批評の手帖

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『三島由紀夫小百科』(水声社)に「『太陽と鉄』と『作家論』―三島の批評文を読む」を寄稿しました。

 『三島由紀夫小百科』(井上隆史氏・久保田裕子氏・田尻芳樹氏・福田大輔氏・山中剛史氏—編/水声社)の方に、「『太陽と鉄』と『作家論』―三島の批評文を読む」を寄稿しました。
 私の原稿は、『三島由紀夫―なぜ、死んでみせなければならなかったのか』(NHK出版/2020年10月24初版)以前に書いたものなので(このスピード感が、いかにもアカデミズムですが……)、一部の考察(三島由紀夫の『作家論』――特に林房雄論と谷崎潤一郎論への考察——)を除いて、あとは、ほぼNHKの本と重なっています。とはいえ、論者の方々の名前を見ると相当な豪華メンバーを集めた充実した論集=小百科になっていることは間違いありません。今頃なかなか出せない本だと思います。ご興味があれば、是非。
 以下に執筆者名、内容紹介文、目次を添付しておきます。

・ 執筆者
高沼利樹、藤田佑、鈴木ふさ子、佐藤秀明、梶尾文武、中元さおり、柳瀬善治、九内悠水子、有元伸子、田村景子、木谷真紀子、スティーヴン・ドッド、ダミアン・フラナガン、イルメラ・日地谷=キルシュネライト、レベッカ・マック、トマ・ガルサン、郭勇、南相旭、杉山欣也、三輪太郎、J・キース・ヴィンセント、奥畑豊、マイケル・K・ボーダッシュ浜崎洋介小松靖彦、村上克尚、武内佳代、山内由紀人、縄田雄二、エリック・ローラン

黙示録の時代を生きるために
没後半世紀を経てますます詳らかになる三島由紀夫の人生、文学、思想、創造力、洞察力、後世への影響力と予言、さらには来るべき時代を根底から揺さぶる衝撃、未来への警鐘。
日に日に昏迷を深める現代世界を鋭く剔抉し、人類の明日を眩く照射する、三島文学が斬り拓く曠然たる沃野を今こそ見晴るかす。
・秘蔵資料をふくむ豊富な写真・図版とともに作家の生涯を鳥瞰する[第Ⅰ部 略伝]
・主要作品の概要と発表時の反響、今日そして今後の研究を整理する[第Ⅱ部 主要作品事典]
・国内外における受容の状況と作家・作品研究の主要著作を解説する[第Ⅲ部 研究史・受容史]
・新時代の三島研究に拓かれた豊饒なる可能性を論点ごとに展望する[第Ⅳ部 三島論の新潮流]

【目次】
はじめに 井上隆史
Ⅰ 略伝
三島由紀夫略伝 井上隆史

Ⅱ 主要作品事典
「花ざかりの森」 高沼利樹
仮面の告白』 高沼利樹
『禁色』 藤田佑
潮騒』 鈴木ふさ子
金閣寺』 佐藤秀明
鏡子の家』 梶尾文武
『宴のあと』 中元さおり
憂国」、映画『憂国』 柳瀬善治
『美しい星』 梶尾文武
『午後の曳航』 九内悠水子
豊饒の海』 有元伸子
『近代能楽集』 田村景子
三島歌舞伎 木谷真紀子
演劇 山中剛史

Ⅲ 研究史・受容史
三島由紀夫研究史概観 藤田佑
英語圏における三島受容 田尻芳樹、スティーヴン・ドッド、ダミアン・フラナガン
ドイツにおける三島受容 イルメラ・日地谷=キルシュネライト、レベッカ・マック
フランスにおける三島受容 トマ・ガルサン
中国における三島受容 郭勇
韓国における三島受容 南相旭

Ⅳ 三島論の新潮流
『白樺』と三島由紀夫 杉山欣也
三島由紀夫と戦後批評 梶尾文武
楯の会天皇憲法 三輪太郎
仮面の告白』における死産するゲイ・アイデンティティ J・キース・ヴィンセント
アメリカの日本、三島の日本 マイケル・K・ボーダッシュ
核と日常性 田尻芳樹
『太陽と鉄』と『作家論』 浜崎洋介
三島由紀夫の古典受容 小松靖
戦後文化批評史における三島由紀夫 柳瀬善治
三島由紀夫大江健三郎 村上克尚
エンターテインメントとしての三島由紀夫 武内佳代
三島由紀夫と映画 山内由紀人
アジアの向こうのアメリカ 久保田裕子
ドイツ文化と三島由紀夫 縄田雄二
自伝的虚構から犠牲の自伝的文楽へ エリック・ローラン
剣と身体の享楽 福田大輔
三島没後五〇年 山中剛史

おわりに 田尻芳樹

三島由紀夫主要文献目録 藤田佑編