批評の手帖

浜崎洋介のブログです。連絡は、yosuke.khaki@gmail.comまで。

クライテリオンの最新号(2020年9月号)と、インタヴィュー記事その他

表現者クライテリオン 2020年9月号

表現者クライテリオン 2020年9月号

  • 発売日: 2020/08/17
  • メディア: 雑誌
www.youtube.com

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瀬木さんの記事
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『史』原稿

mainichi.jp
 根詰めた仕事が長引いていて…ブログの更新が滞っていました。ということで、本当に久しぶりですが、告知をさせていただきます。

 まず『表現者クライテリオン』の最新号が出ます。今回の特集は「新・空気の研究」。もちろん、山本七平の『「空気」の研究』にあやかっているわけですが、この度の「コロナ禍」で蔓延した「空気」について、思想的、歴史的、社会システム的に検討しようという企画です。特集座談会には、『空気の検閲―大日本帝国表現規制』(光文社新書)などを書かれている若き近現代史研究者・辻田真佐憲さんをお迎えしています。白熱した討論、是非、手に取って確認して頂ければ幸いです。
 その他、特集原稿には、あの科学哲学者の野家啓一先生(昔、よくお世話になりました、『物語の哲学』や 『科学の解釈学』は今でも名著だと思っています!)の「専門家支配から非専門家統制へ――「空気」の専制に抗して」や、井上雅人さんの「総動員体制下の『新しい生活様式』――コロナウイルスとの『戦い』は『総力戦』なのか」のほか、寄稿原稿の野口剛夫氏の「ベートーヴェンは怒っている」も、芸術に携わる人間なら心から頷ける論考なども揃っています。
 さらに、この度は連載も充実していて――内輪褒めで恐縮ですが(笑)――磯邉精僊氏の「自衛官とは何者か(第1回)国民の中の自衛隊自衛隊の中の国民」という新連載、それに、松林薫さんの「逆張りのメディア論―メディアとのソーシャルディスタンスを取り戻せ」や、柴山さんの「伝統論の系譜学――T.S.エリオットから日本へ」や、川端さんの「芸術の科学――神経美学の試み(思想と科学の間で)」などなど…どれも本質論を伴った具体論で読みごたえがあります!
 また、私自身が関わった仕事としては、「養老孟司、常識を語る(最終回)『手入れという思想』――『バカの壁』を乗り越えるために」や「『空気』の支配に抗して――社交と常識の倫理学」などもあります。養老先生へのインタヴュー記事はこれで最終回ですが、本当に貴重な時間を頂いたと思っています。こちらの方も、是非、一読していただければ幸いです。

 あと、二つの新聞記事+一つの記事を紹介しておきます。
 一つは、私が取材協力させていただいた瀬木広哉さんの「コロナに揺らぐ日常再考―問われる『個人主義』の質」という記事(共同通信/各紙配信)。もう一つは、私の「学生の教育機会を取り戻せ」(毎日新聞ナビゲート)、それともう一つは、ずいぶん前に『史』に起稿した「コロナ後に用意のない日本人」という文章です。どれも、このコロナ騒動に対する「もういい加減にしないか」という問いかけです。
 もちろん、いくら一人で問いかけても仕方がないのは知っています……が、「幾ら食つても腹が減る事を承知しながら、やはり食はずにゐられないとふ事」(福田恆存「言論の空しさ」)なんでしょう。
 一読していただければ幸いです。

 ちなみに、以下は『表現者クライテリオン』最新号の内容です。よろしくお願いいたします。

【特別インタビュー】
養老孟司、常識を語る(最終回)「手入れという思想」――「バカの壁」を乗り越えるために/聞き手:浜崎洋介

【特集】
「空気」に抗う社交の力/辻田真佐憲×本誌編集部
専門家支配から非専門家統制へ――「空気」の専制に抗して/野家啓一
総動員体制下の「新しい生活様式」――コロナウイルスとの「戦い」は「総力戦」なのか/井上雅人
「空気」の支配に抗して――社交と常識の倫理学浜崎洋介
マスメディアは新型コロナをいかに報じたか――「アナウンス効果」が生んだ危機/窪田順生
メディアとのソーシャルディスタンスを取り戻せ/松林薫(逆張りのメディア論)
ゾンビ企業」は潰れるべきとの「空気」の支配が日本の経済社会を破壊する――誤った方向に放たれ続ける「第三の矢」/室伏謙一(アベノミクスの失敗)
ベートーヴェンは怒っている/野口剛夫
「二重行政の無駄」という罪悪――大阪維新の会の医療政策を検証する/松嶋三夫
空気の否定か、爽快な自滅か/佐藤健志(一言一会)

