批評の手帖

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『表現者クライテリオン』2022年9月号発売と、塩尻学習会/「表現者塾」後期塾生の募集のお知らせ

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 『表現者クライテリオン』9月号が発売になりました。
 今回の特集は「岸田文雄は、安倍晋三の思いを引き継げるのか?—『無策無敵』は政治にあらず」となっています。
 最初は「岸田文雄論」で特集を組んでいたんですが、そこに突然の安倍元首相狙撃事件のニュース。それで急遽以上のような特集に変更した次第です。
 安倍晋三個人に対しては、人それぞれに思いはあると思いますが、今回の特集はその「思い」を検討しながら、なお、それを現在の岸田政権に対する眼差しに繋げるという構成になっています(実際、「反安部」の急先鋒だった白井聡氏の文章と、『表現者』時代に同じ勉強会をされていた「親安部」の西村幸祐氏の文章を載せているのはクライテリオンくらいでしょう・笑)。
 とはいえ、以上の動画の中で藤井編集長が断っているように、また、座談会の中で柴山桂太編集委員が断っているように、「安倍晋三政権」に対するクライテリオンの評価は、『安倍晋三—この「空虚な器」』以来変わっていません。TPP参加、2回に及ぶ消費増税、加憲論の提示などなど…この国を破壊に導いてきた事実に変わりはありません。が、これも柴山さんの言葉を借りれば、「一国の総理といえども、やりたいことができない現実があったかもしれない」わけで、その辺りの事情=カラクリについても考えるという特集にもなっています。
 私個人の仕事としては、「岸田文雄近衛文麿—その『弱き性格』の行方」と題した岸田文雄論を寄稿しています。題名からも明らかだと思いますが、要するに、「敵を作らない」ことを手法にしてきた政治家(回避性パーソナリティー)の危険性について、近衛文麿を引き合いに書いています。一読して頂ければ幸いです。
 以下は、雑誌の詳細です。ご参考までに。

目次
【特集】岸田文雄は、安倍晋三の思いを引き継げるのか?――「無策無敵」は政治にあらず
[特集対談]
安倍晋三の第一の遺志は経済政策。それを無視するのは誤魔化しである/森田実×藤井聡
・「岸田文雄」と「安倍晋三」の思想を問う その聞く耳は何の為のものなのか?/中島岳志×藤井聡
[特集座談会]
安倍晋三の恩義と信頼、そして保守思想/西田昌司×藤井聡×柴山桂太
[特集論考]
・岸田首相は戦後最大の危機に対応できるのか 「無策無敵」の限界、参院選後が正念場/泉 宏
・「二〇一二体制」を岸田文雄はどう引き継ぐのか?/白井 聡
岸田文雄近衛文麿 その「弱き性格」の行方について/浜崎洋介
・国産復興こそが食料安全保障 なぜ食料を蔑ろにするのか/鈴木宣弘
・岸田総理の覚悟が問われる「深刻な電力危機」の構造/石川和男
・「資源問題」に無為無策な岸田政権/柴田明夫
・コロナ禍における為政者の無為無策は最大級の罪である/森田洋之
・誰かの「黄金」は誰かの「暗黒」である/森永康平
・『表現者』と安倍晋三① 安倍晋三の政治力とは何だったのか/富岡幸一郎
・『表現者』と安倍晋三② 安倍晋三、世界をリードした不屈の精神 一人の天才政治家の悲劇/西村幸祐
[特集インタビュー]
・政治評論家・鈴木棟一が語る「岸田文雄」と「岸田政権」/鈴木棟一 聞き手 藤井聡

