批評の手帖

浜崎洋介のブログです。ご連絡は、yosuke.khaki@gmail.comまで。

『表現者クライテリオン』最新号(2022年3月号)と、動画「オミクロンがつきつけるもの」(文藝春秋digital)!

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 『表現者クライテリオン』の最新号が、明後日の16日に発売になります!
 今回の特集は二つ。一つは【特集1】〈皇室論 俗悪なるものへの最後の“反(アンチ)"〉。そして、もう一つは【特集2】〈「愛国」としての「反日」〉です。
 「皇室論」の方は、クライテリオン史上最長時間(3時間半)に及ぶ座談になりましたが、それだけ議論を呼ぶ主題だと言うことです。日本の国柄(国体)と何か、男系論(万世一系論)、女系容認論(直系論)、GHQ憲法と象徴天皇の孤独、日本国憲法の「正統性」の源泉とは何か、小室圭・真子さま問題etc…、「皇室」を語る事自体が、どこか日本の宿命を語る事と被ってしまう以上、その議論も果てしないものになってしまいます(雑誌掲載の座談の方は、もちろん縮約版ですが、「月刊表現者」(https://pages.keieikagakupub.com/24hg/)の動画の方では全編ノーカットでお送りしています)。
 「保守」のなかでも、ときに男系論と女系論の間で分裂を呼んでしまう非常にセンシティブな議論ではありますが、『クライテリオン』としては、極めて「まっとう」な議論が出来たと思っています。問題含みの主題ですが、是非、一読していただければ幸いです。

 また二つ目の特集「愛国としての反日」は、第一回表現者賞受賞の小幡敏氏『「愛国」としての「反日」』(啓文社)の出版(3月予定)を記念しての特集となります。
 小幡氏初登場の座談(前田日明氏×藤井編集長)をはじめ、小幡氏の大学時代の師・菅野覚明氏による寄稿(菅野氏の著作は私も愛読しています)、小幡氏出身の自衛隊とも縁が深い葛城奈海氏の寄稿、そして藤井編集長の寄稿に加えて、私の拙稿も掲載されています。
 3月刊行の小幡氏のデビュー刊行本の「帯」は私も書かせていただいていますが、まさしく「刮目すべき反時代的な大型新人」の登場です。こちらの方も、是非よろしくお願いいたします!

 しかし、連載・匿名原稿も含めて、今回は色々書きました(笑)。詳しくは、以下、特集内容と目次をご覧下さい。

巻頭言
【特集1】皇室論 俗悪なるものへの最後の“反(アンチ)"
「危機と対峙する保守思想誌」である表現者クライテリオン、その本誌が対峙せねばならぬ最大の「危機」―それこそが「皇室問題」である。
我が国の皇室はその皇位のみならずその伝統全てはただ漫然と継続されてきたのでは決してない。それらの存続は有史以来、常に「危機」に晒され続けてきた。それにも拘わらず令和の今日に至るまでその伝統が途絶えずに存続できたのは、その断絶の危機を回避するための努力を、皇室自身のみならずそれを支え護る日本国民が揺るぎなく続けてきたからに他ならない。
ついてはこの令和においてもこれまでと同様、否、それ以上に、皇室存続のための努力を続けなければならない。さもなければ、近代に毒され俗悪に満ち満ちた令和日本にてその危機は全て現実のものとなる他ない。
本特集はそうした国民的努力のささやかなる一端として企画したものである。我が日本国民がこの「皇室問題」に、真剣に向き合わんとする気風を高めんことを、この機に改めて祈念したい。

