批評の手帖

浜崎洋介のブログです。ご連絡は、yosuke.khaki@gmail.comまで。

中村文則『迷宮』の書評

迷宮

迷宮

共同通信社に、中村文則の最新11作目となる『迷宮』の書評を送りました。
 これを機に、再読を含めて初期から現在に至るまでの中村文則の主な作品を一気に読みましたが、改めて、この作家の才能に圧倒されました。
 正直言うと、『銃』(河出文庫新潮新人賞)、『遮光』(新潮文庫野間文芸新人賞)、『土の中の子供』(新潮文庫芥川賞)などの初期三部作の方が強度はあると思うのですが、しかし『掏摸』(大江健三郎賞)以降の、サスペンス仕立ての「物語」性を活かすという方向性も必ずしも否定できないとも思います。職業作家として長距離走者の覚悟を持った人間は、必ず「物語」との対話を始めざるをえないからです。

 いずれにしろ、現代から降りてしまっていた私が、現代文学へのリハビリを開始するには、これ以上ないという作家でした。同世代ですしね(中村文則は1977年生まれ)。共同通信のSさんに感謝です。