批評の手帖

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文章道

日本語作文術 (中公新書)

日本語作文術 (中公新書)

 最近、過去に自分が書いた原稿を書き直しているのだが、その際、目安にしているのがこの野内良三の『日本語作文術』。日本語はとにかく書きあぐねる。文の最後に述語がくるという規則以外はほとんどなく(それさえ、倒置法で変更可能)、主語の位置、修飾節の位置はどのようにでも置き換えられる。しかも、その文節の位置を決定する決定的な根拠がないのに加え、文尾は「〜た」、「〜だった」、「〜のだ」、「〜のである」などなど何通りもあるのだから、そりゃ迷うわけである。
 だが、野内によれば「伝わる文章」という視点で言えば、基本的な規則は導けるという。以下、メモ代わりにめぼしい規則を列記しておく。

①短文でわかりやすく(分割できるものは分割せよ)
②文の単位(意味のまとまりとしての文節)は長いほうから順にならべる。
③まず大枠(中核文)をを提示して、おもむろに細部の説明(例)に入る
④修飾語と被修飾語はなるべく近くに置く
⑤修飾語は前に、主語と述語はできるだけ近づけて最後に置く(日本語の主語は述語に対する補語でしかない)

 これだけわきまえればずいぶんと読みやすい文章がかけるとのこと。それにしても、昔に書いた自分の文章を直すのは苦痛だ。若いせいか力が入りすぎて修飾節が異様に長い。しかも、文章の配置はその時々の「気分」に頼っていて何の規則もない。ただし、その「悪文力」が時に異様な「味」になってしまったりするのが文学の怖いところでもあるが・・・(初期小林秀雄保田與重郎吉田健一をみよ)。が、モノは論文である。ここは、いらぬ下心は捨てて職人意識に徹することにしよう。