【新連載】
自衛官とは何者か(第1回)国民の中の自衛隊自衛隊の中の国民/磯邉精僊

【連載】
コロナからの問いに応えられない亡国の危機/大石久和(「危機感のない日本」の危機)
保守派Ⅰ/伊藤貫(国際政治学パラダイム
文学の黙示録――古井由吉楽天記』/富岡幸一郎(虚構と言語 戦後文学のアルケオロジー
伝統論の系譜学――T.S.エリオットから日本へ/柴山桂太(「常識」を考える)
芸術の科学――神経美学の試み/川端祐一郎(思想と科学の間で)
移動の自由がもたらす「リベラル・ディストピア」――「移動せずともよい社会」を目指して(二)コスモポリタニズム批判㊂/白川俊介(ナショナリズム再考)
「やさしさ」とマスク――言葉から考える④/施光恒(やわらか日本文化論)
関ケ原の戦いの謎/竹村公太郎(地形が作る日本の歴史)
第三次世界大戦を避けるため、国家を立て直せ(フランス保守論客インタビュー ジャン=ラサール「抵抗せよ」党首・下院議員 後半)/聞き手:及川健二
おい、自殺者は減っているぞ!/佐藤健志(だからこの世は宇宙のジョーク)
メディア出演瓦版/平坂純一
編集長クライテリア日記――令和二年四月~七月/藤井聡

【寄稿】
軍事技術と科学者/武田靖
昨今の学校教育について/髙山啓佑

【書評】
天皇論 江藤淳三島由紀夫富岡幸一郎 著/薄井大澄
マックス・ヴェーバー――主体的人間の悲喜劇』今野元 著/田中孝太郎
『日本経済学新論――渋沢栄一から下村治まで』中野剛志 著/篠崎泰平
『白人ナショナリズム――アメリカを揺るがす「文化的反動」』渡辺靖 著/佐藤慶

【その他】
「コロナからの国家再生」の道を構想せよ / 中国――「国民国家」になれない国(鳥兜)
「命の選別」論争の不毛 / 教育機会を奪う大学の不条理を許すな(保守放談)
読者からの手紙(投稿)

【編集長から】
我が国では新型コロナ感染症に対して「国民が一丸となってウイルスを抑え込むべし」
という想念が幅広く共有された結果、「コロナは怖い」から感染すること/させることは
「悪」であり自粛こそが「善」という“コロナ脳”とも呼ぶべき単純化された認識に世間が概ね支配された。
そして「自粛警察」とも言われた相互監視現象が拡大していったのだが、これはまさにかつて
評論家の山本七平が『「空気」の研究』で論じたこわばった空気が、令和の日本を席巻したことを意味している。
 このこわばった空気の形成にはTVが中心的役割を果たしたが、そのTVにお墨付きを与えたのが専門家達であり、
その専門家達の権威を利用したのが中央政府であった。そして大阪の吉村知事や東京の小池知事は、
そのこわばった空気を活用しながらTV人気を獲得していった。言うまでもなく、空気によって膨張した政治権力が
我が国に激しい被害をもたらすことは必定だ。
 ついては本誌では、こうして一気に拡大していった不条理なる「空気の支配」を様々な視点から批評すると同時に、
そこで明らかになった我が国の民主政治、マスメディア、さらには「専門家支配体制」のそれぞれの根底に横たわる
本質的問題をえぐり出すことを企図し、本特集を企画した。是非、ご一読されたい。
表現者クライテリオン編集長 藤井 聡