【特別インタビュー】
亀山郁夫氏に聞く ロシアの内在論理を問う 受動性と全一制、そして断絶の歴史/聞き手 柴山桂太・川端祐一郎
【特別対談】
・武術研究者・甲野善紀氏に聞く(後編) 死生観を失った時代の果てに/聞き手 柴山桂太
【連載】
・<新連載>葬られた国民作家 獅子文六  第1回 正統なる正当性を求めて/平坂純一
・<新連載>東京ブレンバスター① 祖国復帰とウルトラの星/但馬オサム
・「農」を語る 第3回 農こそが日本を守る/鈴木宣弘×藤井聡
・欧米保守思想に関するエッセイ 第9回 プラトンの教訓 民主主義の欠陥と哲人統治の可能性/伊藤貫
経営学で読む文学 第②回 山本周五郎『彦左衛門外記』「天下のご意見番」と「社史」はいかに創られる? レトリックとしての歴史と経営/岩尾俊兵
逆張りのメディア論26 総戦力に備え、「一次情報の自給率」を高めよ/松林薫
ナショナリズム再考 第17回 「正義」・「忠誠」・「共同体」 ロイスからローティへ――愛着と忠誠の政治哲学序説/白川俊介
・地形がつくる日本の歴史 第二十六回(最終回) 奇跡・日本の近代化 江戸のインフラ遺産/竹村公太郎
・やわらか日本文化論 「運」よりも「恩」 言葉から考える⑬/施光 恒
・編集長クライテリア日記 令和四年六月~七月/藤井聡
表現者クライテリオン創刊四周年シンポジウム in新宿の報告 首都東京で考える『「愛国」としての「反日」』について/松島豊樹

【寄稿】
・教育を語る言葉の息苦しさはどこからくるのか コロナ禍で改革ありきの発想から抜け出すためのヒントを考える/清水一雄
【書評】
・『ウィトゲンシュタインと言語の限界』ピエール・アド 著/篠崎奏平
・『経済の起源』大澤真幸著/前田龍之祐 ・『感情の向こうがわ 武術家と精神科医のダイアローグ』光岡英稔・名越康文 著/田中孝太郎
・『MMT講義ノート 貨幣の起源、主権国家の原点とは何か』島倉原 著/橋本悠 ・『自由の国と感染症 法制度が映すアメリカのイデオロギー』ヴェルナー・トレスケン 著/黄宇成
【その他】
・「統一教会に恨みを持った人物による元総理暗殺」は何を意味するのか/政治改革の無残な失敗(鳥兜)
・日本版ジョーカーの言葉――安倍元首相狙撃犯の怨念/「非倫理性」は避けがたい(保守放談)
・読者からの手紙(投稿)

岸田文雄は、安倍晋三の思いを引き継げるのか?――「無策無敵」は政治にあらず

 安倍晋三氏の訃報が流れた直後、岸田文雄総理大臣は涙に目を腫らしながら「安倍氏の思いを受け止め、引き継ぎながら日本について引き続きしっかりと責任を果たしたい」と言明した。そして岸田総理は、その直後の参議院選挙で大勝を収めたのだが――それを受けて再強化された岸田政権において自ら口にした「安倍氏の思いを受け止め、引き継ぐ」ことが果たしてできるのだろうか?
 ただし少なくとも、敵を作ることを避けるために何もしない「無策無敵」と批判されるこれまでの9カ月の岸田総理の政治態度を改めない限り、それが可能となることはあり得ない。そもそも第二次の安倍内閣の一丁目一番地の施策はデフレ脱却だったのであり、晩年はそのための積極財政を徹底的に主張していたことは公知の事実だからだ。
 ついては本誌では、明るい未来へと繋がり得る賢明なる総理判断への支援を企図し、生前の安倍氏を偲び、その思いの内実を改めて振り返ると同時に、岸田氏が自ら言明した安倍氏の思いの継承が可能であるか否かを、様々な角度から考えることとした。

表現者クライテリオン編集長 藤井 聡

 
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 あと、しつこいようで恐縮ですがw、長野県塩尻市での勉強会(8月20日)が近づいてきました。以上は、その紹介動画です。
 近隣の方で、もしご興味のある方がいれば是非足を運んでいただければと思います。
 
the-criterion.jp
 また、最後になりましたが(後で、もう一度ブログで触れるかもしれませんが)、2022年度後の「表現者塾」の後期塾生の募集も開始しました。以上は、私の書いたメルマガです。ご興味がある方は一読いただければ幸いです。何とぞ、よろしくお願いいたします!