批評の手帖

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『表現者クライテリオン』最新号—「自民党は『保守政党』なのか?—戦後政治を超克するために」と、鎌田浩毅先生の『首都直下 南海トラフ地震に備えよ』(SB新書)のご紹介

 『表現者クライテリオン』の最新号(2024年7月号)が発売になりました。特集は、「自民党は『保守政党』なのか?—戦後政治を超克するために」です。冒頭の「『保守政党』なのか?」という問いかけは、もちろん「反語」ですが、要するに、「今や、保守政党でも何でもないじゃないか」と言いたいわけです。
 でも、これは単に表面をなぞっただけの自民党批判ではありません。『公明』のインタビューでも述べたことですが、はじめ「独立のための親米」だったものが、次第に「独立のために」が抜けて、単なる「親米」だけが残ってしまった現在の自民党、しかし、逆に言えば、そもそも自民党のDNA(=自民党流の保守本流)のなかには、単なる〈親米=従米〉に流されかねない遺伝子(弱さ)があったのであり、その結果としての「失われた30年」ではなかったかということです。そのあたり、より詳しい歴史的背景や分析が知りたい方は、是非、雑誌を手に取っていただければと思います。
 ちなみに、この国は、戦前においても「攘夷のための開国」だったものが、次第に「攘夷のために」が抜け落ちて「開国(文明開化)」だけが残っていくことになりました。が、それでも昭和には、そんな「開国(文明開化)」を問い直そうとする声が各所から挙がっていました。そして、その精華が、文学界・京都学派・日本浪漫派による「近代の超克」議論(昭和17年)として結晶してくるのです。もちろん、それも今読めば、限界のある議論であったことは否めません。が、翻って現在、果たして戦前の「近代の超克」に見合う議論がどれだけあるのか…。そう問い直せば、「戦後」の堕落が「戦前」以上であることは明らかでしょう。
 もはや、西田幾多郎も、小林秀雄も、保田與重郎も、福田恆存も、吉本隆明も、三島由紀夫も、江藤淳もいません…が、だからと言って手をこまねいてばかりもいられません。私たちにできる精一杯の「近代の超克」議論を、戦前以上に地に足をつけながら、地道に積み重ねていくしかありいません。
 以下は、雑誌の目次となります。参考にしていただければと思います。

目次
【特集座談会】
・日本において「保守政治」は可能か?/吉田 徹×白井 聡×藤井 聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
・自由と民主だけでは「保守政党」にあらず/伊吹文明×藤井 聡
自民党はなぜ劣化したのか/小沢一郎×堀 茂樹×藤井 聡×柴山桂太

【特集論考】
自民党は何を保守すべきなのか―自民党は何を保守すべきなのか/西田昌司
・保守にとっての「ヘゲモニー」の戦略/仲正昌樹
・食料・農業・農村を犠牲にして我が身を守るのは保守ではない/鈴木宣弘
現代日本社会における保守政党自民党/西田亮介
・「質の高い普通の人々」を生み出し続ける国づくりをめざせ!/施 光恒

【新連載】
・風土と共同体 第一回 風土再生の根本問題(一)/山口敬太

【連載】
・「危機感のない日本」の危機―東京一極集中による国家崩壊の恐怖/大石久和
・與那覇潤連続対談 在野の「知」を歩く 第2回 古典をよむのは「逆張り」ですか?(後編)/ゲスト 綿野恵太
・「農」を語る 第2回 世界に誇るべき日本の小規模農業/山極壽一×藤井 聡
・アジアの新世紀 新連載 不可視のイスラーム帝国 ユーラシアを再編する学僧たち 第1回 修行のイスラーム文化/山本直輝
・映画で語る保守思想 第11回 絶望の淵で見出す「希望」とは?―『ペパーミント・キャンディー』を題材に(中編)/藤井 聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
・虚構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー 第三十二回 マルクスの亡霊たち―日本人の「一神教」理解の問題点④/富岡幸一郎
・徹底検証! 霞が関の舞台裏 脱藩官僚による官僚批評 第9回 規制改革の舞台裏/室伏謙一
・ひこばえ 風土に根ざす智慧と美徳 第二回 着物と刀―想いをまとい、美を携える―/首藤小町
経世済民 虫の目・鳥の目 第8回(最終回) 金融教育が日本を滅ぼさないために/田内 学
・欲望の戦後音楽ディスクガイド 第10回 OKI / No One's Land/篠崎奏平
・東京ブレンバスター⑫ ミツ荒川とオッペンハイマー但馬オサム

【巻末オピニオン】
・徳と鏡―政治改革論に足りないもの/柴山桂太

【書評】
・『ておくれの現代社会論 ○○と□□ロジー』中島啓勝 著/田中孝太郎
・『政治哲学とイデオロギー レオ・シュトラウスの政治哲学論』早瀬善彦 著/杉谷和哉
・『末裔』絲山秋子 著/橋場麻由
・『たまたま、この世界に生まれて ミラン・クンデラと運命』須藤輝彦 著/前田龍之祐

【その他】
・「戦後レジーム」と「保守本流」 岸田文雄アメリカ演説を考える(鳥兜)
・ラディカルな政治運動と結びつくスピリチュアリズム(鳥兜)
アイデンティティの「改変」――二十一世紀の「左翼」が目指すもの(保守放談)
・無反省なまま繰り返される観光公害(保守放談)
・塾生のページ
・読者からの手紙(投稿)

 あと、先日、鎌田浩毅先生から、『首都直下 南海トラフ地震に備えよ』(SB新書)をご恵贈頂きました。
 鎌田先生からは、いつも地震・防災などについての貴重な知見を学ばせて頂いていますが、素晴らしいと思うのは、「地球科学的な視点で人生を考える」や、「しなやかに生きる」や、「『解ける問題』と『解けない問題』を仕分ける」という節にもあるように、防災や危機管理にこそ、実は落ち着いいた「人生観」が必要だという指摘です。 
 この心構えは、まさにコロナ騒動の時に日本人が問われたものと同じですが、あの時ほど日本人の「未熟さ」が炙り出されたときはなかったように思います。その毒性を科学的に問うより手前で、ただただ慌てふためき、ヒステリーを起こし、異論を封じ込め、罵倒し、狼狽し…。当時、過剰自粛を批判した私自身(そしてクライテリオンも)、この「未熟さ」が他人ごとではなかった分、鎌田先生の言葉は身に沁みます。