批評の手帖

浜崎洋介のブログです。ご連絡は、yosuke.khaki@gmail.comまで。

「消費増税を凍結」するかどうかを判断する最期のチャンスです!

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 依然として厳しい情勢が続いていますが、消費増税凍結判断のリミット(6月半ば)が近づいています。
 デフレ下での、しかも米中貿易戦争下での消費増税は、ほとんど「自殺行為」ですが、それほどに日本人の嗅覚、判断力は落ちてしまったと言うことなのか……それとも、まだ日本人には学ぶ力が残っているのか……もう少しだけ見守りたいと思います。
 ただ、見守るだけではなく、私も最後の力を振り絞って、「消費税批判」の新聞記事(5月29日=来週水曜日の『毎日新聞』夕刊)と、チャンネル桜の消費税批判番組(多分、今週末放送?)で、その「不条理」を訴えたいと思います。
 
 ちなみに、少し遅れてしまいましたが、藤井聡編集長の、これまた明晰すぎる(分かりやすすぎる)MMTの紹介動画「MMTの真実〜日本経済と現代貨幣理論」と、「私立Z学園の憂鬱」の第6話~第8話(最終話)までをご紹介しておきます!
 やっぱり、あさみちゃんが言うように、日本国民の「元気玉」が必要ですね!
 あさみちゃんも言及するMMTについては、「インフレ率の上限と下限との‶あいだ‶に財政規律を設ける」という発想が、いかにも「バランス感覚」を重んじる保守思想と相性がいい…というか、保守思想云々以前に、単に人間の「常識的な判断力への信頼」そのものの話です。
 ただ、それ以上に、やっぱり「国債の新規発行は金利高騰をもたらさない!(インフレ率と利率は綺麗に重なる!)」という事実(これは、これまでの通念とは逆)は強調しておいていいですね。これを梃子にして、何とか、このどうしようもない〈日本の不条理=憂鬱〉を晴らしたいと心底思います。是非とも、ご参照ください!

「私立Z学園の憂鬱」の続き(4話~5話)の紹介と、「財政破綻論」批判を理論的に裏付けるMMT(現代貨幣理論)の「解説動画」のご紹介

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 さて、いよいよ消費増税凍結のタイムリミットが迫ってきましたが、改めて消費増税批判マンガの「私立Z学園の憂鬱」のご紹介をしておくとともに、消費増税論者が説く「財政破綻論」に対する根本的かつ原理的批判理論である「現代貨幣理論」(Modern Monetary Theory=MMT)の「解説動画」(中野剛志氏と青木泰樹氏による解説)をご紹介しておきます。どちらの動画も、素晴らしく明晰です。
 もちろん、私自身は経済学の素人ですが、それでも、かつてのポスト・モダン左派(NAM)の影響もあって(お恥ずかしい限りです…汗)、折りに触れて資本主義論には触れて来ました。が、この度話題のMMTには「積極財政論」を支える透徹した原理性を感じます。
 そう思うと、95年頃からひっきりなしに言われてきた、あの脅迫的な「財政破綻論」は何だったんだと言いたくなってきますが(あの制度経済学者の金子勝氏でさえ財政破綻の危険を説いていましたからね…というか、未だに説いていますが)。しかも、MMTに依拠すれば、例えば、かつて岩井克人氏なんかが『貨幣論』で論じていた「貨幣法制説」と「貨幣商品説」の対立を乗り越えると同時に、岩井氏も論じていない「貨幣価値」の根源的意味を明らかにすることができるのです(岩井氏は「貨幣価値」をマルクスの価値形態論から説き起こし、それを「循環論法(貨幣が貨幣として流通しているのは、それが貨幣として流通しているからでしかない=クラインの壺?)」に持って行っただけでした。いかにも脱構築的で非実践的な議論ですが、この貨幣(オリジナル)と仮想通貨(コピー)の区別を排すような議論がポストモダン的だと言えばポストモダン的だったのもかもしれません。
 それに対して、MMTの貨幣論は「事実」に即していますが、それが例えば、カール・ポランニーなんかの「擬制商品論」(つまり、「貨幣」は単なる「商品」ではなく、むしろ商品交換を支える基盤であって、それの背後には共同体=国家への信用がピッタリと張り付いている)や、モースの『贈与論』なんかから私が勝手に考えていたことと重なることに、今更ながら驚いています。
 では、現代の「不換紙幣」の価値の源泉とは何なのか(要するに、なぜ人々は単なる数字=紙切れかもしれない非兌換の紙幣を欲しがるのか?)。その背後にあるのが、〈国家=政府〉による「徴税」という事実なのです(税を特定の貨幣で払わなければならないからなのです)。しかし、だとすれば、やっぱり「貨幣」の根源には「国家の力」が存在しているということになる。と同時に、だから「貨幣価値」を作り出す主体であると同時に、通貨発行権の主体でもある「国家」が(自殺願望でもない限り)「財政破綻」することも、「ハイパーインフレ」を引き起こすことも原理的にあり得ないということにもなる。もっと言うと、「徴税」というのは貨幣に価値を持たせるための手段であって、決して「税収」のための手段ではないということが明らかになるのです(逆に言うと、だから「徴税」し過ぎると貨幣の価値が上がり過ぎて、デフレになるのです!) これがMMTが「積極財政論」の後ろ盾になる強力な理由であると同時に、デフレ下での「消費増税」が論外であることの原理的意味です。(さらに言えば、それこそが、〈国家=力〉を背景とした「貨幣」(日本銀行券)が単なる「仮想通貨」(バブル)ではないことの意味でもあります)。
 と、まぁ素人の経済談義はこれぐらいにして、是非「解説動画」をご覧いただければと思います。これによって、消費税増税批判を徹底できると同時に、積極財政論(デフレ脱却)の基盤も作れるはずです。よろしくお願い致します!

