批評の手帖

浜崎洋介のブログです。ご連絡は、yosuke.khaki@gmail.comまで。

梅崎修氏(法政大学)と「近代人の孤独を先取りしていた三島を通じて現代を見つめ直す」という対談をさせていただきました!

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 リクルートワークス研究所が出している『Works』という雑誌の「人事アカデミア」という企画のなかで、梅崎修氏(法政大学/労働経済学)と「近代人の孤独を先取りしていた三島を通じて現代を見つめ直す」という対談をさせていただきました(三島由紀夫|人事のアカデミア|リクルートワークス研究所)。
 なぜリクルートの機関紙が…? なぜ労働経済学がご専門の梅崎さんが…? そして、なぜ一昨年の仕事が今頃になって…?など、色々と不思議だったんですが、そもそも梅崎さんが三島由紀夫について関心をもっていて、拙著『三島由紀夫―なぜ死んでみせなければならなかったのか』(NHKブックス)が目に留まり、興味を持っていただいたとのことです。
 ということで、対談の方も非常に盛り上がって(2時間半はやったような気がします)、最後は、三島由紀夫そっちのけで、ズタボロの日本社会と日本人論にまで発展。しかし、許された紙幅は4ページなので、誌面の方は、ちゃんと三島由紀夫を中心に纏められています(笑)。
 紙面内容は、冒頭に上げたページでも読めるようですが、なんと以下のページから、タダで全部読めるようになっているようです(↓)。これまで縁の薄かったメディアですが、ご興味があれば、是非。
 https://www.works-i.com/works/item/w_170.pdf

【第2回】信州支部学習会「小林秀雄の批評と保守思想」(於・長野)と「オミクロンがつき突きるもの」(『文藝春秋』3月号)。

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 告知が、ギリギリになってしまいましたが、来る2月19日(土曜日)、表現者クライテリオン信州支部主催で、「第二回学習会・小林秀雄と保守思想」という会を開きます。
 詳しくは、メルマガ【浜崎洋介】第2回・長野学習会のお知らせ—「意匠」を乗り越えるために | 表現者クライテリオン、あるいは、【第2回】信州支部学習会「小林秀雄の批評と保守思想」開催 | 表現者クライテリオンを読んで頂ければと思います。去年の春にシンポジウムを開いて以来、信州支部とは深い縁が出来ましたが、この学習会も、できるかぎり持続した試みにしていければと思っています。ご興味のある方は、是非!


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 あと、『文藝春秋』の最新号(2022年3月号)で、最近よくご一緒する與那覇潤さんと「オミクロンがつき突けるもの」という対談をしています。
 今回の対談は、要するに、去年の6月に池袋ジュンク堂書店で行った公開討論コロナ禍に必要なのは「居酒屋的空間」だ 右も左も異なる意見を潰し合う日本 | 文春オンラインの続編です。オンラインでさえ炎上すると思っていたものが、遂に本誌登場ということで、新谷新編集長になってからの『文藝春秋』の勢いを感じます(笑)。
 與那覇さんとは毎度のことで、だんだん気心が知れるようになってきましたが、その分、対談の方も幾分加速しているかもしれません(笑)。こちらの方も、何卒よろしくお願いいたします!

 あと、與那覇さんが、豊田市美術館で行った講演の冒頭で、拙著『小林秀雄の「人生」論』を紹介してくださっています。ただ、私の本のことはともかく、與那覇さんの講演内容が興味深い。特に、コリン・M.ターンブルの『食うものをくれ』の話は衝撃的でした。こちらの方も、ご興味があれば是非。
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毎日ナビゲートと、書評二つ!

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 今月の毎日ナビゲートは「合理性なきコロナ対策」です。新聞記事なので、これでも抑制して書いている方ですが、もうホントいい加減にしてほしいです。
 インフルエンザ以下のオミクロン如き(隠れ陽性者を除いた数字でさえ致死率0.06%)で騒いでいる連中は(パフォーマンス好きの知事も含めて)、もう一生外出しないことです。外はウィルスだらけで、とっても、とっても危ないですから(笑)。

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関雄輔氏書評(『毎日新聞』2022/1/22)
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菊田均氏書評(『世界日報』2022/1/9)

 あと、『小林秀雄の「人生」論』(NHK新書)の書評、二ついただきました。
 一つは、毎日新聞の記者さん(関雄輔氏)の書評(今月の本棚)。もう一つは、文藝評論家の菊田均氏の書評(『世界日報』)です。どちらも大変正確、かつありがたい書評です。
 「菊田均」という名前を見ると、東工大の研究室に入ったとき、書棚に菊田さんの『江藤淳論』が目立っていたことを思い出します。当時は、いつかこういう本を書ける日がやってくるのかな…などと思っていましたが、色々感慨深いです(笑)。
 関さん、菊田さん、ありがとうございます!

