- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2017/03/06
- メディア: 雑誌
- この商品を含むブログ (1件) を見る
この度の安吾論は、昨年の秋口に「坂口安吾研究会」で発表した「『カラクリ』の向こう/『ふるさと』の一歩手前――坂口安吾のファルス」という講演が下地になっています。論の道具立ては、福田恆存、太宰治、ハイデガー、チェーホフ、ベンヤミン、小林秀雄などなど…講演内容とそこまで変わるものではありませんが、原稿化に際しては原型をとどめぬほどに手を加えています。もし、それを書くことによって作者自身が自己変容を迫られるような言葉、それを引き受けようとする営みを「文芸批評」と言うのなら、この度の安吾論は、久しぶりに「文芸批評」を書いたという手応えがあります。とはいえ、もちろん私は、「文壇」に閉じこもる気などさらさらありません。この度の安吾論においても、「政治と文学」とのあり得べき関係を問う私の連続した問題意識=通奏低音は聞き取れるはずです。
また、この度は、私が考える「文芸批評」というものがどういうものであるのかを示す上でも大事な評論になったと思っています。これから「すばるクリティーク賞」で“批評する側”に立つことになるわけですが、まずは、この時期に“批評される側”としての自分を提示できたことが良かったと思っています。一読していただければ幸いです。
ちなみに、この4月号から『すばる』の表紙などが30年ぶりくらいにリニューアルされたそうです。以前の表紙もシンプルで好きでしたが、今回からの表紙も優しい「民芸」ぽい感じで好きです。