【特集2】「愛国」としての「反日
愛無き対象に差し向けられるものはしばしば憎しみよりもむしろ無関心である以上、愛すれば愛する程にその対象に対する批判はより激しくならざるを得なくなる──かくして、愛国者はただただ日本を深く愛するが故に「反日」となり得る宿命を持つ。
本特集はこの必然と向き合い、日本を愛すればこそ、戦後のみならず戦前から我が国日本が抱える本質的な欠陥から眼を背ける事なく、そのおぞましさと惨たらしさを力の限り認識せんとするものである。
この愛する我が国日本、ひいては「君が世」の弥栄を護り続けるためには、我々が抱えるその宿痾を認識し、可能な限り治癒せんと努力しつつ、もしもそれが叶わぬのならその宿痾と付き合い続ける覚悟を持たねばならない。
その作業が間に合うのか間に合わないのか──残念ながらそれを問う暇すら、我々には残されていない。成すべきを成さねば我々が愛するもの達は全て無に帰す事になる。
是非ともこれ以上の恥の上塗りを避けるためにも、自身の恥部から目を背ける事なく対峙せんとする勇気を持たれんことを、心から祈念したい。

表現者クライテリオン編集長 藤井 聡

●目次
☆【特集1】皇室論 俗悪なるものへの最後の“反(アンチ)"
[座談会]
「皇室論」を国民的に加速せよ! /施光恒×藤井聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
・「象徴」天皇とは何か/田中久文
・聖域で「品位」を保ち多様な公務に励む方々/所功
・「男系の皇統」維持のために/百地章
皇位の安定継承という最優先課題/高森明勅
・資料:「男系男子での皇位継承」が持続する条件の試算/川端祐一郎

☆【特集2】「愛国」としての「反日
[鼎談]
愛国が故の「反日」とは、一体何なのか?/前田日明×小幡敏×藤井聡
・「理想団」の思想――日本人の弱点への一つの処方箋/菅野覚明
・私にとっての「愛国としての反日」/浜崎洋介
自衛隊のあるべき姿とは/葛城奈海
・『「愛国」としての「反日」』出版によせて――日本よ、自衛隊を国軍にせよ/藤井聡

☆【連載】
・「大衆社会」は、何をもたらしたのか/浜崎洋介(「自己喪失」の近代史)
・「生きる意味」の探究者、ソクラテス Part1――ソクラテスの歴史的意義/伊藤貫(欧米保守思想に関するエッセイ)
マルクスの亡霊たち――霊的な力と弁証法2/富岡幸一郎(虚構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー)
・江戸最大の謎、忠臣蔵――地形から解く/竹村公太郎(地形がつくる日本の歴史)
・新聞社の倒産で起きること/松林薫(逆張りのメディア論)
・リベラル・デモクラシーと「われわれ意識」――愛着と忠誠の政治哲学序説㊂/白川俊介(ナショナリズム再考)
・「グローバル化」と「国際化」を区別すべき――言葉から考える12/施光恒(やわらか日本文化論)
・不安という原動力――フランツ・カフカの「巣穴」を読む/仁平千香子(移動の文学)
・編集長クライテリア日記/藤井聡
・メディア出演瓦版/平坂純一

☆【寄稿】
・文学的経営学序説――文学と経営の対立の誤りを正す/岩尾俊兵
・「令和維新」――この時代になってようやく始める国の独立運動/山下英次
・「みんなで決める」ことの光と影/小西正雄
NHKみんなのうた」にみる日本の規範/佐藤慶
・人類と環境の悩ましい関係/橋本由美

☆【書評】
『反逆の神話 「反体制」はカネになる〔新版〕』ジョセフ・ヒース&アンドルー・ポター 著/田中孝太郎
防衛省の研究 歴代幹部でたどる戦後日本の国防史』辻田真佐憲 著/篠崎奏平
『いつもの言葉を哲学する』古田徹也 著/前田龍之祐

☆【その他】
・第四回 表現者賞・奨励賞発表
・日本的コロナ対策――暖簾に腕押し、豆腐にかすがい/「なし崩し」的改革への「思想」的抵抗(鳥兜)
・「自粛派」の罪――不信ベースの人生観/インフレになっても政府投資を削るな(保守放談)
・読者からの手紙

bungeishunju.com
 あと、以前にご紹介した與那覇潤氏と対談「オミクロンが突きつけるもの」(『文藝春秋』3月号)のウェビナー動画が「文藝春秋digital(有料)」で公開されたようです。
 雑誌の方は丁寧に編集していて、それはそれで読み易いんですが、「冗長でもいいから生々しさが好き」という方は、こちらの方をお勧めします(笑)。よろしくお願いします!