批評の手帖

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MMT(現代貨幣理論)を特集した『表現者クライテリオン』最新号(2019年9月号)が発売になりました!

表現者クライテリオン 2019年 09 月号 [雑誌]

表現者クライテリオン 2019年 09 月号 [雑誌]

 先日、『表現者クライテリオン』の最新号(2019年9月号)が届きました。
 今回の特集は豪華です。前半に「MMTと日本―現代貨幣理論の真実」と題した特集を組んで、純粋な経済学的考察から経済政策までの座談・論考を掲載し――内輪褒めになってしまいますが、MMTの信用貨幣論の正しさを認めつつ、国民国家体制下での商品貨幣論の幻想の払拭し難さをも指摘した柴山さんの論考は、まさにクリティカルでした!――、後半に「『第二次世界大戦』とは何だったのか」という第二特集を組んで、クライテリオン初登場の長谷川三千子先生の論考をはじめ、野中郁次郎先生の論考、また表現者賞を受賞した新人・礒邉精僊氏の論考などを掲載しています――ついでに言えば、「対米従属文学論」も、今回は鹿児島特別編と題して、吉田満戦艦大和ノ最期』と、島尾敏雄『出発は遂に訪れず』という二つの「特攻文学」を扱っています。
 第一特集に関して言えば、サンダース大統領候補のブレーンも務めるステファニー・ケルトン教授をMMT国際シンポジウムに招聘し、その師匠筋に当たるL・ランダル・レイ教授の『MMT現代貨幣理論入門』(東洋経済新報社)の翻訳が出るこの時期に「MMT特集」を組めたことは、雑誌編集としても意義ある仕事になったと思っています。「保存版」の意味も込めて、是非、手にとっていただければと思います(※ちなみに、今回から、「思想の転換点――平成から令和へ」と題して、宮崎哲弥氏と藤井編集長との新企画―巻末座談会〔第1回(前半)ポストモダン/新自由主義から、暗黒啓蒙へ―宮崎哲弥氏×松尾匡氏×中島岳志氏×藤井聡氏〕が始まります。そちらの方も、どうぞ、よろしくお願いします!)

 私自身の仕事としては、今回は二つに的を絞っています。一つは、先にも触れた「対米従属座談会・鹿児島特別編―「特攻文学」をめぐって・吉田満戦艦大和ノ最期』/島尾敏雄『出発は遂に訪れず』」(施光恒×編集部)であり、もう一つが、連載最終回となる「近代/日本を繋ぐもの-『ふるさと』をめぐる批評」という論考です。
 後者の方は、文字通り「ふるさと」をめぐって、坂口安吾から小林秀雄へ、そして福田恆存へと「批評」の橋を渡そうとした仕事になっています(これまでで一番長い原稿となってしまいましたが・・・汗)。一見、相容れないかに見える安吾と小林、あるいは無頼派と保守思想ですが、しかし、彼らの言葉の底には常に「必要」とういう名の思想が脈打っていました。「近代主義」と「日本主義」とを同時に峻拒しながら、なお、「近代」と「日本」とを繋ぐこと。おそらく、それは、今現在においてこそ「必要」な思想だと思われますが、それが、どのような「態度」において可能だったのか。できるだけ、分かりやすく書いたつもりです。一読して頂ければ幸いです。
 以下は、『表現者クライテリオン』最新号の目次となります。手にとって確かめて頂ければと思います。

【特集1】MMTと日本――現代貨幣理論の真実
財務省から財政主権を取り戻せ! (MMT政治座談会)/竹内譲・西田昌司藤井聡
国家が貨幣をつくる/柴山桂太
MMTと主流派経済学者の危機/青木泰樹

「日本はMMTの実証例」のもう一つの意味/島倉原 固定観念を払拭し、「本来あるべき政府の財政」を取り戻せ――翻訳者が読み解く『MMT 現代貨幣理論入門』/鈴木正徳
日本の財務大臣MMTに被害妄想を抱く/ビル・ミッチェル(中筋浩平訳)
内生的貨幣供給論とは何か――現代の貨幣経済を読み解く/内藤敦之
現代貨幣理論(MMT)の思想的源流/岡本英男
MMTとは「ロマン派経済学」である――ステファニー・ケルトン教授来日公演レポート/池戸万作
貨幣観が変われば、歴史観も変わる――中野剛志『富国と強兵 地政経済学序説』を読む/田中孝太郎
米上院のMMT非難決議案/佐藤健志(だからこの世は宇宙のジョーク)

【特集2】「第二次世界大戦」とは何だったのか
百年の欺瞞を暴け/長谷川三千子
日本に戦略ありや――?作戦と戦略を取り違えてはいけない/野中郁次郎
繰り返される悲劇/柴山桂太
大衆の戦争としての二次大戦/磯邉精僊
失われた政府への信用/佐藤健志(一言一会)
戦後の言論空間――令和になっても「戦後」は終わらない/富岡幸一郎(虚構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー)
「特攻文学」をめぐって――吉田満戦艦大和ノ最期』・島尾敏雄『出発は遂に訪れず』/施光恒&編集部(対米従属文学論 鹿児島特別編)

【新連載】
思想の転換点――平成から令和へ 第1回(前半)
ポストモダン/新自由主義から、暗黒啓蒙へ/宮崎哲弥松尾匡中島岳志藤井聡

【連載】
協同組合が生きる時代へ/中野剛志(農は国の本なり)
国土学が解き明かすヨーロッパ人・中国人・日本人の謎/大石久和(「危機感のない日本」の危機)
城下町の町づくり――「拡張開発型」から「整備再生型」へ/松原隆一郎(時がつくる場所)
政治体制としての「デモクラシー」の存続のために――「ポピュリズム」について考える(2)/白川俊介(ナショナリズム再考)
家康が関東で発見した宝――大油田と大穀倉地帯/竹村公太郎(地形がつくる日本の歴史)
朝顔との親しさ/施 光恒(やわらか日本文化論――園芸文化と日本人)
ゴシップの力――「噂話」が心と社会を作り上げた/川端祐一郎(思想と科学の間で)
テレビが「新聞」になる日/松林 薫(逆張りのメディア論)
終わらざるマキァヴェリアン・モーメント/佐藤一進(実践としての歴史叙述)
フランスの自死/平坂純一(保守のフランス史)
天上の影が映る街――ニューヨークと私/鈴木ふさ子(時の旅へのエッセイ ある街角から)
「ふるさと」をめぐる批評/浜崎洋介(近代/日本を繋ぐもの)
メディア出演瓦版/平坂純一
編集長クライテリア日記(令和元年6月~7月)/藤井聡

【書評】
平山周吉著『江藤淳は甦える』/岡﨑祐貴
岸田秀著『唯幻論始末記――わたしはなぜ唯幻論を唱えたのか』/篠崎奏平
河西秀哉著『平成の天皇と戦後日本』/佐藤慶

【その他】
地獄への扉を開く安倍内閣、それを看過する国民(鳥兜)
日韓は「冷静な喧嘩」をやるべし(鳥兜)
勝者なき参院選(保守放談)
吉本興業芸人・反社騒動」に見る日本の品性下劣ぶり(保守放談)
消費税の「一時的減税」を認めよ(保守放談)
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