批評の手帖

浜崎洋介のブログです。ご連絡は、yosuke.khaki@gmail.comまで。

雑誌『文学+』(「凡庸の会」刊行)が創刊されました。


 先日、「文芸批評と文学研究、その曖昧な関係をめぐって」という討論(坂口周氏×梶尾文武氏×浜崎洋介)を収めた『文学+』(「凡庸の会」刊行、2018年10月)が自宅に届きました。
 装丁もシンプルで、「潔さと知性」が匂いたっています。この〈文学と批評〉を純化したような雑誌のなかで、蕪雑な私だけが、浮いている気がしないではないのですが(笑)、まずは無事の刊行おめでとうございます!

 しかし、改めて座談を眺めていて、90年代も、いやゼロ年代さえ過去になったなぁというのが正直な感想です。出発点を共有していた同世代の人間たちが(「凡庸の会」の同人の皆さん―大石將朝さん、梶尾文武さん、清末浩平さん、中沢忠之さん、平林慶尚さん、平山茂樹さんたちには、かつて、私自身が私的な勉強会でよくお世話になりました)、しかし、それぞれの試行錯誤のなかで、次第に道を分けていくというのはこういうことなのか・・・と、感慨深いものがあります。
 その意味では、この座談自体が、ある種の時代のドキュメントとしても意味があるのかもしれません。というのも、おそらく私より下の世代では、ここで共有している基盤(90年代における「批評」の隆盛の記憶――嫌な言い方をすれば『批評空間』的教養主義)さえ崩壊しているでしょうから、おそらく、この手の座談会(政治的立場を異にしながらも、存分に語り合う場)は、なかなか成立しにくいかもしれません。その点、時代の証言のような座談会になったのかもしれないと思うのと同時に、だからこそ、もはや90年代もゼロ年代も過去のものになったのだという感慨を深くしたというわけです。
 ただ、久しぶりの「文学座談会」で(苦笑)、私自身、腕を伸ばして存分に語っています(というより、今読み返すと「保守思想」の宣伝と説得を試みていますね…汗)。その点、ユニークな座談になっているのではないかと思います。一読していただければ幸いです。

ちなみに、雑誌の購入(通信販売)は、下記のアドレスから申し込めるようです。よろしくお願い致します。
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 私自身、この一年で、ずいぶんと違う世界に来てしまったような気がしていますが…つくづく「人生は任運自在でなければ」(座談では「一寸先は闇」だと語っていますが…)などと自分自身に言い聞かせている日々です。