 ちなみに、ウェスタ川越での芸術文化史 日本文学『批評は、なぜ小林秀雄から始まったのかー「様々なる意匠」を読む』 | ウェスタ川越 多彩なふれあいによる地域活力の創造拠点というミニ講座の募集は定員に達しため、募集を締め切ったそうです(現在キャンセル待ちに案内に切り替えている様です)。ご応募頂き、ありがとうございました!

「消費税増税」批判のマンガ、「私立Z学園の憂鬱」が面白い。

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 噂には聞いていた、「消費税増税」批判のマンガ『私立Z学園の憂鬱』が想像以上に面白いです。画のクオリティーといい、豊富な情報量といい、完璧です。「消費増税」批判は、もうこれでいいんじゃないですかね(笑)。かつ、「公共投資」や「財政」についてもメチャクチャ勉強になります! 是非、一読を。
 今のところ3話ですが、全部で8話あるようです。次回が楽しみです。
 以上、ご紹介まで。

「ナビゲート2019」(毎日新聞)に「『改革』熱が壊した力」を寄稿しました。

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 「ナビゲート2019」(毎日新聞・4月24日付夕刊)に「『改革』熱が壊した力」を寄稿しました。
 先日伝えられた、日本思想史研究者の西村玲さんの自殺(2016年、享年43歳)の報道(「家族と安定がほしい」心を病み、女性研究者は力尽きた:朝日新聞デジタル)に絡めて、平成の「大学改革」について批判した記事になっています。
 東北大学で博士号を取り、その後に日本学術振興会特別研究員に選ばれ、数々の業績を上げた西村さんは(日本学術振興会賞日本学士院学術奨励賞を受賞)、しかし、応募した20以上の大学で常勤ポストに就けなかったとのことです。が、だとすれば、ここまで「優秀」な若手研究者(文系)に場所を提供できない「大学」とは一体何なのか。それを、90年代以降の「大学改革」の実態を踏まえながら問うた記事になっています。
 この主題は、いつかメルマガなどでも取り上げたいと考えていますが、いずれにしろ、一読していただければ幸いです。

『週刊読書人』(4月19日付/2019年)に、橋爪大三郎『小林秀雄の悲哀』の書評を寄稿しました。

小林秀雄の悲哀 (講談社選書メチエ)

小林秀雄の悲哀 (講談社選書メチエ)

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 明日発売の『週刊読書人』(4月19日付/2019年)に、橋爪大三郎小林秀雄の悲哀』(講談社メチエ)の書評「『直感』の『限界』について―小林秀雄の言葉を〝小林神話〟から救い出す」を寄稿しました。
 橋爪先生も、私の福田恆存論(博論)の審査してもらった先生であると同時に、『福田恆存 思想の〈かたち〉』の出版を斡旋してただいた恩人です。とはいえ、書評は書評、厳密に読ませて頂きました。
 結論から言うと、大変刺激的な読書体験でした。詳細は書評に譲りますが、本書は、小林秀雄本居宣長』に対する批判を介して、小林的な「直感」では辿り着けない本居宣長古事記伝』の仕事の本質を見定め、そこからライフワークである『本居宣長』に挫折してしまった小林秀雄の「悲哀」を見届けるというものです。中途半端な読みであれば、小林秀雄に跳ね返されるだけでしょうが、橋爪氏の「分析」は決して跳ね返されてはいません。それどころか、やはり小林秀雄本居宣長』の急所を突いていると言っていい(ただし、「小林秀雄論」として見れば、少々「ないものねだり」をしている感もありますが…笑)。改めて、「小林神話」から自由に小林秀雄を読むことの重要性を感じました。一読していただければ幸いです。

『表現者クライテリオン』の最新号(5月/2019年)が発売になりました!

