批評の手帖

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『文藝春秋』(2015・新年号)記念特集「完全保存版・戦後70年「70人の証言」」に「福田恆存が抱いた危惧」を寄稿しました。

文藝春秋 2015年 01月号 [雑誌]

文藝春秋 2015年 01月号 [雑誌]

 私が「福田恆存が抱いた危惧」を寄稿した『文藝春秋』(2015年1月号)が昨日発売になりました。新年号記念特集「完全保存版・戦後70年「70人の証言」」という特集用に、最初は「サンフランシスコ条約福田恆存」といったお題で書き始めていたのですが、書き終えてみれば、確かに「福田恆存が抱いた危惧」とした方が的を射ています。

 サンフランシスコ講和条約締結を前にして設立された「平和問題談話会」(清水幾太郎丸山真男都留重人など)に対する福田の態度、また「戦後日本」の「空気」に対する福田の姿勢などを確認しながら、実は福田恆存の批評の核心には常に、明治の文明開化=近代化以来の「文化」の喪失、「生きかた」の喪失という問題意識があったといったことを論じています。「生きかた」の喪失こそが、その喪失感の穴を政治理念で埋め合わせる……たとえば戦前の大東亜共栄圏、あるいは戦後の平和と民主主義に浮かれ騒ぐ「偽善」を、そして、それに自己陶酔してしまう近代日本知識人の「感傷」を招いたのだといったようなことを書いています。一読して頂ければ幸いです。