- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2013/12/06
- メディア: 雑誌
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見開き二頁の短いエッセイですが、私にとっては大学卒業論文以来の「中上健次論」ということになります。ただそこには、少しの皮肉もあります。というのも、中上文学に熱中した頃の思い出を通して、逆に、「なぜ、今、小説を読む気がしないのか?」という問いを立てているからです。文芸誌上で「小説」への疑義を表明するのもどうかとも思いましたが、それが私の正直なところなので仕方がありません。
ただ、そんな私に声をかけてくれた編集部のYさんの「勇気」には感謝しております。
また、もし『すばる』を手に取られることがあれば、同誌所収の長谷川郁夫氏による「追悼秋山駿―秋山さんへの感謝」も是非読んでみてください。軽薄な政治用語・社会学用語吹き荒れる季節に、青年達がどのように秋山駿という存在を「心の杖」にしていたのかが分かる、大変興味深い追悼文だと思いました。小林秀雄以来脈々と受け継がれてきた、書き手と編集者、あるいは師匠と弟子との厳しいながら濃密なやり取りの記憶というものを読むと、つねに勇気づけられる気がいたします。