表現者クライテリオン 2019年5月号[雑誌]

表現者クライテリオン 2019年5月号[雑誌]

 昨日、『表現者クライテリオン』の最新号(5月/2019年)が発売になりました。
 今回の特集テーマは、ズバリ、「『令和』への建白書―新時代を切り拓く国家戦略の提言」の一本です。
 ということで今回は、私の連載も含めて、ほとんどの連載を休み、この「建白書」一本に絞った雑誌作りをしています。詳しくは雑誌を手に取って頂くほかありませんが、寄稿者の皆さんからは熱の籠った論考を頂いています。これで「令和」に向けて新たなスタートを切ることができればと思っています。
 「令和」を迎えるに当たって、「政治改革」「構造改革」「規制緩和」「成長戦略」「自由競争」「グローバリズム」などの言葉が躍った「平成」の政治・経済の流れを断ち切りたいというのはもちろんですが、私に近い文学・思想に引きつけて言っても、いかにも「平成」っぽい夢物語(ゼロ年代の見果てぬ夢みたいな幼児性)、ポスト・モダン絡みの浮足立った嘘話(単なる優柔不断を決定不可能性=可能性にすり替える自己弁護的詭弁)は全部終わりにしたいと思っています。あるいは、「人生」や「生き方」に何の関係もない「言葉の戯れ」も完全に終わりにしたいと思っています(せっかく、井口時男の『蓮田善明―戦争と文学』も出たことだし)。手に取って頂ければ幸いです。
 
 ちなみに、私の名前が出ているものとしては、まずは①編集部として提出した「建白書」がありますが、②その建白書の理念を掘り下げた座談会「『令和八策』建白のクライテリオンー『実践・漸進・発展・有機体・長期展望』という五つの柱」と、③「建白書」の各論として書いた日本国憲法論「私たちの安易さの根源にあるもの―『無責任の体系』としての日本国憲法」があります。
 また、④いつもの「対米従属文学論」の連載だけは今回も休んでいません(笑)。この度は「戦後ニヒリズムの臨界値」と題して、開高健『輝ける闇』と村上龍限りなく透明に近いブルー』を取り上げています。毎度大盛り上がりの文学論ですが、一読していただければ幸いです。以下は、最新号の目次となります。よろしくお願いします。

内容紹介

【巻頭連載】
・鳥兜「解決」志向が外交にもたらす悪夢/もっと未来への投資を

【特集】
「令和」への建白書 新時代を切り拓く国家戦略の提言

〔建白書〕令和八策

・特別座談会
「令和八策」建白のクライテリオン「実践・漸進・発展・有機体・長期展望」という五つの柱

建白書
〔皇室論〕 皇統を守るために――現行憲法皇室典範の改正を急げ/富岡幸一郎
〔移民政策〕 日本を「外国人材」による多文化「モザイク構造」国家にしてはならない――それを未然に防止するための政策的対応を考える/室伏謙一
日本国憲法論〕 私たちの安易さの根源にあるもの――「無責任の体系」としての日本国憲法/浜崎洋介
〔経済財政政策〕 日本再生のために、財務省の「設置法」を改定せよ/藤井聡
〔通商・産業政策〕 日本型経済制度の保護・育成を/柴山桂太
〔農業政策〕 食料を自給してこそ独立国家なり/鈴木宣弘
社会保障政策〕 国民の紐帯の基盤としての社会保障政策――高齢者と若者の分断を超えて/村上正泰
環境政策〕 生物資源国としての環境政策/辻和希
〔国土政策〕 新しい御代における国土政策の思想/大石久和
〔都市地域政策〕 地方都市はいかに再生すべきか/松原隆一郎
〔中小企業政策〕 新時代の「中小企業支援のあり方」――伝統産業・地場産業の支援によって地元経済の活性化を/小野善生
〔北海道政策〕 北海道にリニア新幹線を――今度こそ、北海道を見棄てるな/古川雄嗣
〔東京一極集中緩和策〕新時代にふさわしい「定住型社会」の構想を――東京一極集中からいかにして脱却するか 川端祐一郎
統治機構論〕 統治機構改革を論ずるなら、占領政策を総括すべし/西田昌司
〔ジャーナリズム論〕 新聞はゲーム会社を買収せよ――「ジャーナリズム精神」が衰退の元凶だ/松林薫
〔沖縄政策〕 新たな御代における「沖縄のあるべき姿」――沖縄の基地問題/藤原昌樹
〔国防論〕 きけ さきもりのこえ/礒邉精僊
〔エネルギー政策〕 エネルギー自立国家に向けて/竹村公太郎
外交政策〕 囚人国家の「護憲ごっこ」「親米ごっこ」「国粋ごっこ」/伊藤貫
〔日本文化論〕 日本文化の発展のために――「クールジャパン」政策の批判的検討を通じて/施光恒

