通も含めて、気兼ねなく思う存分に話したいと思っています。この機会に、是非、足を運んでいただければと思います。
 詳しくは、上記した「もぎせか資料館」のサイトを参照していただければと思いますが、以下にも、簡単に概要を載せておきます。よろしくお願いいたします!

もぎせかch初のトークイベント。1回目は当チャンネルでも人気の文芸批評家・浜崎洋介さんをお迎えします。
日時・場所:4月15日 15:30 – 18:30/会場は、お申し込み後に送信する確認メールに記載してあります。
参加→イベント詳細・登録 | mysite
※イベントについて
敗戦後の日本人のメンタリティーの異常性は、もはや精神病理学の対象。「コミンテルンが悪い」「GHQが悪い」「日教組が悪い」「DSが悪い」と犯人探しは盛んだが、「日本人はなぜそれを今も受け入れ続けているのか?」という視点で語られることは少ない。この問題に切り込む。

frontJapan桜3月号!ー改めて問う「戦後レジーム」とは何か

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 frontJapan桜3月号に、室伏謙一さんと出てきました。別にお題を二人ですり合わせているわけではないんですが、その内容が完全に組み合ったものになっています(笑)。私の歴史的な話(戦後レージ―ム論)の上に、室伏さんが解説する「現在の日本」(国家の役割を放棄した、あるいは、それを自覚できない緊縮政府)があるのだと考えれば、だいたい納得できるのではないでしょうか。
 ご興味がありましたら、是非、よろしくお願いいたします。