批評の手帖

浜崎洋介のブログです。ご連絡は、yosuke.khaki@gmail.comまで。

『表現者クライテリオン』最新号(2019年7月号)が発売になりました!

表現者クライテリオン 2019年7月号[雑誌]

表現者クライテリオン 2019年7月号[雑誌]

 『表現者クライテリオン』最新号が、今日から店頭に並びます!
 今回の特集テーマは「日本外交の大転換―新時代の勢力論」と題して、クライテリオン初の「外交特集」です。
 いつまでも、「嫌韓・嫌中」と言ってても話は始まらないわけで(ひねくれた韓国が問題であること、中国の膨張主義が脅威であることはもちろんなんですが)、その「いかようにもし難い他者」(米国・ロシア・北朝鮮を含めて)を前に、どう「外交」を展開することができるのか――要するに、相手が勢力を伸ばそうとしている現場で「戦力均衡」(バランス・オブ・パワー)を目指すのだとしたら、どのような「態度」と「戦略」が必要なのか――、というのが今回の特集テーマです。これまで『表現者クライテリオン』にあまりご登場願えなかった方々(呉善花氏、遠藤誉氏、ローバート・D・エルドリッチ氏、山田吉彦氏、藤和彦氏、堀茂樹氏――堀さんには以前にもご登場願っていますが――)にもご寄稿頂いて、この度の特集を組むことが出来ました。ご寄稿頂いた皆様には、改めて感謝申し上げたいと思います。
 また、この度は「新連載」が二つ始まります。
 一つは、以前「表現者賞」を受賞した磯邊精僊氏の「問ひ質したきことども(第一回・もののふの有り様)」、もう一つは白川俊介氏「ナショナリズム再考―『ポピュリズム』について考える①」です(ちなみに、磯邊さんの表題は、福田恆存の最後の著作『問ひ質したきことども』からとっているものと思われますが、こういう文章は、「弱者」(繊細)を気取るしか能のない文化人や、「学問」(権威)を気取るしか能のないアカデミシャンには絶対に書けません。これからの活躍を期待したいと思います)。

 私の方は、今回の「特集」の方には書いていないのですが、その他に三つほど文章を載せています。
 一つは、いつもの、①「保田與重郎小論―近代/日本を繋ぐもの・第七回」と、②座談会「対米従属文学論―高度成長後の風景・村上春樹『風の歌を聞け』、田中康夫『なんとなく、クリスタル』」、そして、③井口時男『蓮田善明―戦争と文学』の書評「今、甦る蓮田善明―『危機』における自己変革」です。
 ちなみに、連載の方は、そろそろ「戦前」が終わるので、次回(第8回)で一旦「小休止」にしようかと思っています。雑誌が軌道に乗るまでということで始めた連載でしたが、雑誌の方向性や色も定まってきたところで、そろそろ「編集委員の登場しすぎ(笑)」を抑えて、「企画」「編集」「特集原稿」などの方に集中してもいいのではないかと考えた次第です(新人も登場して来たことですし)。論壇誌での「文学史論」については、あまり読まれる連載ではなかったという自覚はありますが(笑)、読んで下さった方々には、心から感謝申し上げます(時々頂く感想が励みでした)。ありがとうございました。
 「戦後篇」については、またどこかで始められればと思っています(ちなみに、今回の保田與重郎論は、保田のテクストを読み込んだ上での「保田批判」です。保田を批判するなど、「右にあるまじき態度」かも知れませんが〔笑〕、それが私の偽らざる保田評価です――物凄く簡単に言うと、保田には「直感」の対象である「他者」が不在なのです――)…ということで、書評や座談会を含め、是非、一読、よろしくお願い致します!
 以下は、最新号の目次(概要)となります。

目次
【特集】
パブリック・ディプロマシー/小原凡司×桒原響子×藤井聡 (座談会)
•八方塞がりの韓国との付き合い方/呉善花(インタビュー)
•敗北を招いた日本の対中平成外交――中国の地政学的な長期戦略を見抜け/遠藤誉
•日米関係における今日の「沖縄問題」――普天間基地辺野古移設をめぐって/ロバート・D・エルドリッヂ
•再考すべき日本の島嶼防衛――迫り来る中国の脅威に備えて/山田吉彦
•エネルギー安全保障の要諦は「多様化」にあり/藤和彦
•主権をめぐる現況/堀茂樹
•戦後秩序の「大転換」――米中貿易戦争と日本(鳥兜)
•外交交渉と言論――「丸山発言」をめぐって(鳥兜)

【新連載】
•望ましい政治社会のヴィジョンを構想するために/白川俊介(「ポピュリズム」について考える)
もののふの有り様/磯邉精僊(問ひ質したきことども)

【連載】
•転落への転換点一九九五年から始まる日本の危機/大石久和(「危機感のない日本」の危機)
•宮脇檀と「戸建て住宅の集合」/松原隆一郎(時がつくる場所)
•対米従属文学論:高度成長後の風景(村上春樹『風の歌を聞け』、田中康夫『なんとなく、クリスタル』)/本誌編集部(座談会)
ビスマルクの武断主義と避戦外交/伊藤貫(リアリスト外交の賢人たち)
「農政の農村離れ」を憂う/小田切徳美(農は国の本なり)
•哀しいよな、日の丸ってやつは /佐藤健志(一言一会)
•状況と寓話/富岡幸一郎(虚構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー
•中間集団の抵抗力/柴山桂太(「常識」を考える)
•北海道は「植民地」のままでいいのか?/古川雄嗣(北海道、この見棄てられた大地)
•地形を味方にした秀吉/竹村公太郎(地形がつくる日本の歴史)
向島百花園にみる江戸の活力/施光恒(やわらか日本文化論)
保田與重郎小論/浜崎洋介(近代/日本を繋ぐもの)
•「多様性」が社会の活力を奪うという逆説/川端祐一郎(思想と科学の間で)
•日本の新聞産業の特殊性/松林薫(逆張りのメディア論)
•狂気の世紀末と大戦前夜/平坂純一(保守のフランス史
•何処でもない街/鈴木ふさ子(時の旅へのエッセイ ある街角から)
•都構想 VS 二十三市連合構想/佐藤健志(だからこの世は宇宙のジョーク)
•激動の時代、政治家は実践知を偉人の経験から学べ/野中郁次郎(危機と対峙する人間思考)
•編集長クライテリア日記/藤井聡

【書評】
井口時男著『蓮田善明――戦争と文学』/浜崎洋介
•フォルカー・ヴァイス著『ドイツの新右翼』/岡﨑祐貴
•ダニ・ロドリック著『貿易戦争の政治経済学――資本主義を再構築する』/折田 唯
•マーク・フィッシャー 著『わが人生の幽霊たち――うつ病、憑依論、失われた未来』/篠崎奏平

【その他】
•メディア出演瓦版/平坂純一
•読者からの手紙(投稿)