・一言一会 手違いで繁栄した戦後日本/佐藤健志


【連載】
・戦後ニヒリズムの臨界値(対米従属文学論)/編集部
・クライテリオンの新左翼化(だからこの世は宇宙のジョーク)/佐藤健志
・過去は現在を持ちうるか(実践としての歴史叙述)/佐藤一進
・毎月勤労統計調査問題に見る、危機の深刻化(〈世界〉を変える一枚のグラフ)/島倉原
二月革命以降 空飛ぶ大統領(〔保守のフランス史〕)/平坂純一
・メディア出演瓦版/平坂純一
・編集長クライテリア日記/藤井聡
・経営者よ、戦略として大胆な「夢」を語れ(危機と対峙する人間思考)/野中郁次郎

【特別寄稿】
・土木差別の民俗学5――鬼伝説編/中尾聡史

【寄稿】
・領地を持たない貴族/谷川岳

【書評】
・大山礼子著『政治を再建する、いくつかの方法――政治制度から考える』/折田唯
・アーサー・C・ダントー著『アートとは何か――芸術の存在論と目的論』/宮本崇司
スラヴォイ・ジジェク著『絶望する勇気――グローバル資本主義原理主義ポピュリズム』/篠崎奏平

【投稿】
・読者からの手紙

【その他】
アメリカニズムの後で(保守放談)
ネットカフェ難民エートスの喪失(保守放談)

刊行記念トークと、井口時男『蓮田善明 戦争と文学』(論創社)について

蓮田善明 戦争と文学

蓮田善明 戦争と文学

 いよいよ、井口時男「蓮田善明 戦争と文学」(論創社)刊行記念トーク三島由紀夫と蓮田善明~文学と自決!~」の日(16日火曜日)が近づいてきました。席には、まだ少し余裕がある様ですが、当日来ていただいて座れなかったということがないよう、どうぞお早めの「予約」、よろしくお願い致します!
 予約方法はこちらをご参照下さい➝https://www.kinokuniya.co.jp/c/store/Shinjuku-Main-Store/20190326105052.html

 ちなみに、今、井口時男『蓮田善明 戦争と文学』(論創社)の「書評」を『表現者クライテリオン』で用意していますが、考えてみれば、『福田恆存 思想の〈かたち〉』以来、これが私にとって、注文なしで書く(つまり、何の要請もなしでゼロから主体的に書く)最初の仕事になります(笑)。しかし、逆に言えば、それほどまでにこの本は、私にとって大事な本になったということです。
 その内容について書くと「書評」(あるいはトーク)と重なってしまうので、ここでは遠慮しますが、間違いなくこの本は、「蓮田善明論(研究)」において――あるいは雑誌『文藝文化』研究や、戦時下の国文学研究、三島由紀夫との関係論などにおいて――、それ以前とそれ以後とを分ける分水嶺を作ることになるでしょう(個人的には、蓮田―三島の関係も興味深いのですが、蓮田―唐木の関係も興味深い。そして、蓮田の文学史観が密かに三島の『日本文学小史』や、唐木の『中世の文学』に引き継がれていることなども目から鱗でした。ちなみに言えば、私の学部時代の師匠である相川先生(国文学者、『わび人の変貌』審美社を書かれている)も、「唐木」、「三島」、そして「蓮田」の名を時々口にしていたのでした!)。
 しかし、三島や、唐木に比べて「蓮田善明」という名前は一般には知られていない。しかし、だとすれば、「戦後」は、なぜ「蓮田善明」の名前を禁忌としなければならなかったのか。おそらく、そにこそ「戦後」が無視し続けてきた近代日本の問題が凝縮されているはずです。井口時男は、まさに、その戦後文学が切り捨ててきた文学史的な盲点を、冷静に、着実に、そして批評的(境界画定的)に描き出していきます。私が言うのも烏滸がましいのですが、その筆さばきは嫉妬を覚えるほどの見事さです。

 蓮田が生きたのと同じ「危機の時代」が今、目の前に迫っています。そのあたりのことについても、会場でやりとりすることになると思います。16日のトークについて、是非よろしくお願い致します!