批評の手帖

浜崎洋介のブログです。ご連絡は、yosuke.khaki@gmail.comまで。

『新潮』(2015年6月号)に、西川美和『永い言い訳』の書評「『関係』することの謎を語るために」を寄稿しました。

新潮 2015年 06 月号 [雑誌]

新潮 2015年 06 月号 [雑誌]

永い言い訳

永い言い訳

 初めての女性作家の小説についての書評です。しかも、『蛇イチゴ』(2002)、『ゆれる』(2006)、『夢売るふたり』(2012)などで知られている映画監督の西川美和氏の新作『永い言い訳』(文藝春秋)の書評です。
 かつて見た映画の印象は良かったのですが、小説はどうなんだろうかと思っていました。が、小説の方もなかなか読ませます。主人公を突き放しながら、なおそれを絶妙な距離感で追いかけ続けるところには、引いたカメラの手触りを感じさせますが、それでも映画では試みることが難しい長い心理描写を伴った多視点的接近方というのは小説ならではの試みでしょう。書評の方は、フロイトの「転移」概念に絡めながら西川美和氏の小説の可能性の中心を描き出そうとしています。一読して頂ければ幸いです。
 
 また、中村文則氏の『A』の書評に引き続き担当して頂いた清水さんの丁寧な仕事ぶりには心から感謝しております。ありがとうございました!