隔月刊「日本富民安全研究所」2022年1月号—動画 3本!

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 隔月で出演することになっている「日本富民安全研究所」2022年1月号の動画です。今回は、1本目が『小林秀雄の「人生論」』(NHK新書)の解説動画(しつこくて恐縮です…汗)、2本目が、『クライテリオン』最新号(岸田内閣、成功の条件)の解説動画——特集に因んで、「新自由主義とは何か」という話を、改めて「資本主義とは何か」という文脈でしています。そして、3本目は、例の如く、お酒の入った「サードプレイス動画」(塾生との平場トーク)となっています(1月号の動画は、アップされ次第、随時このページに纏めておきます)。
 他メディアにはない冨民動画の良いところは、誰にも気を遣わずに自由に話せるところです(笑)。普通の討論会や座談会は、こうはいきません。やはり、その場の文脈や相手に気を使いますから、どこかで自分を抑制する必要が出てきます。が、冨民動画にその枷はない。ただし、その分、過激になり過ぎないように、あるいは一人語り(一人よがり)に陥らないように、松本さんの力を借りながらも、自分で自分を抑制していかなければなりませんが…(笑)。
 松本さんの協力者も増え、撮影場所も新たに新設しと、日本冨民安全研究所も色々と動き始めているようです。ご興味がある方は、是非。

2022年「すばるティーク賞」(…最後のクリティーク賞)が発表されました!

 明けまして、おめでとうございます!
 「おめでたい」話題の少ない、今日この頃ですが、そんなときだからこそ、今年は「自分の足元」を見つめる時間を積極的に作っていかねばと思っています。とはいえ、やるべきことは昨年と変わらず、緊張感を持ちつつ、原稿執筆・雑誌編集・大学教育・表現者塾などの仕事をしていくだけですが(笑)。本年も、何卒よろしくお願いいたします。


 今年最初のブログは、恒例のこととはいえ、2022年の、そして、今年で終わってしまう「すばるクリティーク賞」の告知です。
 2022年の受賞作は、鴇田義晴氏による「90年代サブカルチャーと倫理――村崎百郎論」です。今年は、応募作品全体のレベルが低調で、なかなか受賞作が決まらなかったんですが、「最後」ということもあり、鴇田義晴氏の村崎論を推させていただきました。
 評価の理由については、選考座談会(大澤信亮氏×杉田俊介氏×上田岳弘氏×浜崎)のなかで言っているので、ここで繰り返すことはしませんが、「90年代」という、その時代を生きてきた本人でさえ分かり難い「過渡期」の意味を、非常に喚起的な形で描いてくれています。やっぱり、色んな意味で——対米関係とナショナリズムの問題、憲法問題、自衛隊問題(PKO問題)、グローバリズムへの姿勢、改革主義の猖獗、緊縮、デフレ等々の意味で——、あそこが「転換点」だったんでしょう。鴇田氏の評論を読んでいると——飽くまでサブカルチャーの視点を通じてですが——、あそこが「80年代的なるもの」(SDGsにまで繋がるポストモダン的虚構)が勝つのか、「70年代的なるもの」(辛うじて残っていた土着的身体的思考)が勝つのかのギリギリの分かれ目だったんだと感じます。
 で、「80年代的なるもの」(ポストモダンの浮かれ騒ぎ)が勝った結果として、このザマです。もちろん、それは世界的現象なのかもしれませんが、戦後日本の場合、それは〈9条—安保〉体制とのアマルガムとして、より腑抜けたもの、より不真面目なもの、より偽善的なるものへと堕していったように見えます。
 いや「文芸業界」だけなら、所詮半分は「お遊び」の世界なので、それでも良かったのかもしれません。が、誰も本気でしていない「マスク」を見ても分かるように、今や、日本人全体が「お遊び(ごっこ)」以下の、硬直した「建前」(ことなかれ主義、臆病、コンプラ、ポリコレetc…)のなかに一切の自立的な「思考」と「本気」を溶解させてしまったかのように見えます…(日本人の「いつでも、どこでも」のマスク姿を見ると、私などは、戦前の国民服やモンペ服を思い出してしまいます)。
 と、これ以上書くと、せっかくの受賞作を前に、またいつもの愚痴になりそうなので、このへんにしておきましょう(笑)。


