批評の手帖

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「菅義偉論」を特集した『表現者クライテリオン』の最新刊(2021年1月号)が出ます!

表現者クライテリオン 2021年1月号

表現者クライテリオン 2021年1月号

  • 発売日: 2020/12/16
  • メディア: 雑誌
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  藤井編集長の動画にもあるように(ちなみに、今回は、私もちょろっと動画に出ていますー笑)、「菅義偉論―改革者か、破壊者か」を特集した『表現者クライテリオン』の最新刊(2021年1月号)が出ます!
 今回は「菅義偉論」が特集ですが、「政策」と言うよりは主に「人物」に焦点を当てた特集になっています。菅氏が緊縮主義者=ネオリベラリスト=改革主義者であることは言うまでもありませんが、では、なぜ彼はそのような「薄っぺらい思想」に憑りつかれてしまったのか? それを、あらゆる角度――彼の生い立ち、東京・横浜での政治家としての「成り上がり」の経緯、政界遊泳の履歴、交友関係などなど――から徹底検証した内容になっています。
 まず藤井編集長が、菅氏と関係のあった政治家(古賀誠氏、亀井静香氏)にインタビューして、佐藤優氏と永田町周辺の「利益システム」について語り合い、政治評論家の森田実氏、評論家の佐高信氏、歴史家の與那覇潤氏、政治ジャーナリストの泉宏氏、政治学者の中島岳志氏に思う存分に「菅義偉論」を書いていただきました。
 私自身も「『菅義偉』とは誰なのか―故郷喪失者のルサンチマンについて」という評論を書いていますが、案外、「書けた」という手応えがあります(笑)。初めての「政治家論」だったんですが、考えてみれば、昔から文芸評論家は「政治家論」を書いてきたという伝統があり、なるほど「人物論」というのは、小説を読んできた身(あるいは、そこで育った身)としては、これほどシックリくるものもないのかもしれません。これまで政策論・思想論・現象論を『クライテリオン』で多く書いてきた自分ですが、今回の原稿は新境地です。一読していただければ幸いです(ちなみに以前、「安倍器論」というのを書きましたが、あれは人物論というよりは、現象論のつもりで書きました)。

 また、今、「自衛官とは何か」を連載している(今号では第三回「”生きたい”と死にたくない”―我々の国は、私の国」を掲載)磯部精僊さんに、拙著『三島由紀夫―なぜ死んでみせなければならなかったのか』(NHK出版)の書評「表情なき怪物、三島由紀夫」を書いていただきました。この場を借りて、改めて感謝申し上げます。心のこもった書評、ありがとうございます!
 以下は、今号の巻頭言と目次となります。

目次
巻頭言

安倍総理の後任として総理の座を射止めた菅義偉氏。世間は約八年ぶりの新総理誕生を大いに歓迎した。
東北出身であることや無派閥であること等が、その「令和おじさん」の総理就任の歓迎ムードをもり立てた。
ただし、日本が置かれた現実は今、戦慄を覚える深刻な状況にある。長引くデフレ不況下で襲来したコロナ禍、
米国では新大統領が誕生する中、そのコロナ禍で一人勝ち状況にある隣国中国はその覇権的野心をさらに激化
させている。こうした状況下では総理の差配は日本の命運に文字通り直結する。
 
 本誌ではこうした認識の下、日本の命運を握る人物となった「菅義偉」という人物が一体如何なる政治家なのか、
そして彼はこの政権で一体如何なる政治を行おうとしているのかを、支持や批難の枠を超えて多角的、多面的に
論ずる特集「菅義偉論」を企画した。彼が言う「改革」は国益に適うものなのか、それとも単なる破壊に終わるのか
――読者各位が是非、じっくりとご吟味願いたい。
                                表現者クライテリオン編集長 藤井 聡

特集 菅義偉論――改革者か、破壊者か

【連載対談】
永田町、その「政」の思想(第1回)「菅政権」システム論/佐藤 優×藤井 聡

【編集長インタビュー】
古賀誠氏に聞く――「菅改革」は保守たり得るのか?
亀井静香氏に聞く――菅義偉 自ら光を出せない「月の政治家」
政治記者鈴木棟一氏に聞く――「改革者」菅義偉の源流

【特集論考】
菅義偉は力ずくの政治を改めなければ破壊者になる/森田 実
菅政権は半グレ政権――欠陥だらけの権力者の運命はいかに/佐高 信
菅義偉」とは誰なのか――故郷喪失者のルサンチマンについて/浜崎洋介
理念より実利優先の超現実主義者――改革志向の原点は「エリート」への反発/泉 宏
中抜きの宰相?――政治家・菅義偉考/與那覇
菅首相を保守の友とすることはできない/中島岳志

【新連載】
保守のためのポストモダン講座(第1回)西部邁ポストモダン/平坂純一

【連載】
基本法を改正できない危機/大石久和(「危機感のない日本」の危機)
アベノミクスを振り返り、スガノミクスに願うこと/森永康平(アベノミクスの失敗)
保守派Ⅲ――「覇権による安定」理論/伊藤 貫(国際政治学パラダイム
三島由紀夫「私の中の二十五年」を読む/富岡幸一郎(虚構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー
宗教や戦争は自殺を減らすのか?――デュルケムの誤認と慧眼/川端祐一郎(思想と科学の間で)
郷愁と伝統/柴山桂太(「常識【コモンセンス】」を考える)
移動の自由がもたらす「リベラル・ディストピア」――「移動せずともよい社会」を目指して(三)コスモポリタニズム批判㊃/白川俊介(ナショナリズム再考)
国民の分断と言語教育――言葉から考える⑥/施 光恒(やわらか日本文化論)
戦国のアウトバーン――日本最初の運河・小名木川の謎/竹村公太郎(地形がつくる日本の歴史)
記憶なき場所に故郷を探す――小林勝の「フォード・一九二七年」を読む/仁平千香子(移動の文学)
マスコミが「保守」になり得ないわけ/松林 薫(逆張りのメディア論)
“生きたい”と“死にたくない”――我々の国は、私の国/磯邉精僊(自衛官とは何者か)
日本の政府と財界は、フランスの移民政策の失敗に学ぶべし/ブルーノ=ゴルニッシュ国民連合・前全国代表(後半)聞き手:及川健二(フランス保守論客インタビュー)
メディア出演瓦版/平坂純一
編集長クライテリア日記――令和二年九月~十一月/藤井聡

【書評】
三島由紀夫 なぜ、死んでみせねばならなかったのか』浜崎洋介 著/磯邉精僊
自衛隊は市街戦を戦えるか』二見 龍 著/篠崎奏平
『愛するということ』エーリッヒ・フロム 著/薄井大澄
ベートーヴェン 巨匠への道』門馬直美 著/佐藤慶

【その他】
領土を奪われる幼児国家日本/「遊び」を罰するな(鳥兜)
RCEPは誰のための協定なのか/滅びゆく日本――三島由紀夫没後五十年に思う(保守放談)
読者からの手紙(投稿)