批評の手帖

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『対抗言論―反ヘイトのための交差路』(杉田俊介・櫻井信栄編/法政大学出版局)に「『ネオリベ国家ニッポン』に抗して―テロ・ヘイト・ポピュリズムの現在」を寄稿しました。

対抗言論 反ヘイトのための交差路 1号: ヘイトの時代に対抗する

対抗言論 反ヘイトのための交差路 1号: ヘイトの時代に対抗する

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 法政大学出版局
  • 発売日: 2019/12/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 今朝、「『ネオリベ国家ニッポン』に抗して―テロ・ヘイト・ポピュリズムの現在」を寄稿した『対抗言論―反ヘイトのための交差路』(杉田俊介・櫻井信栄編/法政大学出版局)が自宅に届きました。
 「防壁としての国家」を語る私だけが浮いている気もしないではないですが(笑)、「ヘイト」を誘発するネオリベグローバリズムに対して、スピノザの『エチカ』と『国家論』とをつなぎ合わせながら原理的な考察=批判を加えています。その上で、1980年代から始まる〈新自由主義≒帝国〉の「超克」について、ポストモダン系スピノチスト(例えば―アントニオ・ネグリマイケル・ハートの政治哲学)を批判しています。
 日本人は、よく自助、共助までは語るものの、「国家」が関与する公助になると急に黙りこくりますが(それは、国家の徴税権力を前提にしたMMTについても同じことが言えます)、近代国家において「国家政策」(政治的術策=規制)なしに「反ヘイト」も何もあり得ません。スピノザに言葉を借りれば、「他人の権利を自己の権利と同様に守らなければならぬことを教えている言葉」(アイデンティティ・ポリティックスの虚構=キレイゴト)は、それが単なる道徳でしかない以上、「感情に対してたいした効果を及ぼさない」のです。久しぶりに原理的な考察を書いた気がします(笑)。一読していただければ幸いです。
 以下は、『対抗言論』の内容紹介・目次です。何卒、よろしくお願いいたします。

内容紹介
私たちはいま、ヘイトの時代を生きている。外国人・移民に対するレイシズム、歴史の改竄、性差別、障害者・生活保護受給者・非正規労働者への差別などが複雑に絡み合い、すべてが「自己責任」で揉み消されてゆく殺伐たる社会で、私たちはどうすれば隣人への優しさや知性を取り戻せるのか。分断統治をこえて、一人ひとりが自己解放の言葉をつむぐ努力の一歩として、この雑誌は始まる。年1号刊行予定。

■目次
〈座談会〉日本のヘイト社会にいかに対抗しうるのか 【中沢けい川村湊杉田俊介+櫻井信栄】
《特集①》日本のマジョリティはいかにしてヘイトに向き合えるのか
〈われわれ〉のハザードマップを更新する──誰が「誰がネットで排外主義者になるのか」と問うのか 【倉橋耕平】
あらゆる表現はプロパガンダなのか?──汎プロパガンダ的認識の世界のなかで 【藤田直哉
〈小説〉二〇一三年 【櫻井信栄】
分断統治に「加担しない」ために──星野智幸氏インタビュー 【聞き手】杉田俊介
被差別者の自己テロル──檀廬影『僕という容れ物』論 【赤井浩太】
ネオリベ国家ニッポン」に抗して──テロ・ヘイト・ポピュリズムの現在 【浜崎洋介
差別の哲学について 【堀田義太郎】
〈紀行文〉アジアの細道──バンコクチェンマイハノイホーチミン市 【藤原侑貴】
《特集②》歴史認識とヘイト────排外主義なき日本は可能か
歪んだ眼鏡を取り換えろ──「嫌韓」の歴史的起源を考える 【加藤直樹
戦後史の中の「押しつけ憲法論」──そこに見られる民主主義の危うさ 【賀茂道子】
朝鮮人から見える沖縄の加害とその克服の歴史 【呉世宗】
われわれの憎悪とは──「一四〇字の世界」によるカタストロフィと沈黙のパンデミック 【石原真衣】
アイヌのこと、人間のこと、ほんの少しだけ 【川口好美】
ヘイト・スピーチの論理構造──真珠湾ヒロシマ、加害者と被害者のあいだで 【秋葉忠利
「だったらあんたが書いてくれ」と言わないために 【康潤伊】
《特集③》移民・難民/女性/LGBT────共にあることの可能性
不寛容の泥沼から解放されるために──雨宮処凜氏インタビュー 【聞き手】杉田俊介
フェミニズムと「ヘイト男性」を結ぶ──「生きづらさを生き延びるための思想」に向けて 【貴戸理恵
黄色いベスト運動──あるいは二一世紀における多数派の民衆と政治 【大中一彌
収容所なき社会と移民・難民の主体性 【高橋若木
やわらかな「棘」と、「正しさ」の震え 【温又柔】
LGBTと日本のマジョリティ──遠藤まめた氏インタビュー 【聞き手】杉田俊介
NOT ALONE CAFE TOKYOの実践から──ヘイトでなく安全な場を 【生島嗣+植田祐介+潟見陽+ルーアン
反ヘイトを考えるためのブックリスト42 【本誌編集委員&スタッフ+ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会】
執筆者紹介/クラウドファンディングの御礼とご報告