 かつてキェルケゴールは、「必然的な物事だけを呼吸するのは不可能で、それでは人間の自己は窒息してしまうばかりだからである。…彼(可能性を失っている決定論者)は祈ることができないのだ。祈ることというのは呼吸することでもあり、自己にとっての可能性とは、呼吸にとっての酸素に相当する。…祈るためには、神と自己が——そして、可能性が——なくてはならない」(『死に至る病』鈴木祐丞訳)と書いていました。そして、人生が続く限り、まさに私たちは「呼吸」をせざるを得ないのです。安易な「可能性」などどこにも見出せない時代だからこそ、私たちは、それでも「呼吸」をするために「祈り」を見出すのでしょう。
 「群像新人評論賞」に続けて「すばるクリティーク賞」も終わるということで、今年で「批評」の新人賞は全てなくなってしまいますが(ただし、「表現者賞」「表現者奨励賞」は、まだまだ現役で続いています!…笑)、しかし、そんな時代だからこそ、これからは、なおさら言葉で「呼吸」することが問われてくるのだと思います。私自身、新人賞に応募したことも、新人賞を貰ったこともありませんが、だからこそ鍛えられた部分もあると思っています。新たな批評的才能が現れることを祈っています。
 それを準備するための精神と姿勢、それを守るための言葉に向けて、今年も精一杯精進していく所存です。何卒、よろしくお願いいたします。

メルマガ二つをご紹介

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 最初のメルマガは、以前告知させていただいた『小林秀雄の「人生」論』出版記念トークショーについての表現者クライテリオン・メールマガジンです。「なぜ、今、小林秀雄なのか」の簡単な導入として私自身が書いています。一読していただければ幸いです。
 また、二つ目のメルマガは、隔月で動画出演している冨民安全研究所所長・松本勝さんの無料公開メルマガです。こちらの方でも、トークショーについての告知をしていただいております(ありがとうございます、松本さん!)。
 今回の企画自体、表現者の塾生企画ということもあり、つくづく皆さんに支えられての「言論」だと感じております。このか細い「精神の糸」(リレー)を繋ぐためにも、できるだけのことをしていきたいと考えております。引き続き、よろしくお願いいたします!

2022年1月8日(土曜日)、『小林秀雄の「人生」論』出版記念トークショーを行います!

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 突然の告知で恐縮ですが、来る2022年1月8日(土曜日)、15:30~(開場15:00~)『小林秀雄の「人生」論』出版記念トークショー「危機の時代に小林秀雄を読む―日本近代150年目の批評」(※ライブ配信あり)を行います!
 文芸評論家の富岡幸一郎先生と、『クライテリオン』の編集委員仲間である柴山桂太氏をお呼びして、「今、小林秀雄を読むこと」をめぐって徹底討議いたします。討議内容は『クライテリオン』にも掲載しようと思っていますが、是非この機会に、小林秀雄を読んでいる人も読んでいない人も、また『クライテリオン』を読んでいる人も読んでいない人も、表現者塾の塾生も非塾生も、「公開座談会」に御参加いただければと思っています。
 富岡先生は、佐藤優氏と『危機の日本史 近代日本150年を読み解く』(危機の日本史 近代日本150年を読み解く | 佐藤 優, 富岡 幸一郎 |本 | 通販 | Amazon)という本を出していらっしゃいますが、その意味でも「日本近代150年目の批評」を論じるにはピッタリの文芸批評の大先輩(先生)であります。
 また、柴山さんは、以前『アフター・モダニティー近代日本の思想と批評』を出した時も、「グローバル時代に小林秀雄を読む」というトークイベントにお呼びしたことがありますが、その時も――編集委員仲間になる以前だったにもかかわらず――、非常に充実した議論が出来た記憶があります(↓)。

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 また、その後も、柴山さんとは編集委員として時間を共有するなかで(飲みの席で)、度々小林秀雄について論じてきましたが、この度改めて小林論を交わすことが出来ることを、7年前(2014年)からの変化も含めて、私自身大変楽しみにしております(7年前より成長していればいいんですが……笑)。
 ここまで日本が液状化している今だからこそ、こういう形で「私たちの足元」を見つめ直しておく必要があるんだと思っています。日本及び日本人論から伝統論、文学と社会科学の差異と同一性、あるいは「グローバル化以後」の現在において小林秀雄を読むことの意味も含めて、当日は、充実した時間を過ごすことが出来ればと思っています。
 先着60名となっていますが、参加希望の方は、以下のフォームから申し込んでい頂ければと思います(当日は、そのまま同じ場所=AP西新宿で「表現者塾」を開催する予定なので、塾の雰囲気を見たい方にとってもいいかもしれません…)
 それでは、1月8日、会場でお会いできればと思います。何卒、よろしくお願いいたします!
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